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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
幕間(秋)
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生徒たちの乱入

「レイス!」


 遠巻きで成り行きを見守っていたエスリンは、珍しく大きな声を上げながらレイスへと駆け寄った。


「ちょっと……まだ戦ってる途中なんだけど……?」

「そんなかすれかけた声で言われても。

 どうせ魔力が巧く扱えないんでしょ? そういう魔法みたいだし」


 ダメージというよりかは、いつもと違う魔力に戸惑っているといった感じだ。


「ほら、これ飲んで」


 そう言って差し出したのは、いつもの小さなキューブ状の瓶。

 中に当然液体が入っている。魔法の効果が封印されているものだ。


「……イヤ。

 だってコレ飲んだら、戦いを途中で放棄したことになるっしょ。向こうが本気出してきた途端負けを認めるとか、情けな過ぎるし」

「もうそんなこと言ってる場合じゃない。

 アレはもうメイジじゃない」

「私じゃない、というのは心外ですわ」


 いつも通りの口調に戻った──けれども何かが違うメイジが、そう口を挟んでくる。


「でも、事実だよね?

 あなたは魔法に愛された。

 そんな魔法使いを相手に、魔力を毒されたレイスが勝てるはずがない」

「いや、勝てるから」

「無理」


 反論するレイスの言葉をバッサリと言って切り、その瓶の中身を彼女に向けてぶっかけた。

 締まっていると思っていた瓶の蓋はとっくに開けられていたため、その整った黒い顔に、冷たい中身がぶちまけられた。


「冷たっ」

「これで、あなたの魔力はもとに戻る」

「じゃ、また戦えるね」

「それは無理。

 だってその魔法、相手の魔力を強制的に全部吐き出させる魔法だから」

「はぁっ!?」


 回復用の魔法なんて準備しているはずがない。攻撃用の魔法を咄嗟に使うことで、何とかその場で対処できただけだ。


 魔力を腐らせるなんて、本当にそのままにしていてどうなるか、エスリンですら分からなかったものじゃないのだから、仕方がない。

 誰か先生が──ちゃんと魔力のことを知っているドールたち二人のどちらかがいれば、こうも焦ることはなかったのだろうが。


 ……焦り。

 エスリンは改めて、そんな感情がレイス相手に生まれていたことを驚いた。


 この学校に入ってからの最初の友達であるウリシャ。

 以来友達と呼べる人がいないと思っていたから、ウリシャ以外にはそんな感情を抱くことはないと思っていたが……気付いたら、一緒にいる間に、レイスのこともそれなりに大切に思っていたのかもしれない。


 チョロいなと、我ながら思った。


「魔力を扱えない……それはつまり、死んでも文句は言えないですわね?」

「っ!」


 物騒な物言いが聞こえたせいで、思考が中断した。


 日常生活上なら冗談かと思うかもしれない。

 しかし今──メイジが魔法に愛されてしまっている今、その雰囲気から発せられる言葉を、そんな楽観視でスルーすることは出来ない。


 魔法に愛された人は、その全能感から気持ちが増長する。

 そうしたことも授業で言っていたからだ。


「……っ!」


 と、不意に──メイジが横を向いた。


 校舎の壁がある方向。

 誰もいないそちらを向いた──いや、向かされたのだ。


 その足元に転がる一本の輪ゴムが、ソレを物語っていた。




 シュウ・フェイダンの『魔力操作』によって強化された、輪ゴムによる射撃。




 一月前、お祭りの時に不発に終わったソレを、彼はしっかりと、魔力を伸ばす練習をすることで、ある程度まで完成させていた。


 ただ当然、その距離は限られている。


 そのため長距離射撃とはいかず、すぐに誰が攻撃してきたのか、メイジには分かった。


「あなた……私の邪魔をするつもりですの?」

「っ!」


 その睨みつける視線につい、すくみ上がってしまう。


 どうして輪ゴムを撃ったのか。

 それは彼自身も分かっていない。


 エスリンもレイスもメイジも、一緒にお祭りに行ったとは言え、ろくな会話をしていない。


 それなのに、気付いたら動いていた。

 自分が魔力を伸ばせる距離だと理解した瞬間には、輪ゴムを構えて魔力を込め、放っていた。


「……っ! ……ああ……! 殺そうとする奴は止めるのが、普通だろっ!」


 怯えているのを悟られないよう、声も身体も震えないために──またはそれを誤魔化すために、声を張り上げる。


「普通……では、あなたも私の敵ですわね」

「攻撃すれば敵になれるなら、俺も立候補して良いか?」


 そう、いきなり口を挟んできたのは、一人の男子生徒だった。

 『魔力操作』の授業を取っている男子の中では一番の成績。

 筋肉が目立つ、授業の最初の頃はいつもドールにしっかりと先を見据えて攻撃しろと注意されていた生徒。


「元々はプライドがどうとかでの戦いだろ? どうせ趣旨がズレたんなら、その強い実力が、今の俺でどれだけ通用するか見せてくれよ」


 レイシクル・バレスタ。

 『強化』と『魔力操作』の授業両方を取り、自らを強くするためにその双方の利点を吸収しようとしていた彼が、今の自分の実力を推し量るために乱入してきた。


 自分よりも『魔力操作』の授業で優秀な二人の戦い。それを間近で見れるならと残っていた。

 そして、本当にそれを見た今……そこに自分も混じることが出来ればと考えていただけに、正に渡りに舟だろう。


「あら? それは中々面白そうですわね。

 良いですわよ。私も今の自分の実力が知りたいところでしたし、レイスみたいに戦って差し上げますわ」

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