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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
幕間(夏)
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お誘い

 この街での夏祭りは、八月が始まってから二十日頃までの、約半月ほどの期間をもって開催される。

 つまり、魔法使いとは無関係な、一般的な学生が満喫する夏休みにドンピシャと直撃する形になるということだ。


 その中で魔法使いが顔を出せるのは、初週の休日が引っ掛かる三日間だけ。


 別に、国や街や主催者が魔法使いを差別している訳ではない。むしろ守られているからこその処置だとも言える。

 と言うのも、このお祭りは世界中から観光客が来る程に大きい。

 となれば、そのやってくる観光客の中には、魔法使いに対していい印象を持っていない人達だって大勢いる。

 魔法使いが普通に暮らしている国として知られていても、こればかりは避けられない。


 むしろ知られているからこそやってくる奴らだっているだろう。


 その対策として、初週の休日が過ぎるまでは、警察の中の魔法使い部門が全力で魔法使いを守ってくれることになっている。

 さらに国としても、この三日間は観光客が来てもお祭りに参加できないように──というか、この三日が過ぎてから祭りを行うよう告知している。


 本当は魔法使いを受け入れられない人全員の入国を拒絶するべきなのだろうが、この観光収入が減少するのは国としても痛手になる。この辺が落とし所だろう。


 そもそも魔法使いの起源は魔女だ。

 その魔法を用いて、ただの人間を影から支えてきた存在とも言える。

 ここで魔法使いサイドがゴネるのは、その起源の否定そのものになってしまうだろう。過去を脈絡と受け継いでいる彼女たちがソレをするはずもない。


 そして本来なら、そうして助けられる人間もまた、魔法使いに感謝の意を態度で示すべきなのだろうが……そこは時代の流れと言うべきか。

 人間は、その力を己に振るわれる恐怖を原動力に、未来(あしもと)ばかりを見て進む人が多くなってしまった。


「先生! 一緒にお祭りに行きませんか?」


 そんな、期間の短いお祭りに誘う生徒の声。

 ウリシャ・ミミーシア。

 おかっぱ頭に鋭い目つき、魔法を扱う時だけ掛けるメガネを今は外しているにも関わらず、生真面目そうな雰囲気がにじみ出ている女の子。


「いえ、私は当日用事がありますので」


 それに答えたのは、彼女よりも背の低い褐色肌の女の子だった。

 体型を隠すようなローブに付いたフードは、少し赤みがかった髪に被せ、背中には様々な武器が入った大きな籠を背負っている。

 見た目的にはただの荷物持ちの子供でしかないので、とてもじゃないが先生と呼ばれるような人には見えないが、彼女──リフィイルは、れっきとしたこの学校の教師である。


「用事? 三日間のどれかで良いんですよ? その日に合わせて行こうかと思ってるんですが……」

「私じゃなくて、さっきの師匠を誘えば良いんじゃないですか?」


 さっきの、というのは、つい先程までいた、魔法薬学の教師でありウリシャの師匠でもある、フリーシアのことだろう。


「『勇者の魔女狩り(ブーンドック)』が活動する可能性があるので、必ず複数人で行動するように言われたから相手を探しているんですよね? だったらちょうど良いじゃないですか」

「師匠だと気を遣ってしまうので」

「……それだと、私なら気を遣わないってことになるんですけど」

「はい」


 悪びれることなく即肯定。


「ドール先生もあの無言っぷりなので気まずいですから論外ですし。

 その点先生なら、さっきので実力があるのは分かりましたから、イザって時は役に立ちそうですので」

「いや言葉のチョイスに悪意しかないですけどっ!?」


 真面目な雰囲気と言葉遣いながら、どこか辛辣に聞こえる。

 師匠とのやり取りを聞いて、彼女なりに何か思うところがあったのかもしれない。


「まあ、あなたの師匠よりも弱いのは確かですからね。

 そう言えばめちゃくちゃ注目されてましたけど、あのフリーシア先生って有名な人なんですか?」

「多くの生徒が授業を取りますからね。

 今年入学した人たちも、私達のような先輩たちからの評判を聞いて、来年は取るんじゃないですか?」

「ふ~ん……レイスさんは取ってたんですか?」

「取ってない」


 遠くて練習していたはずなのにいつの間にやら近くに来ていた生徒に訊ねるリフィイル。

 リフィイルと同じ肌の色ながら、こちらは意図的に焼いたもの。細い腰回りでさらに強調された大きな胸が揺れる。


「あたし自身が魔法薬学をバカにしてたから余計にね。

 ま、あの男を倒すのに練習して以来、便利なのは分かったから、取ってなかったのはちょっと後悔してるけど」


 ぶっきばらぼうだからこそ本心で言っている感じがする。

 ちなみに話題に上ったドールは現在、別の生徒を教えていてこちらの会話に交じる気配もない。


「で、アンタは来るの?」

「……というか、レイスさんは私なんて居る必要ないですよね?」

「そりゃあたしは天才だからそうだけど、それでも複数で動く必要があるんでしょ」

「そうですね。

 まあ正直なことを言えば、あなたが参加するってこと自体にちょっとビックリしてますけど」

「ウリシャとエスリンに誘われたから。それ以上でも以下でもないって」

「じゃあ、三人で動くなら余計に私はいらないですね」

「そこまでして私達と一緒はイヤですか……?」


 静かに話の流れを見守っていたウリシャが、少し落ち込みながら口を挟む。


「そりゃ先生には、ドール先生とのデートで予定が埋まってるのは分かるんですよ?

 でも学校側の通知ですし、先生の予定に合わせますから、どこか開けられないですか?」

「いえ、彼とデートとかじゃなくてですね……。

 私も彼も、来年はこの国を出ますから」

「えっ?」

「一年だけの授業という約束ですから。

 次の学校の顔見せに行かないといけないんですよ。ですので、帰ってくるのはその三日間の最終日ですね」


 その答えは予想外だったのか。壮大なネタバレを不意にされたような表情が、その顔に貼り付いた。


「まあそういう訳ですので、生徒の皆さんだけでお願いしますね。

 何かに巻き込まれないよう、必ず複数で行動してくださいよ」


 そんな先生らしい言葉だけを残して、リフィイルは授業用の敷地を出て行った。

 その後を追いかける生徒が一人いたが、とりあえずは全員がその場に残った。

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