解散(早い
「──そこで、俺は考えた訳。
『強化』の魔法って肉体を強化する訳だけど、これをこの輪ゴムに施して撃つだけで、遠距離から攻撃することも出来るんだって」
「ははは……って、あれ?」
いつの間にやら自分の話ばかりするようになったシュウに辟易し始めたところで、ようやくある異常に気がついた。
「ルコリティさんとレイスがいない」
「これなら魔法が開花していなくても、距離を取られた状態から攻撃できるんだから、まあなんて言うの? 近くても遠くでもちゃんと戦えるってのは、かなり強いよねって話で──」
「いえあの、フェイダンさん。後ろを付いてきていた二人がですね」
「──ん?」
自分語りに盲目になり、全く気づいていなかった。
立ち止まって振り返ってみても、二人の姿が全く見えない。
人混みに紛れて遅れている、といった感じでもない。
はぐれてしまったとしか言えなかった。
「……これ、かなりヤバくないですか?」
何のために六人集まっているのか。それは集団行動をすることで、危険から身を守るために他ならない。
もしかしたらそう……とっくに二人は何か事件に巻き込まれて、誘拐やら何かされてしまったのか……。
「ああ、大丈夫大丈夫」
そんな不安を、シュウは手を振ってあっさりと否定した。
「花火を見るための場所は他の路地からでも行けるし、多分少しでも遠回りして良いから人気のない道を選んだんだって」
「でも……戻って探したほうが良くないですか?」
「この人混みの中見つけるの? 無理だって」
面倒臭そうにウリシャの提案を否定する。
魔法使いだけの日ということもあり、広い通りを埋め尽くす程人が密集している訳でもない。
確かにいつもの平日よりかは通りに沢山の人がいるものの、多少広がって歩いても余裕がある程度だ。
それなのに拒絶するのはただ単にシュウが面倒くさいだけだろうことは、ウリシャもすぐに察しがついた。
「だいたいさ、あの二人がそんな簡単に捕まるように思う? 俺は思わないね。
むしろ、襲撃犯を真っ先に退治するタイプでしょ」
「…………まあ、そうですね……」
とはいえ、その自分本位の薄情さに苛立ちはしたものの、言い訳めいたその言葉には納得せざるを得ない説得力があったので、この場は彼の言葉を呑むことにした。
「それよりも、俺の魔法の続きだけど」
「あっ……」
また面白くもない話をされそうになったところで、前を歩いていた二人が、こちらが少し立ち止まっていたことに気付くことなく、二人並んで歩いていっていることに気付いた。
「ちょっと待って」
と呼びかけようとして、留まる。
「あの、フェイダンさん。
このまま真っ直ぐじゃなくて、別の道で集合場所に向かえませんか?」
「あれ? 人気のないところに行きたいって……ウリシャちゃんったら、積極的だね」
「ちっ!」
「ひっ……!」
日頃大人しい子程、本気で怒ったときが怖いという典型である。
「……じゃあ良いです。学校との約束を破ることになりますが、一人で行きます」
「ご、ごめんごめん。もうそういうこと言わないから。」
「……私、あなたに襲われましたとかいうオチはイヤですよ?」
「大丈夫。絶対にそういうことはしないから。
ほら、コッチの道だとそれなりに人がいるけど、ちゃんと集合場所には行けるから」
左側の路地を指して言うシュウに従い、二人共移動を開始。
さすがに空気の読めないシュウでも、日頃の穏やかさのせいで感じた落差による恐怖心を引きずったままウリシャに迫れるはずもない。
せめてムードとかそういう雰囲気的なものが変わらなければ、手は出せそうになかった。
というか、魔法使いとしての腕は現状、ウリシャのほうが上だ。
こうして警戒されたまま襲ったところで返り討ちに遭うのが関の山だろう。
「でも、何でまた俺たちも別の道を?」
「エスリンとケーンドさんを二人きりにしたかったからですよ」
「ふ~ん、アボニーがエスリンちゃんのこと気にしてたのは分かってたけど、まさか彼女の方もとはね」
「まさか。エスリンはケーンドさんに感心なんてありませんよ」
「え? じゃあなんで」
「余計なことをしたがらないエスリンだから、彼に全く感心が無いんですよ。
ですから少しでも良いから二人きりにしたら、彼と関わることが余計なことと思わなくなるかもなぁ、と思いまして」
「あ~……余計なお世話ってやつ?」
「かもしれませんけど……少なくともエスリンにとっては、悪い話じゃないはずです。
ケーンドさんの魔法が、何か魔法薬学の役に立つと思えば、それだけで関わってくれるはずですから」




