39.第36章
名刺には 「生活安全課 巡査部長 岡 誠治」 とある。
もらった名刺を見て、私はあの刑事を思い出した。
あの目つき、私の本心を見透かす、舐めるような。。。
思い出しただけで、身震いする。女を物として扱う男の目だった。
夫にこの事を話したら、
「別にいいじゃん。男の刑事なんて、そんなもんだよ」
「これで捜査が本格的に始まったし、ここ最近無にも無いし」
「容疑者が捕まってないのは不安になるけど、
殺人までしてたかもしれないのは、驚いたけど、現に今は何事も無い」
「心配しすぎは、良くないよ。これからの生活の事を考えよう」
「早く一緒に住む、家を決めないとね」
スマホ片手に、私の方を振り向きもしないで、お菓子を頬張りながら、
話す夫の言葉に重みは無かった。あの時に頼もしさは何処に行ったのだろう。
躊躇う私の後押しをしてるような、夫の発言、行動だった。
復縁して、良いのか?私を悩ませる。
また、離婚前の悪いところが目立ち始めていた。
あと、彼の顔を見た。さっき指名手配書を見せられた。
高校生ぐらいの時の写真とそれをAIで歳をとらせて、実年齢に合わせた写真。
幼い顔立ちだった。30歳らしいけど。
ケンイチ。。もうこの名前を呼ぶことは無いだろう。。。
私の前にも、二度と現れない気がする。
「お元気ですか?」メッセージの返信は、無い。
「何かあったら、もう一人の、お若い刑事さんに相談しよ」と
私は独り言を声に出さずにいった。
もうひとつの名刺 「生活安全課 巡査 水野 連」爽やかな声だった。
ストーカー事案。ここ近年、相談が増えている。
警察は大前提として、民事不介入だ。
痴話喧嘩にいちいち警察が介入しない。
俺も男女の、はったほれたなど、興味もない。
だが、今回は違ったようだ。
生活安全課の俺をわざわざ呼び出して、
課長からの特命とされた。
ハッキリ言って俺は署内では腫れ物扱いだ。
昔に上げた手柄だけで、今もいる。
そんな俺に特命とされた。
だいたいは大物政治家の息子とか、
芸能人絡みだと、一次的にグループ組まれ
専門的にその事件だけを当たる。
若いやつを1人付けられた。
特命にするほどかと、正直に思った。
ただのストーカー事案に。詳しい説明は無い。
近々、捜一で、別にデカい、やまが立ち上がるらしい?
俺は、カヤの外だ。元同僚、捜一の奴らに聞いても
「岡さんは、のんびりしててくださいよ」とはぐらかす。
捜査本部が立ち上がれば、どうせ解るから追及するつもりは無い。
殺人絡みとはいえ、小さな事件だ。
先ほど、水野と一緒に、現在、唯一の容疑者と接点のある女と
会ってきた。接点といっても、一方的に後をつけ回されただけで、
本人とは会った事も無いようだ。顔も知らない。
指名手配所で初めて知ったふうな、顔をしてた。
本当にそうだったんだろう。
ネット上のお客さんで間違いないだろう。
いわゆる、アダルトサイトの客。
偶然だろうが容疑者の自宅から、数キロしか離れてないところに
住んでたとはいえ、自宅まで突き止めるは、大したもんだ。
水野より、優秀なのは確かだな。
あの女のことを思い返した。
いっけん清楚で控えめな感じだが、男好きする、いい女だった。
ああいう女が、男を狂わすのかもしれない。
容疑者の部屋から、押収した、女の写真を見ながら、
俺の質問に対して、血の気の引いたような表情。下がった眉。
女には、話していないが、押収したパソコンに、
性交中と思える映像、音声データが残されていた。相手は誰だ?
シングルマザーと記載があったが。
映像は暗くて使いもんならないが、声はハッキリ記録さていた。
なかなか、激しい嬌声だったな。
もう1点、女に伝えて無いことがある。
容疑者の自宅から出た、女の遺体に、DNAが付着していた事。
これが意味すのは、死んだ後にシタという事実。
このことを伝えたら、どんな表情になるだろうか?
苦悶の表情になるだろうか?
女の乱れた姿を想像して、下腹部が熱くなるを感じた。
まだ、やってるのか?あのサイトで。そこまでは調べてなかった。
こんど行ってみるか?
顔の見えない、見せないのは、刑事にとって好都合だ。
退屈な毎日が面白くなりそうだな。




