TYPE:00
重い駆動音が地下区画に響く。
巨大な人影が、ゆっくり暗闇から姿を現した。
白い装甲。
人型。
だが現在のドールとは明らかに違う。
古い。
無骨。
兵器的。
全高は三メートル近い。
全身のフレームが剥き出しになっており、各部から黒い霊子ケーブルが伸びている。
頭部には顔がない。
代わりに、
黒いリング状の機構が浮かんでいた。
【 PHANTOM FRAME - TYPE:00 】
【 CODE NAME:ABEL 】
リアが静かに呟く。
「……旧世代試作型。」
エレナが険しい顔で補足する。
「現行ドール以前に作られた、“位相戦特化型”。」
暁が舌打ちする。
「まさか実在してたとはな……。」
TYPE:00 ――ABEL。
それは“兵器”だった。
今のリアたちのような、人間に近い設計ではない。
感情も、
人格も、
必要とされていない。
純粋な、
対“向こう側”用殲滅機。
ABELがゆっくり頭部リングを回転させる。
空気が震えた。
「ッ……!」
剣也が顔をしかめる。
位相圧。
存在しているだけで空間が軋む。
リアが即座に前へ出る。
ルナを庇う。
「敵性認定。」
ABELのリングが停止する。
次の瞬間。
地下区画の床が爆ぜた。
「速ッ――!」
消えた。
そう見えた。
一瞬でリアの目前。
轟音。
リアが吹き飛ぶ。
壁を貫通。
コンクリートが砕け散る。
「リア!!」
剣也が霊装を展開し突撃。
横薙ぎ。
ABELは片手で受け止めた。
「なッ……!?」
金属音。
霊装刃が止められている。
ABELが剣也を見る。
顔はない。
だが。
“観察”されている感覚だけがある。
【 適合因子確認 】
無機質な音声。
【 神島剣也 】
【 接続適性:高 】
剣也の表情が変わる。
「またそれかよ……!」
ABELの腕が変形。
巨大な刃が形成される。
振り下ろし。
剣也が回避。
床が消し飛ぶ。
エレナが即座に射撃。
霊子弾がABELへ直撃。
だが。
装甲表面で弾かれる。
「装甲硬度おかしいでしょ……!」
暁が結界杭を撃ち込む。
青白い鎖がABELを拘束。
「今だ!」
リアが瓦礫の中から再加速。
光刃最大出力。
ABELへ突撃。
だが。
ABELは避けない。
リングが回転。
瞬間。
リアの光刃が“消えた”。
「……ッ!?」
リアが初めて動揺する。
「霊装干渉を無効化……!?」
エレナが青ざめる。
「対霊装メタ機構……!」
ABELがリアの首を掴む。
そのまま床へ叩きつける。
轟音。
ルナが小さく声を漏らす。
「……リア。」
その瞬間。
ABELの動きが止まった。
リングがゆっくりルナへ向く。
【 零番目確認 】
【 保護対象 】
空気が凍る。
剣也が目を見開く。
「……は?」
ABELはリアを離す。
そして。
ゆっくりルナへ歩き始めた。
【 回収を開始します 】




