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Phantom Zero  作者: 高槻 和真


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【外伝前章】第零位相計画

地下研究区画。


誰も動かなかった。


モニターは黒いまま。


だが、


さっきまでそこに“いた”。


全員がそう理解していた。


暁がゆっくり椅子へ腰を下ろす。


額を押さえる。


珍しく余裕が消えていた。


「……ありえねぇ。」


剣也が見る。


「知ってるんだな。」


沈黙。


数秒。


長い。


やがて暁が口を開いた。


「天谷真白。」


「俺の姉だ。」


ルナが小さく顔を上げる。


リアも静かに聞いている。


「昔、セレスティアの前身機関にいた研究者だった。」


「霊装理論の中心人物。」


エレナが補足する。


「今の対霊戦闘人形技術の基礎設計にも関わってる。」


剣也が眉をひそめる。


「つまり、ドール作った側の人間か。」


「……ああ。」


暁が苦い顔で頷く。


「だが途中で思想が変わった。」


モニターに古い資料が映し出される。


大量の専門用語。


位相接続。


精神同期。


人格保存。


霊子定着。


その中心に書かれている。


【 PHANTOM ZERO 】


剣也が呟く。


「……ファントム、ゼロ。」


エレナが低く言う。


「第零位相計画。」


「エイドスが極秘で進めていた研究。」


リアが高速解析を開始する。


「“位相融合による完全接続”……?」


エレナが頷く。


「向こう側と人間を、完全に繋げる計画よ。」


空気が変わる。


剣也が険しい顔になる。


「正気か?」


「普通なら不可能。」


エレナが言う。


「でも真白は、“成功しかけた”。」


沈黙。


暁がゆっくり続ける。


「姉貴は言ってた。」


『霊災は侵略じゃない』


『向こう側は、“接続”を求めてるだけだ』ってな。」


リアが反応する。


「侵食体の発言と一致。」


エレナが険しい顔をする。


「だから危険だった。」


「エイドスは途中から研究目的を変えた。」


モニターに別の資料。


赤いマーク。


軍事機密。


【 人類位相統合計画 】


剣也が嫌そうな顔をする。


「またロクでもねぇ名前だな……。」


「向こう側を利用して、人間を“上位存在”へ進化させる。」


エレナが吐き捨てるように言う。


「感情も肉体も不要。」


「個としての境界を消し、“統合”する。」


ルナが小さく呟く。


「……みんな、一つになる。」


その声には、


微かな恐怖が混ざっていた。


暁が拳を握る。


「姉貴は反対した。」


「だから消された。」


剣也が顔を上げる。


「……殺されたのか。」


暁はすぐ答えない。


「俺もそう思ってた。」


赤色灯が回る。


警報音。


機械音。


その中で、


暁だけが静かに言った。


「でも今の映像は違う。」


「アレは“死者”じゃねぇ。」


リアが分析結果を表示する。


「映像反応内に生体位相パターンを確認。」


エレナの顔が強張る。


「……生きてる?」


その瞬間。


ルナが突然立ち上がった。


全員が見る。


ルナの瞳。


ノイズ。


微かに赤く光る。


「……来る。」


空気が震える。


次の瞬間。


施設全体の壁に、


黒い“染み”が浮かび上がった。


一つじゃない。


無数。


天井。


床。


壁。


まるで現実そのものが侵食されていく。


リアが即座に戦闘態勢へ。


「侵食体反応多数!」


黒い染みがゆっくり膨らむ。


そして。


そこから、


“人型”が這い出してきた。


白い目。


黒い身体。


ノイズの輪郭。


だが今度は違う。


全員、


“顔”を持っていた。


知らない誰かの顔。


笑っている。


『――接続』


『――統合』


『――帰還』


剣也が霊装を展開する。


「チッ……休ませろよ!」

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