師匠として、魔法使いとして
同じ名前では、同じ魔法使いや『勇者の魔女狩り』に、すぐ正体がバレてしまう。
だから咄嗟に、本名である魔王の名に反応してしまっても言い訳できるよう、似た語感の偽名を使っているのだろう。
「…………はぁ。不覚だったわ。
まさか、それだけでバレるなんてね」
諦めたように大きくため息を吐いて、そう呟く。
「ここで言い訳したって、アンタは納得してくれないよね?」
「まあ、納得はしませんね」
「同じ属性で似た名前ってだけで魔王断定なんて、普通ならあり得ないでしょ。
……そう言ってやりたいけど、『並行世界』の魔王から聞かされてるんでしょうし。
今のだって、客観的に見たらこれだけ怪しい部分があるから注意しろ、的なものじゃない」
喋り方が砕けたのは、教師としての「フリーシア・ヴィルディット」と、魔王としての「リフレシア・ヴァーデッド」の意識を切り替えたからだろうか。
「それで、私が魔王だってことを明かして、どうしたいつもり? 脅迫かなにか?」
「脅迫したところで、リフレシア・ヴァーデッドの思想は変わらないでしょう。
あくまでも私達は、あなたの「過去に戻りたい」という思想を変えないといけない。
一人の魔法使いがその思想に染まっているだけなら何もしませんが、魔王であるあなたが染まっているとなると、さすがに食い止めないといけなくなる」
あらゆる魔法使いに魔法を使わせる魔王という存在は、その名声だけで魔法使いにある程度の影響力を与える。
『念動力』の魔王は最も新しい魔王であるとはいえ、それでも魔王になって三十年近く経っている。
今はまだ『並行世界』の魔王が進言すれば止めることが出来る程度の影響力だろうが、それでもさらに年月が経てば、『並行世界』の魔王とは別の魔王として、彼女の方向性を支持する人が多くなる可能性がある。
そもそも『並行世界』の魔王が唱える機械との共存だって、最も古い魔王である立場があっても、ほとんどの魔法使いが支持していないのが現状だ。
「今回のように、弟子に対して酷いことをしたと反省した以上、同じ手段は取らないと思います。
ですがもし、他の手段をとって、ミミーシアが魔王になれる素質を得た時……そして、その魔王に成れる機会を、ミミーシア自身が拒絶した時……あなたは彼女に強制することなく、彼女の自由判断に任せて、魔王に成るかどうかを判断させることが出来ますか?」
「…………」
「魔王であるあなたが、恐怖で心が潰れれば魔法が使えなくなる、なんてことを調べもせず、強行的な手段に出るほどまでに、ミミーシアの才能が溢れているのなら……彼女を無理矢理にでも──師匠としての立場を利用してでも、魔王にしようとするようにしか思えない」
ただこれは、私の勝手な思い込みだ。
これから先は本当に、ウリシャのことを考えてくれる、良い師匠になってくれる可能性だってある。
だから、より大切なのは……そもそも彼女が目指そうとしているものが、危ういものだと知ってもらうこと。




