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魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
夏の厄介事
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悩み相談

「…………」


 生まれたその水をどうするのかと見ていると、徐々に、彼女自身の腕にその水が纏われていく。


 けれども、手の平にある水は減らない。

 使われる水が次々と創られているということか。


 ……ふむ……魔法で生み出した水を魔力移動で動かし、しかも自分の腕を濡れないようにしつつその水を固定できるよう魔力変質を行っているのか……。


 魔力操作という動きの中に自分の魔法を混ぜた、といったところか。

 そして、そんな手間の掛かることを行っているということは……。


「……その生み出せる水、本当に湧き出るようにしか出ないんですね」

「っ! は、はい! その通りです!」


 腕全体を覆いそうだった水の動きが止まる。

 しかし解除されることはなく、その腕に纏われ続けている。


 集中が切れているはずなのに、維持は出来ている。

 魔法使いが未だ魔女と呼ばれていた頃に出来ていたことだ。

 これが出来る魔法使いは確かに多くいるが、それでも貴重な才能であり能力であることに変わりはない。


「レイスの『蛇』みたいに、自由に勢いを乗せて魔法を放てないのですか……。

 元々魔法自体が、異物となった魔力の排出ですからね。カーディナのような人がいてもおかしくはありません」

「でも……ただ、水を湧き出すだけでは、せっかく開花した魔法が無駄になりますよね?

 だからこんな方法を取ろうと思ったのですが……」

「う~ん……まず、水を湧き出すだけの魔法が無駄とは、私は思いません。

 戦いに活用したい訳ではないのなら、そこまで気にすることではありませんからね。己の身を守るだけなら、それこそ魔力操作でも事足りますし。

 ですが、あなたがその『水』を活用させた方法を考えているというのなら、伸ばすべきだとも思います」

「それは……この方法のままで良い、ってことですか?」

「他にもいい方法があると思うなら、色々と試したほうが良いということです。

 まず最初に思いついたのが、その魔力操作で自分の属性を活用させる方法でしょう? 魔力変質を二重に使っているようなものですから、中々のものですよ。

 ただ個人的なことを言っていいのなら、魔法だけに縛られないで、機械に関するものじゃなくても良いから、道具に頼ったほうがもっと伸び代が出ると思うぐらいでしょうか」


 魔力操作の授業における最終目標は、手に持つ道具にも魔力移動と魔力変質を行うことにある。

 自らの属性を活用させたい気持ちは理解できるが、その対象を自分の身体だけに留めるような真似だけは止めてほしい。


「でも……これって、必要のないことですよね?

 こんなことをするよりも、魔力だけを腕に纏わせて、その魔力を硬くするよう強化した方が、効率は良いんですよね?」


 言われたことをただ復唱しただけのようなその言葉は、訊ねるまでもなく、さっき言い合いになった『強化』を教えている教師のものだろう。


 例え違っていたとしても、自分のやり方を押し付けている段階で、あの教師が間違えているにもほどがある。


 私たち先人がすることは、ただ自分の知っている知識を、ただ伝えることだけ。

 その伝えたものをどうするかは、当人たちに決めさせなければならない。


 例え不要と切り捨てられることになろうとも。


「『強化』の魔法は持ち物や身体を強くしたり丈夫にしたりすることだけを教えますが、魔力操作の中の魔力変質を覚えれば、今あなたがしているようなことが、あなた本人の応用力一つで、色々と出来るようになります」

「色々……?」

「カーディナさん、今あなたがしているようなことですよ。

 あなたは今、少なくともこの校内では唯一の事をやっているんです」


 ピンときていないような表情。

 こちらとしては褒めているつもりなのだが、伝え方や言葉選びがヘタクソなせいか、全く伝わっていない。


 しかしそれでも、私は伝えたい言葉を止めることなく続ける。


「魔法は、必要・不必要、効率・非効率ではありません。

 一人一人開花する属性が違うように、皆それぞれのやり方があるものです。

 今は非効率でも、それが後で活きる可能性だってあります。

 だから今、あなたがやりたいことややりやすいと思うもの、あなたがコレだと思うものを、伸ばしてください。

 そのために何かアドバイスが欲しいのなら、いくらでもあげますよ。

 つい長くなってしまっても構わないのなら、ですけどね」


 言って、口元だけで笑みを作ってやる。

 相変わらず私が伝えたいことはまだ飲み込んでもらえていないようだが……それでも、最後の言葉が自分の悪癖を使ったギャグだと理解してくれたのか。


 ちょっと気を遣ったような──けれども、この話を始めた時の追い詰められたようなものよりは遥かにマシな、微笑のような苦笑のような、何とも言えない表情を浮かべてくれた。

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