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Phantom Zero  作者: 高槻 和真


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死者たちの研究所

全員、二十年前に死んだはずだった。


湊の言葉が耳に残る。


だが現実として、その"死者"たちは確かに目の前にいた。


白衣を纏った男女。


年齢も様々だ。


研究員だった者たち。


その顔には苦痛も怒りもない。


ただ虚ろだった。


何かに操られるように、一歩ずつこちらへ歩いてくる。


「リア。」


剣也が短く呼ぶ。


リアは即座に前へ出た。


「戦闘開始。」


白い光が腕から展開される。


霊装光刃。


同時に剣也も霊装を起動した。


次の瞬間。


最前列の研究員が異常な速度で飛び出した。


「速っ――!」


人間の動きではない。


剣也は咄嗟に身を捻る。


爪が頬を掠めた。


そのままリアが斬撃を放つ。


光が走る。


研究員の身体が両断された。


しかし。


倒れない。


切断された上半身が地面を這いながら迫ってくる。


「気持ち悪ぃな!」


暁が拳銃型霊装を抜く。


連続射撃。


青白い弾丸が群れへ突き刺さる。


数体が吹き飛ぶ。


だが後続が埋める。


まるで波だ。


「キリがねぇ!」


その時。


ルナが動いた。


施設入口の前。


無表情のまま右手を上げる。


背後のリングが発光した。


淡い青。


次の瞬間。


空気が震える。


研究員たちが一斉に停止した。


「なっ……?」


剣也が目を見開く。


全員がルナを向いた。


そして。


道を開いた。


まるで王を迎える臣下のように。


中央に一本の通路が生まれる。


地下へ続く暗闇まで。


誰も動かない。


誰も襲わない。


異様な静寂だった。


リアが警戒レベルを上げる。


「ルナが干渉しています。」


「いや……違う。」


湊が低く呟く。


その顔色はさらに悪かった。


「連中が従ってるんだ。」


「何に?」


剣也が尋ねる。


湊は地下を見た。


「ルナじゃない。」


「その奥にいる奴に。」


風が吹く。


開いた地下通路から冷気が流れ出す。


そして。


誰かの声が聞こえた。


『――ようやく。』


かすれた声。


男とも女とも分からない。


『――帰ってきた。』


ルナの身体がわずかに震える。


『――待っていた。』


その瞬間。


ルナの閉じていた瞳に光が戻った。


「……剣也。」


小さな声だった。


意識が戻った。


剣也は安堵しかける。


だが次の言葉で凍りつく。


ルナは怯えた顔で地下を見つめていた。


「逃げて。」


全員が固まる。


ルナの唇が震える。


「下にいる。」


「まだ生きてる。」


地下の暗闇から、


重い足音が響いた。


ドン。


ドン。


ドン。


研究員たちが一斉に跪く。


まるで神を迎えるように。


そして暗闇の奥から、


巨大な影がゆっくりと姿を現し始めた。

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