殲滅機構
ABELの背部リングが一斉に展開される。
黒い輪が空中へ浮かび、
地下区画を囲むように広がった。
【 対位相殲滅モード起動 】
低い駆動音。
空気が重くなる。
侵食体の群れが咆哮を上げる。
巨大化した個体。
四足。
人型。
顔だけが異常に増殖したもの。
一斉に突撃。
その瞬間。
リングが発光した。
空間が“切れる”。
轟音。
侵食体の群れがまとめて両断された。
壁ごと。
空間ごと。
剣也が思わず顔を引きつらせる。
「威力バグってんだろコレ……!」
エレナも呆れている。
「旧世代なのに出力が現行機の比じゃない……!」
ABELは止まらない。
リングが回転。
次々に空間切断を放つ。
侵食体が消し飛ぶ。
再生する暇すらない。
巨大な白い目が揺れる。
『――TYPE:00』
『――制御不能確認』
ABELがゆっくり巨大な目を見上げる。
【 敵性存在認定 】
【 排除を開始 】
次の瞬間。
ABELが跳躍した。
地下区画を突き破る勢いで加速。
巨大な白い目へ突撃。
轟音。
白い目の表面へ拳が叩き込まれる。
空間が歪む。
ノイズ。
悲鳴のような振動。
『――――!!』
今まで無感情だった“向こう側”が、
初めて苦痛のような反応を見せた。
剣也が目を見開く。
「効いてる……!?」
リアが解析する。
「ABELの兵装は通常霊装と異なる。」
「位相そのものへ直接干渉しています。」
つまり。
“向こう側”に対して特攻。
巨大な白い目が激しく点滅。
『――危険』
『――危険』
地下空間全体が崩壊を始める。
暁が叫ぶ。
「施設ごと落ちるぞ!!」
天井崩落。
警報。
火花。
エレナが出口を指す。
「急いで!」
剣也がルナの手を掴む。
「行くぞ!」
ルナが振り返る。
ABELはまだ戦っていた。
巨大な白い目を押さえ込み、
侵食体を破壊し続けている。
その姿はまるで、
誰かを守るためだけに作られた兵器みたいだった。
ルナが小さく呟く。
「……ABEL。」
その瞬間。
ABELが一瞬だけ振り返る。
顔はない。
表情もない。
それでも。
なぜか。
“安心しろ”と言ったように見えた。




