説教開始
「勝手にここを使ってた罰……?」
「そ。そもそもの始まりは、私もドールもいないのに、この場で戦ったことでしょ」
あ~あ、フェンスも壊しちゃってもう……とか呟きながら、ドールを伴って授業用に仕切られた──いや、仕切られていた敷地に足を踏み入れる。
「まずはその罰。
で、その後に校舎を壊した罰といきましょうか」
「……先生。そうは言いますが、戦うのはあなたではないのでしょう?」
「戦う?」
おかしなことを言う子だ。
「何を言ってるのやら。私は罰を与えるって言ってるじゃないですか。
生徒相手に戦う理由はないって話ですよ」
「あら? では説得でもするおつもりで?」
「体罰も説得の内ならそういうことになりますね」
よいしょ、と武器が入った籠を降ろす。
「それじゃあドール、援護をお願いしますね」
「良いのか? 俺じゃなくて」
「あなたじゃそれこそ戦いでしょ。
授業とか戦いじゃないんなら、コレは私の管轄だし」
「先生が今の私に勝てると思ってますの?」
「ルコリティさん、少し冗長が過ぎるようですね。『魔人』化出来ただけで負ける私じゃありませんよ」
「ドール先生の援護はあるのにですか?」
「生徒たちの守護と、私が負けた場合の後処理の話ですよ。
ま、あなたが魔法に頼ってるところで、私は機械と魔法の両方に頼りますけど」
答え、一本の長剣を籠から取り出す。
「ルコリティさん、『魔人』化したあなたは、ただの人間と魔法使いの双方を殺すために生まれた存在です。
でも、『魔人』である以上、なにかにつけて相手を殺そうとするのは“当たり前”のこと。
むしろ今、誰も殺していないことのほうが奇跡に近いぐらい。
校舎の方がどうかは分からないけど……でも今はまだ、誰も殺してない。
だから今ここで、止めてあげます。
あなたの『魔人』化を止められなかった責任もありますしね」
「責任?」
「これでも私の授業を取ってる子達は注意してましたし。ホント、申し訳なく思うわ」
注意……というのは普通に気を向けることじゃない。
そもそも私は、魔法使いにとっても機械が必要だと──人間と共に歩むことが重要だと教えるために、先生として世界を回っている。
ただその誘導があまりにも露骨だと、生徒たちのためにならない。
あくまでも本人たちの考えからして変わらないと意味がないからだ。
でなければ、世代を超えて引き継がれる思想となってくれない。
……私が出来ることなんて、所詮はこんなものだ。
本当に僅かな、数人しか変わらないものであったとしても……歳を取って、大きくなって、魔法使いとして子供を産んで、その子に引き継いで……。
そうして、少なくからで良いから、ゆっくりじっくりと広めていくしかない。
昔起きた『魔女狩り』によって植え付けられた、強い警戒心を否定するためには。
時間による解決だけでも、無理やりな説得でもない方法を、取るしかない。
そのために私は……『並行世界』の魔王の元、魔法を使って、調節してきた。
……まさか、その弊害がこんな大それたことになるなんて。
「まあ、何もしなくてもこうなってた可能性もあるけど」
メイジのことだってちゃんと『並行世界』で見てきた。
他の生徒が何人かちゃんと導けてきただろう自負はある。
『魔人』相手に死んでいないということが、その自負を確固たる自信に繋げてくれる。
だがこの景色が『並行世界』で全く見えなかったということは……そういうことなのだろう。
「……ふぅ~……」
機械で量産された長剣を持ち上げる。
小柄な私が持ち上げるだけで、それは大剣かと勘違いしてしまう程の長さになる。このままだと剣に振り回されること間違いなしだ。
……まあ、それが狙いなんだけど。
「生徒相手に武器だなんて。大人げないですわね」
「コレも含めたのが私の戦い方なもんで。
ま、魔法薬学の魔法薬みたいなものよ」
そのまま、持ち上げた剣を頭の上まで持ち上げる。
「それじゃあま──いくよ」
開始を告げる言葉放つと同時──
その持ち上げた剣を、メイジに向けて思いっきり投げつけた。




