第2章 愛が消えた夫婦の生活
鏡子は、もうすぐ40歳になる。旦那の健二と結婚して13年。子供はいない。共働きで、ディンクスのような共同生活をしている。結婚当初から、浮気者で、今ではほとんど家に帰って来ない。また愛人ができたのだ。今度の相手は気性が荒い。大胆にも鏡子に宣戦布告。メールに2人のラブラブのシーンを送ってきたり、電話で「彼と別れて下さい。子供が出来たの」と泣き真似をしてかけてきたり、なかなかの役者。「どうぞ、産んでください。彼の子供だったら、離婚でも何でもしてあげるから。もし本当に妊娠したなら他に男がいるわね。とんでもない性悪女に引っかかったものだわ。お気の毒に」と言ってやった。相手が熱くなればなるほど面白くなる。今さら離婚してもかまわないのだけど、めんどくさい。慰謝料でもふんだくれそうな愛人が出来たら、たっぷりお金を請求して別れてやろうと思っている。なのに、最近の健二の相手はレベルが低すぎる。50歳近くになって、魅力に欠けてきたのかも知れない。
出逢った頃、健二は会社で一番の憧れの的だった。仕事もできたし、容姿もいい。性格も柔和で、誰にでも優しい。博識で、音楽が好きで学生時代はバンドをやっていて、結構人気もあったようだ。そんな健二から結婚を前提にお付き合いをしたいと申し込まれた時のドラマチックな場面がいつも思い出されて胸が熱くなる。夢のようだった。会社や関係者の女性たちの羨望を受け、嫉妬で嫌がらせもされたが、何も怖くなかった。まだまだキャリアウーマンを夢見ていた頃なので、「子供が出来るまでは働きたい」と言ったのは鏡子の方だった。仕事は好きだった。結婚当初は家事も健二が助けてくれて、お互い収入もあったので、贅沢もできた。海外旅行に行ったり、コンサートや映画に行った後は、フレンチのフルコースとかミシュランガイドに出ている店を次々と制覇。夢のような日々だった。
しかし、結婚して3回目の誕生日、いつものバラの花束をプレゼントしてくれなかった。真っ赤なバラの花は、熱烈に愛しているというメッセージだと言っていた。そして今までは人気のお店を数か月前からリザーブしてくれていたのに。
その日は大阪に出張だと言って結婚して初めてひとりぼっちで食事をした。急だったので、友人を誘っても予定が合わず、帰りにコンビニ弁当を買って、ビールを飲んだら寂しくて涙が出て来た。何度も携帯に電話をしたが健二からは何のメッセージもなかった。泊まっているはずのホテルに電話したが、宿泊リストにも名前はなかった。わざわざ鏡子の誕生日に、連絡すらつかないのは?何か夫婦関係に暗雲がかかって来たのを予感させるセンセーショナルな出来事だった。




