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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
夏の厄介事
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『勇者の魔女狩り』の狙い

 忘れているはずがない。

 彼等と真正面から対峙した魔法使いは皆、その名を恐怖と警戒の対象として刻んでいる。


 だから私も、事前に手を打つためにと、学園長に警戒を促す際、その名前をしっかりと出した。


 確かに、思想だけの群れに成り果てている節はある。

 組織と定義するには疑問しかない。


 しかしそれでも、こうして私達を殺す策を持ってくる。

 魔法であっさりと倒せる“ただの人間”なのに、それを許さない手段を講じてくる。


 さっきも言ったが、今回だってもし私が事前に手を打たなければ、学校に通う半数の生徒が、その犠牲になっていた程だ。




 だからこそ、怖い。




 魔法だけでどうにもならない相手になって、立ち塞がってくるから。


「かつて勇者様が全ての魔王を倒した時、その勇気に感化された当時の民衆が行おうとしたこと……それが『魔女狩り』です。

 『魔女狩り』とは言葉の通り、あなた達魔法使いの祖先である、魔法を使う女性を処刑していくこと。

 それも、彼女たちの中から容易に捕まえられる者を集め、より惨たらしく・より残酷にね。

 さて……それでは何故、そうしたことをするのか。分かるかな?」


 掌を上にした手を向けられ回答を求められたフリーシアは、しばし考えたものの答えが出ないのか、ただ悔しそうな表情を浮かべるだけ。


「分かりませんか? ならあなたは、魔法使いが魔法を使えなくなる理由をご存じないのかな?」

「そんなの……ある訳ない。

 魔法使いが、魔法を使えなくなるなんて」

「なるほど。魔法使いの何人かは、その事実に目を背けているようだ。

 まだ、そちらの見た目が子供っぽい魔法使いの方が、分かっていると見える」


 私のことをチラりと目で指した後、男は言葉を続ける。


「魔法使いの魔法を使えなくするのは、至って簡単。

 本人が魔法を使いたくないと思えば良い」

「……え?」


 さっきも言ったことの繰り返しだが、最初から話をされたからか、時間が経ったからかは分からないが、ようやく理解が及んできたのだろう。

 捕まっている女の子たちから、そんな驚きの声が聞こえた。


「何故昔、『魔女狩り』と称して、多くの魔女を殺そうとしたのか。

 本当に魔女でなくても構わないからと、女性を多く殺そうとしたのか。

 それはただ、魔女だと思われたら殺されるという恐怖心を、世界に蔓延させるのが狙いだったからです」


 その恐怖が蔓延すればどうなるのか。

 もう、答えは出たも当然だ。


「ただ疑われただけで殺されるような世界になれば、魔女は魔法を使いたくなくなる。

 自分たち魔法使いとは無関係な人まで魔女だと断じられ、殺されてしまうから。

 その罪悪感から逃れるためにも魔法使いは、自らの魔法を封印し、使わないようにするしかない。

 自分は違う。自分のせいで魔法使いじゃない女性が疑われ、処刑されたんじゃない。

 そう思い込むための言い訳としてね。

 そうすれば、全ての魔法使いを殺したことになる。

 そんな当時の民衆の意思を受け継いでいるからこそ、私達は『勇者の魔女狩り(ブーンドック)』という名を名乗っているんですよ」


 やろうとしていることは同じだ。


 恐怖によって、魔法を使いたくないと思わせる。


 魔法使いだったせいで襲われたと分かれば、二度と魔法を使いたくないと思わせることが出来る。


 それこそが、“ただの人間”が魔法使いを殺す──魔法使いから“ただの人間”へと堕とすための、唯一の手段。


「この話を聞いて、それなら魔法を使いたくないと思わなければ良いと、そう思いませんでしたか?

 いえ、思ってくださって結構。

 しかしそうなれば、あなた達はまた、同じ恐怖を味わうことになる。

 次は下着姿にされるだけでは済まないかもしれません。

 私達人間を殺してしまって、本当の罪人になってしまうかもしれません。

 分かりますか? 世界は多くの“ただの人間”が回しているんですよ? 魔法使いが、魔法で人間を殺したとなれば、ただの罪状だけで済みますかね? もっと酷い、これ以上に痛い、魔法が使えなくなっても解放されない、そんな残酷な場所に閉じ込められるかもしれませんよ?」


 だからここで、魔法を使わなくなれば良い。


 それが一番、怖くなくて、痛くなくて、何もされない、選択肢。


「だから……何もしない……」


 彼女たちが脱がされて、けれどもその肌を蹂躙されない理由に至ったのか、フリーシアが呟くように言葉を紡ぐ。

 いきなり酷いことをされても理解が及ばないかもしれないからと、敢えて本人に想像させる余地を残している。


 そうして思いつく、今以上に酷いことなんてのは……一つだけだ。

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