観測対象
地下区画の空気が重くなる。
巨大な白い目。
その視線が、
完全に剣也へ固定されていた。
『――観測対象更新』
『――神島剣也』
『――接続適性:再計測』
剣也が顔をしかめる。
「だから何なんだよ……。」
だが。
言った直後。
頭痛。
「ッ……!」
視界が揺れる。
知らない景色。
赤い海。
白い空。
無数の“目”。
そして。
巨大な門。
『――座標を確認』
剣也が膝をつく。
「ぐ……ッ。」
リアが即座に支える。
「剣也!」
エレナが叫ぶ。
「認識干渉よ!」
「深層側から直接アクセスされてる!」
真白が険しい顔で剣也を見る。
「……やっぱり。」
暁が振り返る。
「知ってたのか。」
真白は少し黙ったあと、
静かに言った。
「剣也は、“普通のシーカー”じゃない。」
静寂。
リアの瞳が揺れる。
「どういう意味ですか。」
真白は剣也を見る。
「霊災で両親を失った時。」
「本来、あの規模の境界侵食なら、生存者は出ないはずだった。」
暁の顔が変わる。
「……待て。」
真白は続ける。
「でも剣也だけは生き残った。」
「違う。」
「“戻ってきた”の。」
地下空間が静まる。
剣也が顔を上げる。
「……は?」
頭痛。
記憶のノイズ。
瓦礫。
赤い霧。
幼い自分。
そして。
“何か”がこちらを見ていた。
『――接続完了』
剣也が息を呑む。
真白が低く言う。
「あなたは一度、“向こう側”へ落ちてる。」
「なのに帰還した。」
エレナが青ざめる。
「そんなの……前例が……」
「ない。」
真白が答える。
「だからエイドスは剣也を探してた。」
「“境界を越えて帰還した人間”として。」
剣也の拳が震える。
「……ふざけんな。」
「じゃあ俺は何なんだよ。」
巨大な白い目が脈動する。
『――特異個体』
『――門接続因子』
『――観測優先対象』
その瞬間。
ABELがゆっくり剣也を見る。
赤い光。
そして。
初めて、
TYPE:00が剣也へ向けて言った。
【 お前も、“こちら側”に触れている 】




