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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
夏の厄介事
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争いを避けるための言葉

「……それは、我々の人数が少ない、という意味かな?」


 ようやく反応が帰ってきた、ぐぐもったリーダー格の声に、


「そちらも少ない、という意味ですよ。

 大方、捕まえに行ったそちらの組織の人たちも何人か、ここに戻って来ていないんじゃないですか?」

「…………」


 魔法使いのひよっこだからと、人数を分散させたのが失敗だった。

 いや、そもそも大勢を攫う計画なら、それなりに分散させざるを得ないのは確かではあるが。


「ここにいるあなた達の人数は四十人程でしょうか。

 生徒一人を捕まえるのに五人ほど人員を割いて、戻ってきたのがあなた達、といったところですかね。

 計算数より少ないところを見ると、何人か怪我をさせられたか、他の人達の様子を見に行っているか……どうです? 当たらずとも遠からずでしょ」


 『並行世界』で視た人数から考えると、おそらくは街にいる殆どが所属しているであろう組織。


 いや、組織とは少し違うか。


 今となってはもう、ただの「思想集団」のようなものに成り下がっているものを、そう定義して良いのかは甚だ疑問だ。


「……君も、そちらの人と一緒で、服を脱いでもらえるかな?」


 私の言葉を受け、私が見た目通りの子供ではないことを悟ったのだろう。

 話をぶった切るリーダー格の言葉にしかし、私は余裕の笑みを浮かべる。


「あら、子供の裸が見たいクチですか?」

「抵抗しないようにするだけですよ。

 それとも君は、他の仲間たちを見捨てるつもりかな?」

「魔法使いと一括りにして、同じ魔法使いを仲間と定義してきますか。

 まあ、その認識は間違いではありませんね。

 でも、だからこそあなたの言葉を聞くわけにはいきません」

「……彼女たちを見殺しにすると?」

「いえ。そもそもあなた達が彼女たちをどうにかするなんて出来ないから無意味だと、そう言いたいんです。

 あなた達は、彼女たちの優しさのおかげで無事でいる。

 その事実を噛みしめるべきですよ。

 そして私は、その優しい彼女たちを助けるためにも、ここで無抵抗でいる訳にはいかない」


 一方的に告げると同時、呪文詠唱を開始。



 ──見えざる腕と衝撃を

   その身に宿すは強気姫

   汝の力、我が魔力を糧とし

   敵を砕く力となりて

   今この場にて顕現せよ──



 詠唱する声が聞こえたのか、扉の裏側で隠れ、事の成り行きを見守っていた黒ずくめの男たちが、一斉に私を抑え込もうとしてくる。


 だが私が唱えたのは、『念動力』の魔王の力の中で、最も単純で、最も速く終わる魔法。

 声が聞こえてから飛びつこうとしたのでは、距離がありすぎるので間に合うはずもない。


「吹き飛べ──『念動力』!」


 掌を真っ直ぐに伸ばし、真正面側に立っている黒ずくめ達に向け、その詠唱魔法を放つ。

 同時、思いきりその場にしゃがみ、左足を軸にその場で回転しながら足を伸ばす。


 魔法使いのその動きは、それだけで骨が折られても仕方がないものだと分かっているのだろう。

 足を引っ掛けられないためにも、迫っていた男たちの足が止まった。


 そうして身体の位置が元に戻ってから放った魔法の結果を見てみると、魔法に巻き込まれて舞台の方まで吹き飛ばされていたのは、一人だけだった。


 おそらくは逃げ遅れた一人なのだろうが……それ以外を踏まえてもこの集団、連携が出来ている。

 魔力操作で強くなっていると予測した足払いを避けた後、魔法が放たれたあとに迫っても意味がないと判断し、すぐにまた突撃してこない冷静さも評価できる。


 いや、未熟とはいえ魔法使いを誘拐できた人たちなのだから、単純な魔法程度なら避けられて当たり前なのか。


 しかし、一人でも倒せたのなら十分だ。

 私の言葉に説得力を持たせるには。


「あなた達が捕まえたその子達は、まだ自分の力を理解できていない。

 人に向けて魔法を使ったことなんて無いから、殺してしまわないかと不安になる。

 だから抵抗しようとしないで、大人しく捕まることを選んだ。

 でも、私も、今は捕まっているフリーシアもそうじゃない。人に向けて魔法使うことに手慣れている。

 だから今吹き飛ばされたその人だって、死んではいない。

 もし大人しく捕まることを選ばず、人を殺してでも助かろうとするような生徒だったら……あなた達、今日には死んでしまっていましたよ?」


 ザワリと、怒気を孕んだ空気が一瞬にして充満する。

 バカにしたような言い方は意図したものでは無かったが、今回はプラスに働いたと見て良いだろう。


 このまま混乱に乗じて……という思考は、集団の中から一人の手が上がったことで止まった。


「なるほど。その言い分なら君もまた、この子達と同じように優しい人、ということかな」


 それは最初から私と会話をしていた、リーダーと思われる男性の声だった

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