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剣の記憶 Re:  作者: はじめ
第1章
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7/11

6話

10話


「くっ……!」


 レオンはよろよろと立ち上がり折れた大剣を手放し、目の前のイーナに視線を向ける。

 剣を両手で突き出しイーナの下には魔法陣が描かれそこから金色の光が溢れセミロングの髪をたなびいていた。


 光が収まりイーナが意識を失う。

 倒れそうになったところをレオンが支え、眼前を見ると魔道装甲を覆っていた光も消えて沈黙していた。


 イーナを丁寧に地面に寝かせるとレオンはイーナの握っていた剣を持って魔導装甲に近づいていく。


「何か言い残すことはあるか?」


魔導装甲が破壊され露出した操縦席に剣を突きつける。


「さっさと……殺せ……」


 ダーレスは血反吐を吐きながらレオンを見据える。ダーレスの胸にはクリスタルが埋め込まれていた。

 レオンは剣を振り上げ、


「お前は……守れるといいな……」


 ダーレスが最後にそう言い残し、レオンは剣を振り下ろした。

絶命したダーレスに、


「オーパーツか。そんなもん使ってあんたは何がしたかったんだ」


 踵を返しながらそう呟いた。ダーレスの絶命と共にクリスタルは砕け青白い光が天に昇っていく。


「おい、そろそろ何か言ったらどうなんだ?」


 天を仰ぎながらレオンは独り言を言う。


「リーゼ。無視すんなよ」


 そう言って剣の宝珠を小突いてくる。


『……話すことなどない』


「無理して変な喋り方すんなよ。キメェ」


『なっ!』


「大体お前は考えすぎなんだよ。照れてねぇで、さっさと出てこい」

 

 私はレオンの後ろに具現化するとレオンに叫んだ。


「私はあなたを騙していたのよ!人間じゃない!……剣よ!兵器なの!!」


「それがどうした」


 レオンは振り返り剣を地面に突き刺し、私を抱きしめた。


「なん……で……」


「俺が惚れたのは剣じゃない。リーゼだ」


「わけわからないわよ」


「そうやって誰かのために泣けるのは、人間以上に人間らしいと俺は思うぞ」


 私は嗚咽を漏らし泣いた。

 レオンは抱きしめる手を泣き止むまで緩めず待ってくれた。


 私が泣き止むとイーナを抱えたクライスが話しかけ辛そうに近くに来ていた。私はレオンから離れ涙の跡を拭った。

 レオンは何も言わずイーナを私に抱えさせ、踵を返しクライスと共に歩いていく。


 私はイーナを抱き上げその温もりを感じる。


「ママ……泣いてるの……?」


 瞼を重そうに開いたイーナは


「大丈夫だよ……ママはイーナが守るから……」


 そう言って私の頭を撫で瞼を閉じた。私は髪に顔を埋め、小さく


「ありがとう」


 そう呟いて、前を向きレオンとクライスの後に続いた。






 表通りに出るとレオンの姿にギョッとして悲鳴を上げる人や逃げる人が多かった。

幸い戦闘中は爆音が響いていたので、誰も近づいてこず目撃者はいなかったが、レオンの姿を目にして訝しむ視線を向ける人もいた。

背にマルクを背負っているのも原因だろう。

 アンナはクライスが背負っている。

 そんな私達が向かっているのはひとまず落ち着ける場所と入れる所という事でこの街の協会になった。

名を『オヴェリア教』その昔色々あって私の名の一部がついた協会である。

 治癒魔法をバンバン使うものではないという教訓を学んだ所だ。




 協会に入ると司祭が近づいて来て、クライスが上手い事伝えて休ませてもらえることになった。辺りは暗くなり始め、時刻は6時くらいか。

 私達は気を失っている3人を協会の長椅子寝かせ、今回の出来事と今後の相談を始めた。


「姉さんと兄さんはやりすぎっす」


「ありゃ仕方ねぇだろ」


「確かにあれは仕方なかったの」


「こっち見て言ってくださいっす」


私とレオンが子供のようにそっぽを向くとクライスが呆れたように話を続ける。


「ところで兄さんはなんであんな状況に?」


「あぁ?あれは店を出てアジトに向かっていたんだが後アジトまで半分ってところであいつらが車で街に向かっているのが見えてな。その後をつけてったらローレンスの店に着いてよ」


