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従順な娘〜いつもと違うパターン

坂口さんと付き合い始めてから、私は何が欲しいのかよく考えるようになった。


うまく言えないけれど、これまでの関係とは何かが違う、という感覚だった。




以前、好きになった人のことを思い出してみた。


男らしく引っ張ってくれる人がいい、と思っていた時期があった。


付き合い始めると、行き先も、食べるものも、相手が決めた。


私は知らない世界を知れるのが嬉しかったと思うし、それが自然だと思っていた。


きちんと勤めているかどうかも気にしていた。


安定した会社に勤めているかどうか。肩書きがあるかどうか。


それが「ちゃんとした人」の条件だと思っていたし、友達にも紹介しやすかったし紹介したかった。


この人と一緒に歩いたらどう見られるか、それは相手よりも大切なこともあった。


今考えてみると、つまらない。




でも当時はそれが当たり前で、それ以外の基準を持っていなかった。


誰かにそう教わったわけじゃない。


ただ、それが世の中を生きていく当たり前だった。




坂口さんは、フリーランスで以前の私が自慢できるものがある訳じゃない。


自分のことじゃないのに自慢するのがそもそもおかしいのだけれど。


母に自営業って大丈夫なのって聞かれた時、反論したくなった。


でも、彼は私が守る必要なんかまったく必要ない、自立しているから。




彼は引っ張ってこない。かといって、何も決めないわけでもない。


自分の考えやプランはある。でも決して押し付けてはこない。


「景色のいいところに行きませんか。場所は考えておくので」と言って、行き先を決めてはくれる。


でも私の意見も聞いてくれる。迷えば決めてくれるし、答えも待ってくれる。




以前は、こうしたいからついてこい、頼もしいと思っていた時期があった。


強さの形として、そう見えていた。


でも今は違う気がする。




坂口さんは自分を持っている。鉄道が好きで、自分の仕事のやり方があって、こうしたいという気持ちがある。


でも、それを押しつけない。僕はこうしたいけど、友梨さんはどうですか、と聞いてくる。


意見が違えば話し合って決める。


昔だったら、それを弱さだと思ったかもしれない。




今はむしろ、自分の気持ちを尊重しているから、相手のことも尊重できるのだと思った。


まだ答えとまでは言えないけど。




世間的に見ると、坂口さんは分かりにくい人かもしれない。


肩書きで言えば地味だ。


引っ張る感じもない。


一緒に歩いていて「すごい人だ」と思われる種類の人ではない。




でも坂口さんとの時間は、心地よかった。


何かを決める時に、消耗しない。


意見を言っても、否定されない。


違うと言っても、怒られない。


これが、私が求めていたものだったのかもしれない。


ずっと前から、求めていたのかもしれない。


ただ、知らなかっただけで。




名前をつけるとしたら、私のパートナーシップという言葉が近い気がした。


友梨さんはどうですか、と聞いてくれる人。私も、こうしたいです、と言える人。


世間では違うかもしれない。でも私には、これが求めていた形だった。

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