第3章 子供ができない浮気夫
ひとりぼっちの誕生日の次の日帰って来ても目を合さない夫。行動が不自然で、慇懃無礼な態度は、まるで鏡子に敵意すら感じているかのようだった。それから、健二は外泊することが多くなった。 そして2人で出かけることも、食事をすることも無くなった。不妊治療に行っている病院で、健二の精子に問題があることが判明したのも、この頃だ。なので、受精しやすい日に必死で抱かれる努力をする必要が無くなってしまったのもよくなかった。浮気をしていることなど、現場を押さえなくてもわかっていた。ファッションホテルのメンバーズカードを財布に入れて、無造作に机の上に置いているのだから。鏡子も行ったことのある有名な建築家が建てたホテルだった。カードを開くとスタンプが何十個も溜っていた。10回ごとの無料宿泊プレゼントもマメに使っている。これだけの回数、他の誰かと愛し合っているのだと思うと怒りすら感じていた。 ポーカーフェイスで耐えていたが、夜中に石鹸の香り漂わせ酔ってベッドにもぐり込んで来ると殺意すら感じたものだ。知らないフリをし、疑う気配も見せず良妻を演じていたら、精神が壊れていくのを感じていた。夜は飲まずにはいられない。最初はビールくらいで酔えたのだが、ワイン1本飲んでもシラフで、やがてはウイスキーやバーボン、テキーラやズブロッカまで。強い酒を空腹に流し込み、喉が熱く燃えるのを感じて倒れるように眠る毎日。「明日の朝、目が醒めなければ良いのに」と祈るように、ベッドに倒れる。