 さも当然のように車の速度についていったことを言うレオンに呆れた目を向けるクライス


「近くで気配を消して様子を見ていたらダーレスがマルクを抱いたアンナと話していたんだが途中からどうも様子が可笑しくてな。部下の連中がダーレスを止めに入った途端タダならない気配と青白い光がダーレスを包み込んだんだ。その瞬間部下もろともドカンだぜ。あれは焦った」


 ワッハッハと笑うレオン。周りの人がこちらを見やる。


「それでよく2人を助けられたわね」


「気合いだ、気合い。2人を抱えて飛び去ったらくる爆風を切り裂いて飛んでくる破片やらをはじき飛ばせばいいだけだろ」


 私とクライスは呆然としてレオンは出来て当然だろうと言う反応をした。

 そんなことをできる人間を私は知らない。いや。目の前にいるか。

光学兵器でさ大剣でかき消してしまう男だ。


「で、二人を守りながらあの光を交わしたり弾いてたらリーゼとおめぇが来たんだよ、後イーナだな」


 イーナに視線を移しレオンは優しい眼差しを向けた。

なるほど、いくら魔導装甲相手とはいえSランクの傭兵がここまで満身創痍になるのはおかしいと思っていたがそういうことか…


「ところでなんで2人を助けたんっすか?兄さん的には余り関係ないと思うんっすが」


「ん?あぁ、リーゼの大切なもんは守るって約束したからな」


「や、約束なんてしてないわ!」


 思わず大声を出してしまう。

バカじゃないの、まったく……

 熱いっすねぇ。クライスは呆れたように視線を私とレオンから外した。


「すみませんがもう少し声を……」


 司祭が声を落とすように願い出てクライスが謝罪していた。


「で、今後だがよ。俺はリーゼとイーナについて行くことしたぜ」


「何を勝手に……」


「あ、俺もっすよ」


「なんで!?」


 再び大声を出してしまった。司祭と目が合いペコペコと声を出さずに謝罪する。


「姉さんといると飽きずに済みそうですしね」


「お前に惚れてるっつったろ。理由なんてそれで充分だ」


「……!!」


 熱いっすねぇ……とクライスは再び遠い目をしている。


「あなたたちバカじゃないの」


 私はそっぽを向く。

 するとアンナが丁度起きたようで私と目が合う。


「あの……、ローレンスはどこにいるのでしょうか……?」


そういえば朝から自警団に向かってその後はどうしているのだろう。

帰路につけばそこは瓦礫の山になっているはずだ。


 私とレオン、クライスはお互いに視線を向け


「「「あっ」」」


 と、呟いた。




可視化の領域を展開するとさほど遠くない位置から見覚えのある気配を察知できた。


「ローレンスは表通りの広場で呆然としているわ」


 クライスにそう伝えると了解っすと私がなぜそういったことが分かるのか気にした様子もなく協会から出ていった。


「なんども助けていただき本当にありがとうございます」


 アンナが深々と頭を下げる。


「気にすんな。店は守れなかったんだ」


「いえ。どちらにしろこの街を離れるつもりだったんです。ローレンスが戻ってから今後のことは話し合います」


 アンナは疲れた表情を見せる。

突然の出来事に気絶し起きたら店が木っ端微塵に吹き飛んだと聞かされたのだから当然の反応だろう。

アンナはそれ以上喋ることなく黙ってしまう。

 レオンも全身キズだらけで疲れたようなそぶりも見せてはいないが、身体を休ませることにしたようだ。

椅子に深々と座り腕を組んで目を瞑っている。

 私は手持ち無沙汰になりイーナを寝かしている長机に向かい、イーナの上半身を優しく起こし、頭を膝に乗せて座った。

 イーナの頭を撫でながら契約のことを思い出す。

 私の主となることでこの子の人生は歪んでしまうかもしれない……

 強い力は災いをも引き寄せる。過去の主達も望む望まないに関係なく騒動に巻き込まれ壮絶な死を迎えた主も少なくはない。

 私と契約することで膨大な魔力を扱えるようになり、さらにその力をコントロールすることができるようになるだろうが…

 反対に実力の共わない力も扱うことができるので、そういった場合は確実に寿命を削る。

 幸いイーナはこの時代では珍しく膨大な魔力を元々持っていたので、先程の戦闘では寿命を減らすようなことはなかったようだが、今後はわからない。


「ママ。くすぐったい」


 いつの間にか起きていたようで、イーナは身をよじり、上半身だけで私にぎゅーっと抱きついてくる。

