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Phantom Zero  作者: 高槻 和真


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【外伝前章】接続実験

セレスティア本部・地下解析区画。


通常職員の立ち入りは禁止。


厚い隔壁。


多重認証。


空気まで違う。


剣也たちは、天谷に連れられて地下深部へ降りていた。


無機質な通路。


白い照明。


壁面には古い研究コードが残っている。


剣也が周囲を見ながら言う。


「……こんな場所あったのか。」


「表に出してねぇだけよ。」


天谷が答える。


「ここは“前時代”の研究区画。」


「前時代?」


リアが反応する。


天谷は小さく頷いた。


「2037年以前。」


「霊災が世界規模で認識される前。」


その言葉に空気が変わる。


剣也が止まる。


「……待て。」


「霊災って2037年からじゃねぇのか。」


天谷は振り返らない。


ただ歩きながら言う。


「“表向き”はな。」


静寂。


「実際には、もっと前から始まってた。」


重い電子扉が開く。


内部。


そこには、


大量の古い観測装置が並んでいた。


ブラウン管。


アナログ計器。


霊子観測用と思われる大型フレーム。


現在のセレスティア設備より、むしろ“不気味”だった。


エレナが小さく呟く。


「まだ残してたのね。」


天谷が端末を起動する。


古いモニターに映像が走る。


記録映像。


日付。


【2029年】


剣也の表情が変わる。


「……8年前?」


映像。


暗い研究室。


数人の研究者。


中央には巨大なリング装置。


『第一次境界接続実験、開始』


ノイズ。


映像が揺れる。


研究者が言う。


『位相固定、安定しています』


『反応増加』


『接続率上昇――』


次の瞬間。


画面が乱れる。


悲鳴。


警報。


何かが“映る”。


人影のようなもの。


だが形が安定しない。


そして。


映像終了。


沈黙。


剣也が低く言う。


「……なんだよ、これ。」


天谷が答える。


「人類最初の“接続実験”。」


リアが解析する。


「現在の境界理論に酷似。」


「当然。」


エレナが言う。


「今の技術は全部ここが原型。」


天谷の顔が少し険しくなる。


「そして。」


モニターが切り替わる。


研究責任者一覧。


そこに表示される名前。


【天谷 真白】


剣也が目を見開く。


「……天谷?」


暁が苦く笑う。


「俺の姉だ。」


空気が止まる。


「霊災研究の創始者。」


「境界理論の提唱者。」


「そして――」


「最初に“向こう側”へ到達した人間。」


エレナが静かに言う。


「でも帰ってこなかった。」


沈黙。


天谷はモニターを見たまま動かない。


「公式には“死亡”。」


「だが死体は見つかってねぇ。」


剣也が聞く。


「……じゃあ生きてる可能性が。」


「分からん。」


暁が即答する。


「ただ一つ確かなのは。」


モニターにノイズ。


その奥。


一瞬だけ。


女の姿が映る。


白衣。


長い黒髪。


そして、


“向こう側”。


『接続は始まっている』


映像終了。


部屋が静まり返る。


ルナが小さく呟く。


「……知ってる。」


全員が見る。


ルナはモニターを見ていた。


まるで、


“思い出す”ように。


「……この人。」


わずかに。


本当にわずかに。


「……会ったこと、ある。」

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