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Phantom Zero  作者: 高槻 和真


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【外伝前章】境界落下

白い霧が広がる。


空間の輪郭が消えていく。


地下研究区画だった場所は、すでに原型を失っていた。


床は途切れ、


重力すら曖昧になる。


剣也が足を踏み込むたび、空間が波打つ。


「……クソ、感覚狂う。」


リアが即座に補正を行う。


「位相ズレ発生。」


「視覚情報と空間座標が一致していません。」


侵食体はゆっくり歩いてくる。


急がない。


まるで、


“確実に回収できる”と理解しているように。


『――帰還を推奨』


ルナが小さく後退る。


その瞳にノイズが走る。


『――適合個体』


『――接続率、正常』


ルナが頭を押さえる。


「……ぁ……」


剣也がすぐ支える。


「ルナ!」


その瞬間。


侵食体が加速。


一瞬で距離を詰める。


リアが割り込む。


光刃と黒い刃が衝突。


衝撃波。


白霧が吹き飛ぶ。


リアが押し返される。


「出力が高い……!」


エレナが拳銃型霊装を展開。


青白い弾丸が侵食体を撃ち抜く。


だが。


穴が閉じる。


「再構成が速すぎる!」


暁が舌打ちする。


「核はどこだ!」


その時。


ルナが小さく呟く。


「……胸。」


全員が見る。


ルナは侵食体を見ていた。


正確に。


まるで内部構造が見えているように。


「……中に、“赤”。」


侵食体が止まる。


白い目が、


ゆっくりルナへ向く。


『――観測誤差』


剣也が笑う。


「見えんじゃねぇか。」


霊装を構える。


「リア!」


「同期開始。」


二人の干渉が重なる。


空気が震える。


侵食体が黒い腕を展開。


無数の刃へ変形。


突撃。


剣也が真正面から踏み込む。


刃を避ける。


掠る。


制服が裂ける。


だが止まらない。


リアが横から加速。


光刃を振り抜く。


侵食体が防御。


その一瞬。


剣也が懐へ潜り込む。


「――そこだァ!!」


霊装刃が侵食体の胸を貫く。


赤い“核”。


脈動している。


まるで心臓。


侵食体が初めて大きく揺れる。


『――接続』


『――維持不全』


リアが追撃。


光刃が核を完全に断ち切る。


赤い光が砕け散る。


その瞬間。


空間全体に亀裂。


白霧が崩れる。


侵食体の身体がノイズ化していく。


だが消える寸前。


それは最後に、


ルナを見た。


『――接続は終わらない』


『――“母体”が待っている』


消滅。


静寂。


次の瞬間。


空間崩壊。


リアが叫ぶ。


「境界層が崩れます!」


床が消える。


重力反転。


剣也がルナの腕を掴む。


「走れ!」


全員が崩壊する空間を駆ける。


後方で世界が剥がれていく。


暁が怒鳴る。


「出口は!?」


エレナが前方を指す。


「位相の薄い場所がある!」


白い亀裂。


現実への穴。


剣也が飛び込む。


リア。


ルナ。


暁。


エレナ。


次の瞬間。


全員、地下研究区画へ投げ出された。


床。


現実。


重力。


照明。


戻った。


だが。


警報は止まらない。


リアがゆっくり顔を上げる。


「……新たな高濃度反応。」


モニターが自動点灯する。


白羽市全域。


赤い点が一斉に灯る。


エレナが低く呟く。


「始まったわね。」


「“向こう側”が、街を認識した。」

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