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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
退職への道標
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告げられる危機

 『魔法薬学』の教師フリーシア・ヴィルディット──いや、『念動力』の魔王リフレシア・ヴァーデッド。

 彼女との戦いを終えて、一息吐いていると──




 ──いきなり、ウリシャが現れた。




「えっ……?」


 我ながら、間の抜けた声がでたものだと思う。

 しかしこの部屋は、人一人がやっと通れる幅だけを開け、あとは薬品棚がズラりと並んでいるような狭い部屋だ。

 そんな場所に、急に、何の音もなく、一人の女子生徒が現れて驚かないなんて、人間以外でないと難しいだろう。


「…………」


 ……いや、そうか。

 私が気付けなかっただけか。


 リフレシアとの戦いで損傷したドールの腕。

 それは彼に魔力さえ与えれば再び復活する。


 その作業に集中しすぎて、他の魔力反応に気付けなかったのだろう。


 ……そう。

 魔力反応だ。


 私のこの予想が正しければ、ウリシャの師匠であるリフレシアが、頑なに彼女の魔法を教えようとしなかったことにも説明がつく。


 そして、魔王になるだけの素質があると踏んだ理由も。


「こ、ここは……?」


 もしかしたら今一番驚いているのは、現れたウリシャ本人なのかもしれない。

 そんなウリシャに向けて、リフレシアが慌てた様子で声をかけた。


「ウリシャ!? あなた、自分の魔法が……!?」

「私の魔法……?」


 本当に訳がわからないと顔に張り付かせたかと思うと、すぐに「はっ」と何かを思い出したかのように表情を強張らせる。


「そ、そんなことよりも! 私、先生を探していたんです!」


 と、私とトールの二人に向けて真剣な眼差しを向けてくる。


「そんなことじゃない。私にとって──」

「ヴィルディット先生。今は」


 自分が一番気にしていることを必死に追求しようとしている彼女の言葉を制し、首を振る。

 敢えて先生として振る舞っていた時の名前を呼ぶことで、今大変そうなのが伝わる生徒が目の前にいることを意識させようという狙いだ。


「それでミミーシアさん。どうして私達を探していたんですか?」

「そ、それが……最初はその、授業で使っているあの場所を、勝手に使って戦おうとしてる人が二人いて……ルコリティさんとパラットさんなんですけど、最初はその二人のために、場所を借りたくて探していて、でもいくら探しても見つからなくて……そしたらなんか、フェンスが崩れるみたいな大きな音がして、慌てて覗きに行ったら、全員でルコリティさんと戦ってて、これ以上は危ないと思ったから止めてくれる人をって思ったら先生しかいなくて、でもどこにいるのか分からなくて、だからといって私じゃあ皆と一緒に止めに入っても何の戦力にもならないから絶対に見つけないとって思ったら……ここにいて……」


 割りと支離滅裂気味なのは、それだけ動揺しているからか。

 ただ何とか整理できた部分だけを抽出して、これからの行動の指針をつけつつ、魔法を発動させる。


「じゃあ、私とドールはそこに行くわ。

 あなたとヴィルディット先生は──」


 見えたのは、校舎全てが崩壊する光景。

 校舎があった場所にはただ、泥の塊が鎮座するのみ。


「──校舎に駆けつけて。きっと魔法薬学に詳しくて、魔王ぐらい強い魔力を持ってる人じゃないとどうにも出来ないだろうから」

「魔王?」


 と、私の余計な一言に疑問を挟むウリシャを置いて、私は『念動力』の魔王を見た。


「暇があったら、あなたが気にしてることを聞いてもいいと思うけど。

 でもこのままだと、本当に危ないことになることは分かって下さい。

 当然、ミミーシアさんが魔法を使ってまでここに来た、という事実を踏まえてね」


 ずっと使えなかった彼女自身の魔法。

 過去にあった何かしらのトラウマのせいで使えなかったソレが使えてしまう程の何かが──本能による恐怖が抑えつけられてまで使わなければと思ってしまった程の何かが、今起きているということは間違いない。


 それはきっと、ウリシャの中では、初めて魔法を開花させた時ほどの何か。

 だからきっと、急ぐ必要があるはずだ。


「それじゃあドール、さっさと行くわよ」

「ああ」


 腕が再生済みの彼を従え、入口に置いたままだった武器が大量に入った籠を背負いながら、私はその倉庫を飛び出した。

 そして、見えた『並行世界』の結果のせいか、何とはなしに空を見る。




 すると、すぐに見えた。




 校舎の上に広がる泥の塊の光景が。




「…………」


 大丈夫だ。

 校舎全て溶け、泥の塊だけがある光景が見えたということは、その未来は必ず発生しないということに他ならない。


 だから私は、私のすべきことをしよう。

 きっとアレは、ウリシャとリフレシアが何とかしてくれる。


 あの泥を見て、再び焦ったウリシャが、再び自分の魔法を使ってくれるかもしれない。




 未だかつて、勇者に殺され尽くされた魔王と呼ばれた人たちですらも、似たような魔法を登録できなかったその魔法。

 使えれば人間には無い物を得て、彼らに対して大きなアドバンテージを取ること間違いなしな、バランス崩壊魔法。


 『瞬間移動』のような、一瞬で別の場所に移動する、その魔法を。

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