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第13章 女の友情と美味しいものに救われて

涙が、どうにか止まって「ごめんね」と、かすれた声で精一杯言ったら純子が「だいたい頑張り過ぎなんだよ。鏡子は」と言って肩を叩いて、会社の外に出た。寒い日だった。空は今にも雪でも降って来そうな感じ。「大丈夫?やっぱり、暖かい鍋でもつついて温まろうか?」と言ってタクシーを止め、馴染みの店に電話をしている。「しゃぶしゃぶでもいい?」と聞くので少しためらったが承諾した。食欲がないのだ。「私は一人前は食べられないけどいい?」と言うと「関西風のおでんと焼き鳥のお店はどう?」と聞いて来る。 「それならいいかも。懐かしい。関西風のおでんを食べさせてくれる、あのお店だね」鏡子と純子が独身時代よく行っていたお店だ。「結婚してから、付き合い悪くなったからね」と純子が意地悪そうに言った。「仕事が終わっても家事があるからね。独身の純子が羨ましいよ。あーぁ、結婚なんてするんじゃなかった」と言えたら、笑顔が戻って来た。絶対に言えなかった本音が、すらすらと溢れ出てくる。お店で薄い色をしたダシに浮かんでいる、はんぺんや卵の白さが眩しかった。健二の好きなおでんは関東炊きと言われるもので、見た目は茶色。スジと言えば肉ではなく魚の何だかわからない変な触感のかたまりだったし、うどんを固めたみたいな【ちくわぶ】なるものが健二の好物だったから。関西出身の鏡子は健二のために関東煮を一生懸命作っていたのだった。それも今は一人なので作らなかったが、この関西風おでんは青春の香りそのものだった。夜遅くまで仕事をして、たまに食べたくなるのが、ここのおでん。鏡子はまず最初にだいこんを頼む。口に入れるとほっこり温まって心に沁みる。これで、中ジョッキの生ビールで乾杯。「あーぁ、美味しい。これこれ、この味。変わってないねぇ」と2人は一気に元気を取り戻し昔のように饒舌になる。それから、豆腐や練り物を頂き、その頃には熱燗に。何といっても欠かせないのはスジ肉とたまご。 はんぺんとこんにゃくは大好物なので、何度か頼む。絶対に食べるのは、新鮮ないわしが入った時だけある、手作りのつみれもここにしかない味。思わずお酒と会話が弾む。しこたま飲んで、最後は釜めしと相場は決まっている。飲んでいる間も、仕事の話ばかりしていた。

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