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執務室2



「明日出発するなら、隊員達には私が連絡をしておきます。それでよろしいですか?ブルトラン殿」


表情を引き締めながらリングレアは言った。


「ええ、構いませんよ。この場合は口頭の方が早いでしょう」


聞かれた事に答えると、頷いてからリングレアは部屋から出ていく。

止める必要はなかったので三人で見送った。


それから自分の仕事に戻る。


「そう言えば、総隊長」


そう言ってから、ブルトランは置いていた晶映石を片手で持ち上げた。


「オスマンドさんが手に入りそうだと、手の者から聞いたのですが本当ですか?」


ドミトルの体が硬直する。


「その前に、手の者というのは何だ?」

「第一補佐官と言う立場には、秘密も多いんです。貴方の知らない事も当然ありますよ」

「いや、必要ないだろ。何だその闇の組織は。解体しろ」

「その話は置いておきましょう。で、オスマンドさんの事なんですが・・」


ブルトランはドミトルの言う事を聞かない。ため息を吐くとドミトルは答えた。


「第四補佐官に出来るよう、準備を頼む」

「分かりました。そういたしましょう。そうすると、アルフォンドさんを第四補佐から第十二補佐に変えましょうか。ああ、でも他の補佐達が嫌がりそうですね。やはり第五補佐が良いですか」


後ろに下げてください!と言うアルフォンドの声が聞こえてきそうだが、ブルトランは気にしなかった。


もっと何か言われると思っていたドミトルは拍子抜けする。


「反対意見はないのか?」

「そうですね・・まだ経験も浅いですし、抜けもあるでしょう。ですが」


一旦区切ってから、


「帝国に対する思いはあります。大丈夫でしょう」


そう言った。


国に対する忠誠心もあり、仲間を率いる能力も、交渉する能力もある。なので、心配はしていなかった。


「後は貴方の下について慣れればいいんです。そこで、失敗を繰り返していれば成長していく事でしょう」

「そうか」

「それにですね」


はぁ、と息を吐く。


「他の者が捕まりません。あと一歩の所で逃げられてしまいます」

「エリオストも中々ですよ。フッ」


続けてラブレスも参加して、鼻で笑って眉間に皺を寄せた。


「ブルトランとラブレスが働き者で助かる」

「オスマンドの事はこれで決定ですね」


ラブレスが言うと、ドミトルとブルトランが頷いた。


本人からは、まだ決まってないでしょ、と言う声が聞こえてきそうだったが、アルフォンドの声と同じように黙殺される。反論したいなら地位を上げるしかなかった。


そして地位を上げるとなると、第四補佐官しかないので、逃れる術は今の所、オスマンドにはない。


伝手も手立てもなさそうなので、反対意見が高位貴族から出ない限りは、補佐官の決定を覆す事など不可能だった。

他の隊長格の援護射撃がくれば、先延ばしにする事が出来るかもしれないが、それは現実の話として無いので、これ以上話し合う必要もない。


ドミトルの婚約者探しが済むまで、特殊な配置が続くのは仕方がないと諦められていた。


部隊の隊長格の者は、ほとんど未婚の男性に置き換えられ、本来の隊長は色々な場所に、指導者として配置されている。そして英雄と呼ばれる優秀な者ほど、魔の手から逃れる為に、数年間の出張に行くなどをして、帝都を離れていた。


なので、その者達が移動した辺境の、ある特定の場所だけが今までにないほど安全だという奇妙な状態が出来上がっている。


そいつら全員、帰ってくるまでに書類上の婿にしておいてやろうか?とドミトルは嫌がらせを考えていた。


「なら私が、いつでも第四補佐官に出来るよう、根回しをしておきますね」


ラブレスの言う言葉にドミトルは頷き、自分の仕事を続ける。明日の事も同時に考えていた。


「六人か・・かなり多いな」


安全確保の方法を考える。

リングレアとオスマンドは経験者なので問題はないが、新人達の安全は最優先事項だった。


「装備を用意しておくか」


殲滅部隊は色々な意味で危ないので、装備品を整えておくのが重要なのかもしれないと考える。ドミトルにとっては、装備品は邪魔でも、新人達の身を守るのには役に立った。


「重い装備品よりも素早さ重視で、オスマンドは補助だな」


攻撃や、それに付随するものはドミトルがやれば効率が良いし、新人の行動も逐一確認する事が出来るので安心できる。遠く離れた場所に行かせない限りは、問題なかった。


「後は殲滅部隊のヤツらが、大人しく新人を迎え入れてくれればいいんだがなぁ・・」


ドミトルの中では、実はそれが一番心配している事だった。


「下品な言葉使いをするに一票」

「女性というものを意識しすぎて気持ち悪くなっているに一票」

「ブルトラン、ラブレス。俺の独り言に口を出すんじゃない」


仕事をしている二人に注意すると、ドミトルの方を見る事なく答える。


「おやおや、申し訳ありません。勝手に口から零れていました」


丁寧に答えたのはブルトラン。

ラブレスは無言で仕事を続けていた。


ドミトルも口を閉じる。この二人に口では勝てない事は分かっているので、これ以上は何も言わなかった。


下手に言い合いを続けていると、頭の回転が早く、持続力のある二人に、いいように振り回される事もある。時間がある時ならともかく、忙しい今のような場合には、引いた方が良かった。


窓の外には浮遊する岩が通過していく。

その岩には、植物と木が生えているので、尾の長い青い鳥が巣を作っていた。


「さて、集中するか」


晶映石に自分の魔力を使って、核と接続して仕事を始める。


部屋の中は外の音がするだけで、静かになった。




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