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ドールの戦い方

 ミスって下書き状態の方をアップロードしてしまっていたので、遅ればせながら編集済みに変えました。

「……っ」


 と、『念動力』による見えない腕がドールへと伸びる。

 掴みかかってくるソレをしゃがんで躱し、そのまま膝の屈伸を利用して飛び上がるよう一息に距離を詰める。


 たった一歩半の距離は、それだけで肉薄するまでに迫る。

 そのままの勢いを乗せた拳を放──とうとしたドールはしかし、腕を伸ばすことなく、その場で前足を軸に回転。


 その、あまりにも隙だらけの行動に、リフレシアは戸惑い、一瞬動きが止まる。

 手を伸ばせば触れられる距離で急に背中を向けたのだ。動揺しない訳がない。


 そしてそれが分かっていたかのように、ドールは回転から裏拳──を空振って、再び至近距離でリフレシアと対峙する。

 再び不意を衝いた。

 しかも今度は、相手が攻撃を受け流すつもりで構えていたものだから、尚の事大きい。


 彼女から攻撃しようすればすぐに脱出できる状況なのだが、カウンターを取ることに意識が向きすぎていて、その発想に至っていない。


 実戦経験の少なさが露呈している。


 そもそも私も含め、魔法使いの格闘能力は基本的に低い。

 何もしたことがない一般人よりもマシ、もしくは同等と思ってもらって構わない。

 ソレを、魔力移動で全身に魔力を巡らせ・魔力変質でその魔力を身体能力向上に変化させてフォローすることで、達人レベルに何とか持っていっているに過ぎないのだ。


 ドールは勇者を元に『生命』の魔法使いが創った存在なので、そもそもの格闘能力が勇者レベルに至っている。

 だがさっき言ったような魔力操作で、さらに身体能力を向上させるような真似はしていない。

 せいぜい使うのは魔力移動のみで、魔力変質は目に用いて相手の魔法を見極める程度にしか使っていない。

 こればっかりは『生命』の魔法使い本人が掛けたものなので、私ではどうすることも出来ないことだ。


 おそらく彼の性分的にもソレが合っているのだろう。

 それともう一つの性分として、どうも彼は強敵が相手だと、一撃必殺に拘る傾向が強くなる。


 裏拳を空振らせて正面で対峙し、防御しようとした攻撃がやってこなくて空振った彼女に向け、今度こそ彼は──彼女を中心とした円周を描くように、横へと回り込んだ。


 彼女の左手側。

 利き腕──さっき彼女が攻撃を受け止めようとした方向。


 それに三度動揺し、“自分が放った魔法を直接お腹に受けてしまう”。


 ……最初にしゃがんで避けられた『念動力』を、彼の背中にぶつけようと動かしていたせいだ。

 ドールにバレていないと思っていたのか、そもそも最初の一撃を避けさせて後ろから攻撃するつもりだったのか、その一撃には加減が無かった。


 とはいえ、自分の魔力が戻ってきただけなので、そこにダメージはない。異物として排出された魔力が戻ってきただけだ。

 ただ、多少の衝撃はある。

 体外に排出される異物なのだから当然だ。




 そんな彼女の横から足首を軽く蹴り、ガクンと姿勢を崩し──倒れてくる身体の脇腹に向け、ドールは全力の突きを放った。




「っ!」


 ズドン、と人の身体から聞こえるにはあまりにも重い音が響く。

 完璧なボディーブローが脇腹にキマった。


 当然、リフレシアも魔力操作で防御はしただろうが……魔力移動だけが乗った拳とはいえ、その威力は計り知れない。


 相手が防御に回した魔力を上回っての一撃となっただろう

 なんせ“一撃必殺を狙う状態”での一撃だ。

 持って生まれた格闘センスと筋肉に加え、全力の魔力。

 相手の魔力を上回らない訳がない。


 ……どうやら、武器の準備は必要なかったようだ。




 ──とは、考えない。




 最初に視た『並行世界』では、荷物にたどり着くと同時に剣を投げれば、ソレを全て払うために『念動力』を用いるため隙だらけになり、そこをドールが一撃で倒す光景が映った。


 “だから必ずそうはならない”。


 そのためすぐには投げなかったのだが、それはつまり、この手にある剣を投げれば彼女が勝ってしまう要素があるということになる。


 それが分かる前にこうして決着が着いたのなら良いのだが……ドールを見ると、そんな楽観視が出来ないことはすぐに理解できた。

 構えを解いていない以上、まだ勝負は続いている。


 ……ここで武器を手渡すべきなのか……? それとも『並行世界』の魔法を使って確認するべきか……。

 ……そう悩んでいる間にも、リフレシアがフラフラながらも立ち上がった。


「ふっ……!」


 一息に距離を詰めるために、軽く前に飛ぶように、ドールが一歩踏み込む。




 そんな彼に向けて、机の上に置いてあった薬品が飛んできた。

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