 私も優しく抱き返すと、


「ぷはっ。ママいい匂い」


 息を吐きながら笑顔を向けてきた。

 私が再び頭を撫でると、イーナは気持ちよさそうに目を細めた。


「イーナ。大切な話があるのだけれど」


「どーしたの?」


「私ね、あなたのお母さんになろうと思うの」


「?」


 首を傾げながらイーナは不思議そうな顔をする。


「ママはママだよ?」


「そ、そうなのだけれど」


「ママはイーナのこと嫌い?」


 大好きよ!今は心からそう思える。

この街に来たばかりの私からは考えられない感情だ。

 例え主でなくともそう思えただろう。

 不安そうなイーナを抱きしめ、


「大好きよ」


 と、耳元で囁いた。






 クライスがローレンスを連れて戻って来た。時間にして30分程だろうか。


「おまたせっす」


「アンナッ!」


 ローレンスはアンナに駆け寄り抱きしめ合う。

あまりに長い間抱きしめ合うので、マルクのことはいいのかしらと思ったが、あえて言うまい。

 しかし私の知る限り1日近く寝たままなのだが大丈夫なのだろうか。

 イーナは魔法の素養があるのですぐ元気になるが…

 ようやく抱き合うのをやめた2人は、マルクの様子を見に行く。


「クライス。ありがとう」


 イーナを抱っこしながら、クライスに近づき礼を言う。クライスは頬を染めながら、


「礼なんていいっすよ。げっ」


「何赤くなってんだよ。風邪か?」


 私の背後に立つレオンは、クライスを威圧する。


「バカじゃないの?」


「れお。ばか?」


「お、ぉおう」


 イーナに名前を呼ばれたレオンは珍しくたじろぎ、満更でもなさそうな笑みを浮かべる。


「くらーすは?」


「んー?バカね」


「そりゃねーっすよ」


 と、クライスが戯けて、ばか、ばかと楽しそうに連呼するイーナを3人は笑顔で見つめていた。


「すっかり家族みたいですね」


 ローレンスが私たちを見て微笑みながら声をかけてきた。


「ローレンスさんも無事でよかったわ」


「ええ、裏通りの惨状を見て一度は絶望しましたが、またこうしてアンナやマルクと皆さんと会えて本当に良かった」


 ローレンスは今にも泣き出しそうだ。なんとか涙をこらえたようで深妙な顔になり話を続ける。


「恐らくもうしばらくしたら自警団と傭兵がここにやってくると思います」


「それは……」


 もう少し早くいって欲しかったわねとは言えなかった。絶望した状態からアンナとラルクの生存を聞かされたのだ。

 他のことが後回しになっても仕方ない。


「街で噂になっていました。キズだらけの巨漢が街を破壊し、女を担いで攫い子連れの女も侍らせながら歩いていたと」


「……」


 無茶苦茶だった。

この様子だと私たちもどうなるかわからない。


「俺かぁ……」


 間の抜けた声を出し、レオンが考え込む。


「早くこの街を出た方が良さそうね」


「そうっすね」


「ローレンス俺たちはすぐにでもこの街を離れる。お前たちはどうする?隣町までなら送るぞ」


 私の言葉に2人は同意し、レオンはローレンスに提案する。


「それではお願いします。もう店もないしあなたたちといた方が旅も安全そうです」


 頷き、レオンの提案を受ける。ローレンスはアンナに話を伝えに行き、レオンは、


「じゃ、ちょっと行ってくるわ」


 ちょっとトイレという感覚で協会を出て行こうとするレオンを私は引き止め、


「あぁ、待ち合わせはキメラのアジトな。あいつら全滅したし外壁が近いから丁度いい」


「それもだけど、。何する気?」


「ちょっと、散歩だ」


 私はレオン服を掴み、


「戻ってくるわよね」


 そう呟いた。レオンは振り返り、


「必ず戻る」


 私の肩を掴んでキスしようとして


「!!?」


 両手はイーナで埋まっていたので頭突きで返す。


「うぉっ!」


 頭突きを食らったレオンはたたらを踏む。


「れお。ばか」


 イーナがジト目でレオを見つめていた。

 正しい使い方よ。イーナ。


「ちっ」


 小さく舌打ちし、大きな手をイーナの頭に乗せ撫でる。


「行ってくるぜ」


 そう言ってレオンは協会から出て行った。

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