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第5章 現実逃避で宗教に散財する日々

争いが嫌いで、笑顔で何事もなかったように日々を過ごしていたら、「きっと前のような生活に戻れる筈だ」という信念の元に。波風を立てず、自分さえ我慢していたら、いずれはどんな不幸も逆境も通り過ぎて、いずれは笑い話になるに違いないと。すがる思いで、近くの神社で縁切りの祈祷を上げてもらったり、掃除を死ぬほど頑張って邪気を飛ばそうとしたり。本人とは向き合おうとせず、運命とか魂の浄化とかのせいにして不思議な世界に没頭していた。宗教が、こんなに有り難いとは思いもよらなかった。悩みを真剣に聞いてくれて、一緒に涙してくれる。一人では泣くことも出来なかったのに、涙が溢れ号泣できた。泣くことは悪いことではないと実感した。涙で心のトゲが溶けていくのがわかった。心が癒され、軽くなって、明日への希望が生まれた。多くの人が慰め愛情をかけて孤独な自分を支えてくれた。物品の価値は高額であればあるほど、パワーがあると信じられる。人は安ければ嬉しいけれど大事にしない。高額だから気にかけ珍重するものなのだろう。だから、騙されてもいいと思い、水晶やパワーストーンを身につけ家に飾った。穢れた健二は家が余計に居心地悪くなったようで、家には全然帰らなくなった。 自分の気持ちを誤魔化しながら一緒にいるのが辛くなっていた時だったので、帰って来なくなって実は気持ちは楽になっていた。 ある日、突然ボロキレのようにうなだれて帰って来た時も、もはや愛情など感じていないのに驚いた。何も聞かなかった。何も言わなかった。以前のように、食事を作り、着替えを用意して先に寝た。彼がお風呂に入っている生活音を、それでも懐かしく安堵して眠りに落ちたのを不思議な気持ちで感じていた。「きっと、祈りが伝わって女と縁が切れたのだ」と夢の中で確信していた。「明日はお礼参りに行かなければ」とも。そういう意味で、健二の浮気ごとに多大な出費を重ね、事なかれ主義の鏡子は表面的には幸せを装いながら、ドロドロとした憎悪を腹に留めたまま生きて来た。



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