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第三章 暗黒微笑(ダークスマイル)の代償

「よっ、山崎ちゃん! おはよー! 朝から相変わらず超可愛いね。ねえねえ、今日の放課後さ、俺とどっか遊び行かない? ぶっちゃけ、前から山崎ちゃんのこと超タイプだったんだよねー。付き合っちゃう?」



「……(……き、きたあああああ! 金髪マッシュに緩めたネクタイ、絵に描いたようなチャラ男の神宮寺先輩! でもチャラくても顔が良い! 挨拶されただけで心臓がバック転したわよ! よし、昨日お風呂で誓った通り、今日は笑顔、まずは笑顔で口角を上げるのよ私……!)」



「……っ!? え、あ、あれ……?」



「……(引きつってない!? 私の口角、ちゃんと上がってる!? 海外のコレクションモデル風の、すべてを見通すような妖艶かつ慈愛に満ちたアルカイックスマイルになってるはず……!)」



「あ、あの、山崎ちゃん……? なんでそんな、無言で、一切目を合わせないまま、口元だけ三日月みたいに吊り上げてんの……? え、何その、この世のすべてを呪い殺すみたいな暗黒微笑ダークスマイル……。お、俺、なんか地雷踏んだ……?」



「……消えろ」



「ひっ……! す、すんませんでしたァッ!!」



「……」



「……行った?」



「……うん。先輩、脱兎のごとく逃げ出して、あそこの昇降口の段差で盛大につまずいて転んでたわよ」



「……。……。……うわああああああああああああああああん!!! なんで!! なんで私はあそこで『……消えろ』とか言っちゃったのよおおおおお!!! 口角を上げた反動で、声帯からダイレクトに呪詛が漏れたわよ!? バカ! 私のバカ!」

「あはははは! お腹痛い! あいり、あんた朝のHR前から笑わせにくるのやめてよ!」



「一ノ瀬ぇ……! 笑い事じゃないわよ! 神宮寺先輩、最後完全に腰が引けてたじゃん! あのまま除霊でもされそうな勢いで震えてたじゃん! 本当はね、『先輩チャラくてかっこいいです、放課後タピオカ飲みに行きたいです!』って脳内で注文確定してたのよ!? なのに、なんで出荷段階で『消えろ』に化けるのよおおお!」



「いや、あんな無防備なチャラ男に対して、指輪ジャラジャラの拳を握りしめながら、般若みたいな笑顔で『消えろ』は、もうただの世紀末覇者なのよ。完全に仕留めにいってたもん。そりゃ先輩も命の危機を感じるって」



「違うの! 拳を握ったのは、嬉しすぎてガッツポーズが出そうになったのを必死で抑え込んだ結果なの! あーあ、タピオカ……先輩とお揃いのストローで飲みたかったな……。今日の放課後も、家帰って猫の動画見ながら涙の反省会確定だわ……」



「まあ、先輩のあれはただのワンチャン狙いだからノーカンでいいよ。でもさ、あんたのその『笑顔を作ろうとすると逆に邪悪になる呪い』、本格的に致命的だね」



「もう嫌、笑顔すら許されないなんて私の恋愛難易度ハードモードすぎない!? 誰でもいいから、この呪われし暗黒微笑ダークスマイルの奥にある大賛成のYESを見抜いて、無理矢理にでも『宜しくお願いします』って言わせてよ……!」


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