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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
夏の厄介事
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逆転の一手

「私は……知らないからと、あの子の可能性を、摘み取ろうとした……」


 そんな、初めて魔法使いを殺す手段を聞いたフリーシアは、激しく悔いている。


 教師となった彼女はきっと、魔法というものを己の軸に置いている。

 それを拒絶することの辛さを、ずっと魔法と共に歩んできてしまっているからこそ、今捕まってしまっている彼女たちよりも、深く理解できてしまうのだろう。


 だから、自分に置き換えた時──恐怖によって魔法を使いたくないと、“自らに据えた軸を否定することを想像”した時、それがどれだけ残酷なのか、思い知っているのかもしれない。


「そんな酷いことを……私は……。

 だったら今、私が出来ることは……」

「……魔法使いでいたくないと、思わせないこと。

 強さを、頼もしさを、見せてあげること」


 そうして、魔法使いとしてではなく、人として自分を拒絶しようとしているフリーシアの結論を変化させ、明確に導かせるために、私はようやく口を開いた。


 彼女たちは、今以上の恐怖を味わうかもしれない。

 もっと酷いことをされるかもしれない。

 助けを求めても救われない環境に放り込まれるかもしれない。


 そうなっても、その相手を殺すことなく、逃れなければならない。


 そんな、見えざる未来への恐怖心を、あっさりと吹き飛ばすぐらいの魔法があると、彼女たちに思わせるしかない。


「女性である以上、同じような目に遭うことだってある。

 それは魔法使いであろうと無かろうと、変わらない事実。

 それでも、ちゃんと魔法を使うことが出来れば……私達は、自分の身を守ることが出来る」


 必要なのは、身を護るための手段を増やすこと。

 刃物を持ち歩いての護身では、相手を殺したり、逆にその刃を奪われてしまうかもしれない。

 しかし自分しか使えない、この魔法という力なら……常に自分と共にあり、極めれば相手を殺さぬよう自然と手加減でき、相手に奪われる心配もない。


 怖い思いも確かにする。


 だがその一面だけを見て、自らを助けてくれるあらゆる面からも目を逸らして逃げるのは……悪くはないのかもしれない、損でしかない。


「そしてそれが出来るのは──」




「──私達」




 声を落とし、落ち込んでいたフリーシアが、そう覚悟を口にした瞬間──




 ──彼女を抑え込み、服を脱がそうとしていた黒ずくめの男たちが、一斉に吹き飛んだ。




 私達が入ってきた出入口に向け、その全員が吹き飛ばされる。

 ……いや、それでは語弊がある。


 あれはそう……まるで、見えない腕で掴まれて、外に放り投げられたような……。


「なっ……!」


 生徒たちを脅し、彼女たちの魔法を使えなくするための言葉は……フリーシアが全力を出すキッカケの言葉と成った。


 彼が私の言葉を利用するのなら、私は彼の言葉を利用して、この場をひっくり返せる人を、焚きつけるだけ。


 それが、“私自身が失敗した後、『並行世界』で視た世界から得た”、この場を切り抜けるための手段。

 ……あの時もし、私が私自身の失敗を取り返そうとすれば、それこそ取り返しのつかないことになっていた。


 それが分かったから、敢えて私は黙っていたのだが……。

 ……でも、そのせいで視えた世界では、ウリシャが魔法を使えなくなって、その原因は師匠であるフリーシアの……。


 ……いや、今はそのことは良い。


 追求は「『並行世界』で視たから」という理由以外の、第三者が見ても分かる明確な証拠を、集めてからだ。


「そ、そんな無茶苦茶な手段で、彼女たちからの恐怖心を、本当に取り除けるのか?」


 立ち上がり、乱れた服装を整えながら、脱がされた白衣を拾い、バサリと羽織るフリーシアに、動揺した男が言葉をぶつける。


 それに彼女は、ただ一言だけ、


「分からない」


 と告げた。


「なら……!」

「でも、少なくとも今、この状況からいち早く脱してあげることこそが、彼女たちのためになる」


 腕を横に伸ばし、勢いよく振るう。


 その、たった一振りの動きだけで……生徒たちを囲っていた黒ずくめの男たち全員が吹き飛び、その身体を壁へと打ち付けた。

 第二章はここまでとなります。

 今回が難産だっただけに、第三章はもう少し短い期間で投下出来るかと。


 ただあくまで予想でしか無いので、あまり期待はしないで下さいな……。

 忙しかったら普通にまた二ヶ月ほど掛かると思うので……。



 あと、一章の段階でブックマークしてくれている方、評価を下してくれた方、遅ればせながらありがとうございました。

 これからもぜひよろしくお願いします。

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