拒絶
ルナの言葉が響いた瞬間。
空間全体が震えた。
黒いノイズが逆流する。
まるで“向こう側”そのものが拒絶反応を起こしたように。
巨大な白い目が歪む。
『――自我形成を確認』
『――エラー』
『――エラー』
侵食体たちが一斉に停止する。
白い目が激しく点滅。
輪郭が崩れ始める。
エレナが息を呑む。
「……干渉がズレた?」
リアが高速解析を続ける。
「零位相接続に異常。」
「ルナの自己認識が、向こう側の制御を書き換えています。」
暁が低く呟く。
「“器”じゃなくなったってことか。」
巨大な目が再びルナを見る。
今度は違う。
そこには初めて、
明確な“敵意”があった。
『――零番目は失敗した』
地下区画が軋む。
天井に亀裂。
黒い液体のようなノイズが流れ出す。
『――排除対象へ移行』
剣也が顔をしかめる。
「おいおい、露骨だな……!」
次の瞬間。
巨大な目の中心が開く。
赤い光。
高密度。
圧倒的な位相エネルギー。
リアが即座に反応。
「高出力反応!」
「回避を――」
間に合わない。
赤い閃光が放たれる。
地下空間を焼き裂きながら一直線に落ちる。
剣也が咄嗟に前へ出る。
霊装展開。
「ぐッ……!!」
衝撃。
腕が軋む。
床が砕ける。
押し切られる。
出力が違いすぎる。
リアが横から支える。
「剣也!」
だが、
光は止まらない。
その時。
ルナが前へ出た。
「……やめて。」
小さな声。
だが。
その瞬間。
赤い閃光が“止まった”。
空間そのものが凍結したみたいに。
全員が目を見開く。
巨大な目が揺れる。
『――命令権限』
『――確認不能』
ルナの周囲に、水色の光が浮かび上がる。
これまでの黒いノイズとは違う。
静かな光。
透き通った色。
ルナが巨大な目を見上げる。
そのジト目は、
もう怯えていなかった。
「わたしは。」
「お前たちのものじゃない。」
空間が震える。
巨大な目が初めて後退した。
『――ありえない』
『――零番目が、接続を拒絶』
エレナが呆然と呟く。
「自力で……支配を切った?」
暁も信じられない顔をしている。
「そんなこと、理論上……」
リアだけが静かに言った。
「いいえ。」
「ルナが、“選んだ”んです。」
巨大な目が激しくノイズ化する。
『――危険』
『――危険』
『――第零位相計画を修正』
次の瞬間。
地下区画の奥。
封鎖されていた大型隔壁が、
ゆっくり開き始めた。
重い駆動音。
そして暗闇の中から、
“何か”が立ち上がる。
人型。
巨大。
白い装甲。
頭部に、黒いリング。
リアの瞳が揺れる。
「……対霊戦闘人形。」
エレナの顔色が変わる。
「嘘でしょ……。」
モニターに古い識別コードが表示される。
【 PHANTOM FRAME - TYPE: 00 】
【 CODE NAME:ABEL 】




