逆転の一手
「私は……知らないからと、あの子の可能性を、摘み取ろうとした……」
そんな、初めて魔法使いを殺す手段を聞いたフリーシアは、激しく悔いている。
教師となった彼女はきっと、魔法というものを己の軸に置いている。
それを拒絶することの辛さを、ずっと魔法と共に歩んできてしまっているからこそ、今捕まってしまっている彼女たちよりも、深く理解できてしまうのだろう。
だから、自分に置き換えた時──恐怖によって魔法を使いたくないと、“自らに据えた軸を否定することを想像”した時、それがどれだけ残酷なのか、思い知っているのかもしれない。
「そんな酷いことを……私は……。
だったら今、私が出来ることは……」
「……魔法使いでいたくないと、思わせないこと。
強さを、頼もしさを、見せてあげること」
そうして、魔法使いとしてではなく、人として自分を拒絶しようとしているフリーシアの結論を変化させ、明確に導かせるために、私はようやく口を開いた。
彼女たちは、今以上の恐怖を味わうかもしれない。
もっと酷いことをされるかもしれない。
助けを求めても救われない環境に放り込まれるかもしれない。
そうなっても、その相手を殺すことなく、逃れなければならない。
そんな、見えざる未来への恐怖心を、あっさりと吹き飛ばすぐらいの魔法があると、彼女たちに思わせるしかない。
「女性である以上、同じような目に遭うことだってある。
それは魔法使いであろうと無かろうと、変わらない事実。
それでも、ちゃんと魔法を使うことが出来れば……私達は、自分の身を守ることが出来る」
必要なのは、身を護るための手段を増やすこと。
刃物を持ち歩いての護身では、相手を殺したり、逆にその刃を奪われてしまうかもしれない。
しかし自分しか使えない、この魔法という力なら……常に自分と共にあり、極めれば相手を殺さぬよう自然と手加減でき、相手に奪われる心配もない。
怖い思いも確かにする。
だがその一面だけを見て、自らを助けてくれるあらゆる面からも目を逸らして逃げるのは……悪くはないのかもしれない、損でしかない。
「そしてそれが出来るのは──」
「──私達」
声を落とし、落ち込んでいたフリーシアが、そう覚悟を口にした瞬間──
──彼女を抑え込み、服を脱がそうとしていた黒ずくめの男たちが、一斉に吹き飛んだ。
私達が入ってきた出入口に向け、その全員が吹き飛ばされる。
……いや、それでは語弊がある。
あれはそう……まるで、見えない腕で掴まれて、外に放り投げられたような……。
「なっ……!」
生徒たちを脅し、彼女たちの魔法を使えなくするための言葉は……フリーシアが全力を出すキッカケの言葉と成った。
彼が私の言葉を利用するのなら、私は彼の言葉を利用して、この場をひっくり返せる人を、焚きつけるだけ。
それが、“私自身が失敗した後、『並行世界』で視た世界から得た”、この場を切り抜けるための手段。
……あの時もし、私が私自身の失敗を取り返そうとすれば、それこそ取り返しのつかないことになっていた。
それが分かったから、敢えて私は黙っていたのだが……。
……でも、そのせいで視えた世界では、ウリシャが魔法を使えなくなって、その原因は師匠であるフリーシアの……。
……いや、今はそのことは良い。
追求は「『並行世界』で視たから」という理由以外の、第三者が見ても分かる明確な証拠を、集めてからだ。
「そ、そんな無茶苦茶な手段で、彼女たちからの恐怖心を、本当に取り除けるのか?」
立ち上がり、乱れた服装を整えながら、脱がされた白衣を拾い、バサリと羽織るフリーシアに、動揺した男が言葉をぶつける。
それに彼女は、ただ一言だけ、
「分からない」
と告げた。
「なら……!」
「でも、少なくとも今、この状況からいち早く脱してあげることこそが、彼女たちのためになる」
腕を横に伸ばし、勢いよく振るう。
その、たった一振りの動きだけで……生徒たちを囲っていた黒ずくめの男たち全員が吹き飛び、その身体を壁へと打ち付けた。
第二章はここまでとなります。
今回が難産だっただけに、第三章はもう少し短い期間で投下出来るかと。
ただあくまで予想でしか無いので、あまり期待はしないで下さいな……。
忙しかったら普通にまた二ヶ月ほど掛かると思うので……。
あと、一章の段階でブックマークしてくれている方、評価を下してくれた方、遅ればせながらありがとうございました。
これからもぜひよろしくお願いします。




