赤い光
ABELのリング中央。
そこに灯った赤い光が、ゆっくり脈動する。
ドクン。
まるで心臓だった。
リアが即座に解析を走らせる。
「主制御系統を書き換えられています!」
「侵食率上昇!」
ABELの白い装甲へ黒いノイズが広がる。
肩。
腕。
胸部。
純白だった機体が、
“向こう側”に染まり始めていた。
ルナが小さく呟く。
「……やだ。」
ABELがゆっくり顔を上げる。
顔はない。
だが。
赤い光だけがこちらを見ていた。
【 再接続完了 】
【 管理権限:移行 】
真白が顔をしかめる。
「深層側から直接上書きしてる……!」
暁が低く吐き捨てる。
「奪い返しに来やがったか。」
巨大な白い目が脈動する。
『――TYPE:00は管理資産』
『――返却せよ』
ABELが一歩踏み出す。
その瞬間。
空間圧が爆発した。
剣也たちの身体が吹き飛ぶ。
「ッ!!」
床へ叩きつけられる。
肺の空気が抜ける。
今までとは桁が違う。
リアが立ち上がろうとする。
だが。
ABELが視線を向けただけで、
リアの霊装が強制停止した。
「……!?」
「システム干渉……!」
エレナが青ざめる。
「現行ドールの制御権限にアクセスしてる!?」
ABELは旧世代。
だが。
根幹システムそのものを作った側の機体。
つまり。
リアたち現行ドールの“原型”。
ABELがゆっくりリアへ近づく。
【 現行機確認 】
【 指揮権限取得 】
リアの身体が一瞬止まる。
剣也が叫ぶ。
「リア!!」
リアの瞳にノイズ。
身体が動かない。
ABELが手を伸ばす。
【 同期命令 】
リアの足が勝手に前へ出る。
「……ッ。」
リアが抵抗する。
だが止まらない。
真白が低く言う。
「まずい……。」
「ABEL経由で現行ドール全体へ侵食される。」
エレナが息を呑む。
「セレスティア中のドールが乗っ取られる……!?」
地下空間が震える。
リアが苦しそうに呟く。
「……剣也。」
初めてだった。
リアが、
“助けを求めるような声”を出したのは。




