表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が唱える機械必要論  作者: ◆smf.0Bn91U
夏の厄介事
PR
25/69

方針の違い

「そんな、挑発なんてする気はありませんよ。冷静に話をしましょう。

 そもそも、どうしてあなたはここまで来たんですか? 放課後に自主練習をしている場ではなく、教師待機室にいる時に声をかけてこれば良かったじゃないですか」

「わたしも最初はそうしようと思いましたよ。

 ですが、わたしの授業を取っている生徒がここに残っているのを見ると、口出しせずにはいられなかったんです。

 間違えた方法ばかりをやって、生徒の成長を阻害し続けるなんて。

 そんなのを無視して何が教師ですか。えぇ?」


「生徒自身が選んだ方法なら見守ってやるのもまた、教師として大事なことだと思いますけどね。

 だってそちらの方が正しいのなら、自然と生徒がそちらを正しいと認識して、そちらの方法を取るでしょう?

 魔法というのは感覚が物を言いますからね。

 良くも悪くも、魔力を持っていてそれを操作するというのは、才能です。

 個人の能力に依存する以上、一人一人が自分に合っていると思うものを見つけてもらうしか無いんですよ」


 例えそれが魔力操作を偽って、『強化』の魔法として教えているようなことであろうとも、だ。

 本人が決めかねているのなら口出しはどんどんするが、生徒個人が『強化』の魔法で正しいと思うのなら、私だって口出しはしない。


 だってそれは、その子の才能に適していると、その子自身が決めたことだろうから。

 もしかしたらその子の魔法自体が、魔力を動かすという意識を持ったほうが、強くなるものの可能性だってある訳だし。


「私はそう思いますが、先生は違うんですか? 自分の方法が絶対だと、そう言いますか?」

「もちろんです。だって『強化』の魔法は、誰にでもある魔法ですから」


 だからそれは、誰にでもあるんじゃなくて、誰でも出来るただの魔力操作だからだ。

 ……と言っても、聞いてはくれないだろう。


 結局は、魔法使いが生徒を入れるために作った方針を受け入れて育った世代、だからだろう。


 この人自身がそれを学んでそれを信じて教師になった以上、いくらデータを示して本物を見せて信じさせようとしても、信じてもらえるはずもない。


「はあ……」

「なんですか、そのため息は?」

「いえ……まあ、いくら話しても無駄だな、と思いまして」

「な……!」

「結局は、方針の違いですよ。

 それで、先生はどうしたいんですか? 私達は授業方針を変えるつもりはないですし、生徒たちが来る以上はこのままですよ。

 それとも、自主的に来ている生徒を、あなたの授業で縛りますか? とはいえ、学びたいと思っているものを制限するのは、この学校の規律に違反すると思いますが」

「私はただ、あなた達が間違えを認めて、ちゃんとこちらと同じ授業を──」

「ですからそれは平行線ですよ。

 話しても無駄、というのはそういうことです。分かりませんか?」

「っ! このっ!!」


 手を上げられる。

 これは殴られるな……と思うと同時、確かにさっきのは煽っているように聞こえたな、という自分の言葉の反省点が脳裏を過ぎる。


 まあ、無駄な話ばかりされて、こちらも気が立っていたから仕方がない。

 そう、自分の反省点に対して、すぐに反省しなくても良いことだと考え直して、その頬に向かって飛んでくる拳を──魔力操作で目に魔力を集めることで、ゆっくりと見ることが出来るソレを、ただ静かに見つめる。


 手で受け止めても良いが……まあ、頭に血が上って、ほぼ無意識に動いた手なのだろう。


「…………」


 普通なら身体が軽く吹き飛びそうな拳だったが、無意識の魔力移動で守られた私の頬には全くダメージがなく、むしろ壁を殴りつけたかのように阻まれたその拳は、音もなく止まった。


「なっ……!」

「意識的な魔力移動しか出来ないから、ただの拳になるんですよ。無意識に移動する癖を付けていれば、その拳にも魔力が宿ったでしょうに。

 いえ、むしろ優しさと見るべきなのかもしれませんね。

 ここでもし、無意識の魔力移動をあなたが出来ていれば、私はその怒りに任せた威力を相殺しきれず、吹き飛んでいたかもしれませんからね」


 これもまた煽るような言葉だなぁ、と思いながら、驚く男性教師に言葉を浴びせたあと、一歩だけ後ろに下がる。


「それで、どうしますか? このままだと本来の目的を達成できませんよ?

 むしろ、やろうとしていたことを逆に、私にされたようなものですけれど」

「っ……!」


 相手も一歩、言葉もなく後ろに下がる。

 ただ彼の場合はどちらかというと、後ずさる、という表現のほうが正しいかもしれない。


 でもこの動きとその驚いたような表情で、私の予想が当たっているという確信が持てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