第6章 何年ぶりかの夫婦の営み
抱かれながら、健二は、あの3年目の鏡子の誕生日のことを話してくれた。今さら思い出したくもない話を。 あの日、健二は難色を示していたのに、浮気女がわざと誕生日に仕事を入れて来たのだ。お得意様のスポンサーの言うことは聞かざるを得ない。京都に宿を取って、接待したのだと。そういう意味で、本当に仕事だったのだと言いたげだった。こういう言い訳は、達者だった。その女はスポンサーの会社の社長の愛人だったらしい。15歳も違う彼女に翻弄され、あるいは脅され関係を続けていたが、とうとう愛人関係にあった社長にバレ、仕事も切られ、多大な賠償金をヤクザのような彼女の取り巻きに取られてしまったらしい。 「やっと鏡子の所に帰って来れた」と元気になって、毎日のように愛されていたら、つい許してしまう。女は、夜の営みが満足してしまうと、尽くす動物のようだ。何度性交を交わしても、産むものなどないのに。この性欲は、まるで【浪花の涙】のように、したたり落ちて、それでも綺麗な思い出の花を咲かせる。浪花とは、決して実のならない花のことを言う。それでもいいと鏡子は思うようになっていた。子供は欲しい。でも、種のないことを健二に言ってしまったら?恋人のような夜の楽しみは無くなってしまうかも知れない。当時、ananという女性のファッション雑誌が【セックスで美しくなる】という特集をして、センセーショナルだった。実際、毎夜のように健二と愛し合っていると、女性ホルモンが活性化するのか?肌もスベスベに若返って同僚が「綺麗になったね。恋でもしているの?」と言うようになった。「きっと若い男でも出来たに違いない」と囁かれていたのも知っている。心は既に離れていても、体が交わっていると物質としての体は元気に美しくなれるのだと不思議な気持ちだった。そんな日々も半年くらい。また次の女が出来たらしく、健二は帰って来なくなった。そして、また夕食を一緒にすることが少なくなった。『子供が出来ないから飽きられた』と思って真実を知らせようかと思ったり。精子バンクを調べ、健二によく似た男性の精子を買って、子供を作ろうかとも思った。 しかし、愛人が出来ると、たまに帰って来て旦那に協力を求めたが思うようにいかなくて、年月があっという間に過ぎて行った。




