従順な娘〜思うようにいかない
退院してから、宮本さんが時々連絡をくれた。
「体の調子はどう?」
「転職活動、進んでる?」短いメッセージだった。
このやり取り自体は悪くないと思っていた。
ただ、返信するたびに少し疲れた。
転職活動に行き詰まっている、と話した時のことだった。
面接でうまく自己アピールができない、と言うと、「どういう言い方してるの?」と聞いてきた。
話すと、「それだと弱い気がする。もっとこういう風に言ったら?」と返ってきた。
「参考にします」と打って、スマホを置いた。
別の日、一社気になる会社がある、と話すと、
「友梨さんのスキルなら、もっと大きいところも狙えると思うけど」と言った。
「規模より環境が大事かなと思って」と返すと、「そうか、まあ友梨さんが決めたことだしね。応援するよ」と言った。
面接の感触が良かった、ここに決めようと思っていると話すと、
「一社だけで決めちゃうの? もう少し比べた方がよくない? 友梨さんのことを思うと」と言った。
友梨さんのことを思うと。
何かを決めるたびに、別の選択肢が来る。
ただ、連絡が来るたびに、少しだけ体が重くなった。
食事に誘われたが、断った。
家に帰ると、母から着信があった。
折り返すと、すぐ出た。
「友梨、元気? 体の方はもう大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」
「そっか、よかった。あのね、また話があって」
来た、と思った。
「前に話をしたお見合いの件なんだけど、私も断りづらくって」
「お母さん……」
「一回だけ会ってよ。あとは友梨の好きにしていいから」
私は少し考えた。というより、あまり考えなかった。
「……分かった。一回だけ会ってみる」
「本当?」
「うん」
電話を切って、しばらく天井を見ていた。
宮本さんへの疲れが残っていた。
母への疲れも残っていた。
そのまま流れに乗った、とも言える。
断るのが面倒だった気もする。
宮本さんの誘いは、断れた。
母のお見合いは、断れなかった。




