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出発の朝


次の日、ドミトルと補佐達は指定された場所に集まっていた。


その場所は第一突撃部隊の宿舎前の広場なので、通りかかった部隊の者達が珍しげに見ている。


それに無意味に威嚇しているモイスの姿があるが、他の者達は放っておいた。


「見世物じゃないんだぞっ。見るぐらいならお前達もついて来い」

「誰が行くか。モイス、行ってらっしゃーい」

「このやろう!捕まえて引きずってきてやるっ。ねぇ?」


モイスがドミトルの方を見るが、聞いてもいなかった。


「全員集まったな」


アルフォンド、ゲルモンテ、アタランテ、オスマンド、モイスが目の前にいる。それを見渡しながら確認を行っていた。


「総隊長、俺の話聞いてますっ?」


食い下がってくるがドミトルはその頭を押さえ、黙らせる。


「あー、これから話を進めるが何か初めに質問はあるか?」

「はい」

「アルフォンド。言ってみろ」


一番左側に立っているアルフォンドは、ドミトルの隣を見ていた。


「リングレア第二補佐官も参加するのですか?」


ドミトルの隣にはリングレアが立っている。


それに対してリングレアは自分で質問に答えた。


「私は自分の身を守りつつ総隊長の護衛を務めさせていただきます」

「俺の身は守らなくても大丈夫だ」


隣を見る事なく言われたが、


「邪魔になる事のないよう気をつけて護衛を努めます」


再度、同じように答え、自分の気持ちは曲げない。それを何とも言えない表情でドミトルは見た。


そんな二人を見ながら補佐達は安堵する。

自分達が護衛する事は出来ないので、対処してくれるリングレアに感謝していた。


「第一神子の件があるから当然だな」


オスマンドが呟くと、リングレアが視線を向けてくる。

その視線に怯んだオスマンドは、何かまずい事を言ったか?と考え、挙動不審になっていた。


その様子を見ながら、ドミトルはリングレアが同じ補佐官になる者を観察しているだけだ、と気づく。

囲い込みは完了しているので急ぐ必要もない、と思っていた。


「誰かが護衛している姿なんて、式典以外ほとんど見た事ないから側にいられると嫌そうですね」


自分の事ではないので気軽に言うゲルモンテに対して、ドミトルは視線を向ける。思ったよりも圧が強かった。


「眼光が強すぎなんですけど・・そんなに不満なんっすか?」


二歩ほど後に後退りながらゲルモンテが言ってくる。

ドミトルは少し考えた後、説明を始めた。


「索敵も感知も得意なんだ。その意味が分かるか?」

「普通の者よりも側にいるのが気になるんですよね」

「気になるどころの話じゃない。常に側にいるような感じだ」

「総隊長は皇女なんですから一応慣れているでしょ?」


ゲルモンテが首を傾げる。


「俺の方が守っていたら護衛がいなくなったんだ」

「そ、そっすか・・」


ドミトルなら有り得る状況だと思う。納得しすぎて、反論も思いつかなかった。


「リングレア補佐官。大丈夫ですか?」


心配したアルフォンドが聞く


「総隊長の方が強いのは分かっています。しかしながら努力をしなければ成長はしないので常に私は上を目指します。必ずや総隊長の護衛役を務める存在になります」

「こう言って聞かないんだ」


ドミトルがリングレアの後を続けるようにそう言った。


「さすがリングレア補佐官。憧れます」

「アタランテ。リングレアを煽るのは止めてくれ。だいたいなぁ」


溜息を吐く。


「常に側にいるって事は自分の懐に入れるようなものなんだ。それを過剰に感じ取ってしまう俺には、側にいられると身内のように感じてくるんだ」

「光栄です」


曇りのない瞳で見つめてくる。リングレアは自分の目的達成の為には手段を選ばなかった。


「聞かなかった事にする」


ドミトルはこの話を終らせる。


「モイス。何か言いたい事はあるか?」


逃れたモイスは周りと睨み合いを続けていたのでドミトルが声をかけるが、相手を指差して訴える姿は道連れにする気満々だった。


「あいつらも一緒に行くのは駄目ですかっ」


聞こえた友人達は大きく否定するように手を振っている。必死なようで、残像が出来ていた。


「駄目だ。殲滅部隊に報告も許可も取らずに連れては行けない。残念だが、これ以上人員を増やすのは不可能だ」

「そうなんですか・・」


チッ、と舌打ちする。

友人達はお互いに喜び合っていた。


「それに殲滅部隊で人数を多くしずぎると俺の目も届きにくくなる。精神を病まれると回復するのに時間がかかるから人数は少ない方がいいな」

「不参加でお願いします」


九十度に腰を曲げて頭を下げるモイス。


「却下だ」


ドミトルは、その首根っこ付近の服を掴んで持ち上げる。破けないように上手く吊り上げられた。


「俺は精神を病みたくありませんっ」

「大丈夫だ。そんな繊細な心は持っていないから安心するといい。帝国名をかけて保証してやろう」

「それって馬鹿にしてますっ?俺の事、繊細じゃないって下げてますよね。しかも国をかけてって酷いじゃないですか」

「分かったから落ち着け。じゃあ俺のドミナトルシアの名をかけてやるよ」

「重っ、総隊長の名前をかけるほど俺の精神は強いんですかっ」

「大声を出すな。冗談だから暴れるな」


片耳を押さえながらドミトルは動くモイスを捕まえている。それを助けようとする仲間はいなかった。怪我をする事はなさそうなのでオスマンドも見ている。


そんなオスマンドに向ってドミトルは放った。


「うわっ!!」


思ったよりも強く飛んできたのか、モイスを受け止めたオスマンドは後に下がる。それを横目で確認してから、ドミトルは補佐に向き合う。


「他に質問はないか?」

「殲滅部隊に行くにあたり、総隊長から俺達に向けての言葉はありませんか?」


アルフォンドがそう言うので、ドミトルは顎に手を当てて考える。思いつく事を頭に思い浮かべていた。


「そうだな・・」


目線を右上に向けて考える。空は晴れていて、浮き石が浮遊していた。


「命の心配よりも心を強く持つ事だ」

「何度も同じような事を言うんですね。不穏過ぎる・・」


アルフォンドの言葉が響く。


現状を知っているオスマンドの方を補佐達は見るが、本人は明後日の方を向いて教えるつもりがない様子。


モイスが顔を見ようと近づくが、左右に動かしているので口を割る事がないのは分かった。


「部隊には女性が多い事は有名だけど、それ以外の情報だと強い力を持っているだけでは駄目な部隊だと聞いたわ」


手に入った情報をアタランテが言うが、曖昧な情報なので何が殲滅部隊で行われているのか、今一つよく分からない。


「虫の獣が出るのは聞くが、それ以外はなぁ」


ゲルモンテも大した情報は持っていないようで、同じような表情をしていた。


虫系の獣は防御力も生命力も高い上に、見た目が苦手な者もいるので人気がない。しかも他の生物よりも大量に発生する場合が多いので、対処するには時間がかかる事が多かった。




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