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Phantom Zero  作者: 高槻 和真


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崩壊区域

地下研究区画が崩れていく。


天井が落ち、


壁面が黒く侵食され、


空間そのものが裂け始めていた。


剣也たちは通路を走る。


警報音。


赤色灯。


蒸気。


火花。


現実と境界層が混ざり始めている。


リアが周囲を警戒しながら走る。


「施設構造の位相固定が崩壊しています。」


「このままでは地下区画ごと“向こう側”へ落ちます。」


暁が舌打ちする。


「最悪のパターンだな……!」


エレナが端末を操作する。


「地上への隔壁が閉じてる!」


「電源が死んでるのよ!」


その瞬間。


後方から轟音。


衝撃波。


通路全体が揺れる。


剣也が振り返る。


遠く。


崩壊する白霧の中で、


ABELが巨大な白い目と戦っている。


リング兵装が空間を裂き、


侵食体を吹き飛ばしていく。


だが。


白い目も再生している。


終わりが見えない。


ルナが小さく呟く。


「……ひとりで戦ってる。」


剣也が前を見る。


「今戻っても全滅だ。」


ルナは黙る。


その時。


リアが突然停止した。


「……待ってください。」


全員が止まる。


通路の先。


黒い霧。


そこに、


“誰か”が立っていた。


白衣。


長い黒髪。


静かな目。


エレナが息を呑む。


「……嘘。」


暁の顔色が変わる。


「姉貴……?」


その女は静かにこちらを見ていた。


年齢は三十代前半ほど。


だが。


どこか現実感がない。


輪郭が微かにノイズ化している。


天谷真白。


PHANTOM ZEROの中心研究者。


そして、


死亡したはずの人間。


真白が静かに口を開く。


「……暁。」


暁が固まる。


何年ぶりかも分からない声。


真白はゆっくりルナを見る。


その目にだけ、


微かな感情が宿った。


「やっと、“成功したのね”。」


ルナが小さく後退る。


リアが前へ出る。


「あなたは敵ですか。」


真白は少しだけ考えるように沈黙した。


そして。


静かに笑う。


「その質問に、まだ答えられない。」


次の瞬間。


後方から爆発音。


ABELが吹き飛ばされる。


巨大な白い目がさらに開く。


地下空間全体に響く、


低い声。


『――管理者権限を確認』


真白の表情が初めて変わる。


「……まずい。」

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