第二章 湯船の温度は、私の脳内と同じ
「……おい、山崎。俺の特等席、お前に譲るから、俺と付き合って」
「……席、足りてるから」
「えっ……あ、そう、か……(傷ついた大型犬)」
「……ふぅ。やっぱり、今日もお風呂で反省会するしかないのね……」
「『あいり。あんたのその見た目に騙されてワンチャン狙う奴もいれば、冷徹な視線の奥を見抜きたいとかいう拗らせ男子もいるのよ』……って、一ノ瀬は昼休みにサラッと言ってたけどさぁ!」
「あーあ、荒金くんの告白も、結果的に秒殺バックドロップしちゃったなぁ……。思い出すだけでお湯が沸騰しそう。っていうか、ヤンキーのくせに『俺の特等席、お前に譲るから付き合って』とか、告白のセリフが硬派すぎて心臓に悪すぎるでしょ! 断った瞬間の、あの傷ついた大型犬みたいな顔……! あんなの反則、国家予算レベルの尊さだったわよ!」
「なのに私の口ときたら! 『……席、足りてるから』って何!? 私、いつからそんなミニマリストみたいなキャラになったのよ! 違うの、私はただ荒金くんの隣の特等席に、大喜びで着席したかっただけなのに!!」
「……はぁ。お湯が冷めるわ。チョーカー外した首元が、なんかスースーして落ち着かない……」
「でも、一ノ瀬の言う通りなのかもな……。この、黒髪インナーカラーも、ジャラジャラの指輪も、最初はただ『誰も私に話しかけないで』っていう防衛システムだったはずなのに。なんでこれが『ギャルっぽいからいける』とか『氷の女王の奥を見抜きたい』なんて、男子の特攻精神を刺激するバフになっちゃってんのよ……!」
「毎日毎日、必ず誰かに告白されるこの呪い……。神様、設定の難易度高すぎませんか? 見た目は最強のラスボスなのに、中身はHPが1しかなくて、恋愛経験ゼロのピュア女子なのよ? あんな少女漫画のイベントを毎日ノーモーションで食らったら、そりゃ脳みそがバグってマイナス百度の冷気も自動射出されるわよ!」
「『誰でもいいから、私のこのNOの裏にある大賛成のYESを見抜いて、無理矢理にでも宜しくお願いしますって言わせてよ……!』……って、私、昨日そんなこと叫んでたっけ。……いや、無理でしょ。あんなガン飛ばして腕組んでる地雷系女子に、さらに踏み込んでくる男子なんて、この世に存在するわけ……」
「……あ。でも、荒金くん、最後去り際に『……お前、いつもフる時、めちゃくちゃ顔赤いよな』って、なんかボソッと言ってたような……」
「……ひっ! 嘘、見られてた!? あの時、完全に睨みつけてるつもりだったのに、赤面がバレてたの!? うわあああああああ恥ずかしい! もう明日学校行けない! お湯に沈む! 私は今からただの茹でダコになる!!」
「ぶくぶくぶく……ぷはっ! ……ダメ、死んじゃう。……よし、明日は絶対に『は?』って言わない。最初に笑顔! とにかく口角を上げるのよ、あいり……!」




