世界が語る堕とす声
優雅に。
そして強く在りたい。
そう思っていたのは、物心ついた時からだった。
私には、何もなかった。
──否。
魔力があったから、何もなくなった。
親に捨てられたのだと気付いた時からしか、私の記憶は存在しない。
そして捨てられた理由が、魔力。
魔力を持った子供は、遺伝によって産まれてくる子と、突然変異によって得る子の二種類がいることを、この学校に入ってから知った。
私は後者だったのだろう。
だから捨てられたのだ。
普通の人間の夫婦のもとに魔法使いが産まれようとも、きっとどうすることも出来ないと思われたから。
私を拾ってくれた人が魔法使いと知って、そのまま捨てた理由を話しているのを聞いた時に、私は自分で決めたのだ。
捨てた人たちを見返したい。
そんな気持ちがなかったと言えば嘘になるのだろう。
今となっては、そんな感情を抱いていたのかどうかすら、覚えてもいないが。
◇ ◇ ◇
優雅に。
そして強く在りたい。
そうした魔法使いになることで、拾ってくれた人にも恩返しになる。
だからきっと、この目標は、間違いではないのだ。
だから、誰にも負けるわけにはいかなかった。
それなのに。
それなのに、レイスはあっさりと、私を上回っていた。
魔法しかない私とは違い、他にも色々と持っているはずの彼女が……。
私にしか無いものを、あっさりと上回っていた。
お洒落で、綺麗で、両親にもしっかりと認められて、育てられているのが分かるレイス。
お昼には手作りのお弁当を持ってきて、両親の愚痴を話しながら当たり前のようにそれを食べて、天才と自称するだけの実力を授業で披露して……学校中がそれを認めている。
対して私はどうだろうか。
境遇に似合わない癖の強いお嬢様口調を口にし、拾ってくれた人がくれる数少ないお小遣いを髪の手入れに費やし、食事も満足に取らず、家事で手をボロボロにして……その中で、魔法の努力を怠らないようにして……。
……それなのに……。
それなのに、負ける。
追いつこうと頑張っても、その背中はいつまで経っても、見えない。
魔法しかない私が、敵わない天才に出くわしている
もう、どうすることも出来ない。
……どうして、同じ世代に生まれたのか。
彼女さえいなければ……もう少し早くても、遅くても、一緒にさえならなければ、自分はこんな惨めだと、思い知らされずに済んだのに。
……いや、違う。
その考えは違う。
それでは結局、何も変わらない。
結局世間に出たとき、同じ惨めな目に遭うだけだ。
そもそも、そんな情けない考えを持つ段階で……私の心は、酷く惨めになっている。
だったらどうしたら良い?
この惨めな心を救うために、私自身はどうしたらいい?
彼女に勝てばいい。
でも勝てない。
どうやっても勝てない。
今日だって勝てなかった。
きっと明日もその先も。
──だったら、勝たせてあげる──
え?
──世界に身を委ねて──
──それは、私の思考のようでいて、私とは違う、何かの返答──
──過去にも何度かあって、その都度不気味に思い、すぐさま脳裏から弾き出していたそれは──
あなたの才能全てを発揮すれば、あんな人間の小娘一人ぐらい余裕で殺せることなんて、すぐに分かるんだから。
──本当に? ──
ええ。
だってあなたは……誰よりも強い、この世界に認められるほどの天才になる資格を持つものなのだから。
今回はすんなりと、私の心に、沁み渡った──
ドプンと、何か心の中が沈むような感覚。
もう一人の自分がしっかりと見つかったような安堵。
今まで足りなかった分からないものが、あっさりと分かったような達成感。
──途端に、レイスに抱いていた感情が膨らんで、膨らんで、膨らんで……爆発した。
そう。
殺してしまえば良いんだ。
そしたら自分が強いと周りは認めてくれるし、これから先誰も自分を下だとは見ない。
二度と、こんな惨めな思いをしなくて済む。
周りが自分を下に見るのなら。
それが惨めだと思うのなら。
その相手を殺せばいい。
この世からいなくなれば、二度とそんな気持ちにならないのだから。
さあ殺そう。
今の私には、その力が在るのだから。




