8話
私達は広い切り拓かれた道をクライスの車に乗って走っていた。
窓を開け風を感じながら外を眺める。
イーナは泣き疲れて私の膝の上で寝ていた。
「イーナは寝たか?」
頭上から声をかけられた声に私は、
「マルクくんとは仲良くしてたもの。別れるのが寂しかったのね」
イーナの頭を撫でながらそう答えた。
「あの街で一緒に暮らしても良かったんじゃないっすか?」
「私といるといつか必ず争いに巻き込まれるわ。強い力はそれだけで自分も周りも狂わせるのよ」
外を眺めながら答える。
あれから1ヶ月と少し。街にたどり着いてからというもの各々が着の身着のままという状態だった。新たに旅立つ準備をふくめ、ローレンス夫妻とマルクの6人で過ごす日々が多かった。
「まぁ、姉さんが何処に行こうがついて行くっすけどね」
「おい、クライス。俺のリーゼを口説いてんじゃねぇぞ」
「バカじゃないの。ほら来たわよ」
クライスは車を止め、私はイーナを椅子に座らせ車を降りた。
「イーナを頼むわよ」
「了解っす」
先の街で仕入れた銃を片手にクライスは頷く。約100年ほど前に突如現れた魔法を使わないオーバーテクノロジーの逸品だ。
「数は十数匹ってところか」
レオンは車の上から飛び降りて私の隣に立つ。
「十六匹ね」
「魔法は無しだぞ。ありゃ反則だ」
「あら、魔法なしじゃないと勝つ自信がないのかしら」
先の街で私は3人には魔法の力について話した。レオンは特に気にした風もなくクライスもありえないものを見て薄々気付いていたのだろう普通に受け入れてくれた。逆に俺も使えるようになるかもっすと意気揚々としていた。イーナはよくわかっていなかったが、おいおい説明していけばいいだろう。
私は迫り来る魔物の群れの先頭に魔道砲を放った。青白い光が魔物に向かう。
「ちっ」
舌打ちしレオンは魔道砲の横を疾走する。
魔道砲を受けた先頭の集団5匹は爆発とともに消え去り、爆発する瞬間に飛び上がったレオンは爆発した地点を飛び越え魔物の群れの中心に着地すると同時に周りの3匹をあっさり屠った。
「あぶねぇだろ」
「あなたがあの攻撃で死ぬわけないでしょ」
私も疾走し、すれ違いざまに2匹屠る。その間にレオンはさらに3匹屠っていた。
「クソ少な過ぎて話になんねぇなぁ」
「イーナの前では喋り方気をつけてよね。最近、あなたやクライスの真似するんだから」
飛びかかって来た1匹を屠り、レオンに向かった2匹はレオンに屠られる。
「すっかり母親だな。なんなら俺が…」
「ばっかじゃないの」
レオンの言葉を遮り、私は踵を返しながら車に向かい気づかれないように微笑んだ。
私はやはりこの男が嫌いではないのだ。私のことを人間として扱ってくれるレオンを。
私はまだ私を人間だとは思っていないが、それでもイーナの母親でありたいと思う。
巻き込んでしまった責任か、同情なのかこの気持ちが何なのかはまだわからないが泣きはらした顔を笑顔にして迎えてくれるこの子を主としてではなく、イーナの母親として、これからも守っていきたいのだ。
「ママ!」
「ただいま、イーナ」
駆け寄ってくるイーナを私は抱きしめた。
この子の母親として生きることで私は人間になれるのだろうか……




