継承者
ABEL停止から数時間後。
白羽市地下・臨時隔離区画。
重い防爆扉が閉じる。
その奥。
巨大な白い残骸が静かに眠っていた。
TYPE:00。
ABEL。
既に光はない。
だが、
機体周囲にはまだ微かな位相ノイズが残っている。
エレナが端末を確認する。
「完全停止を確認。」
「深層反応も低下中。」
暁が煙草を咥える。
「やっと静かになったな。」
その横。
ルナは黙ってABELを見ていた。
小さな手には、
黒いリング。
ABELから継承された機構。
まだ起動していない。
リアが静かに近づく。
「適合処理は完了しています。」
「ですが、使用は推奨できません。」
ルナが小さく顔を上げる。
「……こわいから?」
「はい。」
リアは即答した。
「未知数です。」
「深層干渉能力を含んでいます。」
「制御不能となる可能性があります。」
ルナは少し黙る。
リングを見る。
黒い輪。
だが中心には、
淡い水色の光。
まるで、
ABELの最後の残滓みたいだった。
その時。
隔離区画の警報が鳴る。
エレナが振り返る。
「旧工業地帯の戦闘終了。」
「侵食体群、完全沈黙。」
モニターへ映像が映る。
瓦礫。
黒霧。
破壊された工場群。
そして。
血塗れの黒瀬湊。
医療班に囲まれている。
だが。
「だから平気だっつってんだろ……。」
ふらつきながら歩こうとしていた。
剣也が呆れる。
「なんなんだアイツ……。」
暁が苦笑する。
「昔からああだ。」
「死にかけてる方が元気になる。」
その時。
湊が突然モニター越しにこちらを見る。
まただ。
回線越し。
なのに。
“見えている”。
湊の視線が、
ルナの持つリングへ向く。
一瞬。
湊の顔から笑みが消えた。
「……おい。」
「それ、誰から貰った。」
地下区画が静まる。
剣也が眉をひそめる。
「知ってんのか?」
湊は答えない。
ただ。
珍しく真面目な顔で、
低く呟いた。
「……マジかよ。」
「零番目、止まったのか。」




