統合
セレスティア本部。
会議室。
空気が重い。
スクリーンには、これまでの戦闘ログ。
回収部隊。
起点。
分離領域。
すべてが並んでいる。
天城暁が腕を組んだまま言う。
「……まとめるぞ。」
低い声。
いつもより少しだけ固い。
「敵の組織名は確定した。」
一拍。
「“エイドス”。」
室内がわずかにざわつく。
研究班の女性――
白衣姿の科学者が前に出る。
名前は、
天谷博士。
長い黒髪。
冷静な目。
だがその奥に、わずかな熱がある。
「エイドスは、既存の対霊技術体系とは根本的に思想が異なります。」
端末を操作する。
スクリーンが切り替わる。
霊災の発生データ。
波形。
干渉ログ。
「セレスティアは“排除”。」
「対してエイドスは――」
一拍。
「“統合”です。」
剣也が眉をひそめる。
「統合?」
天谷が頷く。
「霊的存在を消すのではなく、取り込み、再構成する。」
リアが即座に反応する。
「危険性が極めて高い。」
「はい。」
天谷は即答する。
「ですが、理論上は――」
スクリーンに新しいデータ。
人型。
だが人ではない。
霊でもない。
「“進化”が可能です。」
暁が鼻で笑う。
「ふざけた話だな。」
だが否定はしない。
「で、そのためにドールを使ってるってわけか。」
天谷が頷く。
「はい。ドールは“器”として最適。」
ルナを見る。
「特に、あなたのような個体は。」
ルナは何も言わない。
ただ静かに聞いている。
剣也が口を開く。
「じゃあ、ルナを回収しようとしてるのは――」
「適合率が高いからです。」
天谷が即答する。
「あなたとの干渉で、“選択”を獲得している。」
「それはエイドスにとって、理想的な進化段階です。」
沈黙。
短い。
だが重い。
暁が口を開く。
「つまりだ。」
「連中は“人間と霊の中間”みたいなもんを作ろうとしてる。」
「そのための素材が、ドール。」
リアが補足する。
「そして観測・制御装置が“起点”。」
天谷が頷く。
「おそらく。」
剣也が椅子にもたれかかる。
「……で、その起点ってのは何なんだよ。」
天谷の指が止まる。
ほんの一瞬。
「完全には不明です。」
だが、続ける。
「ただし――」
画面に新しいデータ。
起点の戦闘ログ。
異常な干渉値。
「単なる指揮個体ではない。」
「むしろ、“核”に近い存在。」
ルナが初めて口を開く。
「……似ている。」
全員の視線が集まる。
「……私と。」
静かに。
確信を持って。
暁が目を細める。
「……そうか。」
低く呟く。
「元は同じか。」
天谷も小さく頷く。
「可能性は高いです。」
空気が変わる。
剣也がルナを見る。
「気にしてるか?」
ルナは少しだけ考える。
「……不明。」
正直な答え。
だが、
「……でも。」
一拍。
「……違う。」
はっきりと言う。
リアが静かに言う。
「現在の行動原理が異なる。」
「それで十分。」
ルナが小さく頷く。
暁が机を軽く叩く。
「方針はシンプルだ。」
全員を見る。
「エイドスは放置できねえ。」
「統合なんてのが進めば、霊災どころの話じゃなくなる。」
剣也が笑う。
「全部混ぜるとか、ろくなことにならねえな。」
天谷が最後のデータを出す。
「一点、重要な情報があります。」
スクリーンに座標。
山間部。
白羽市外れ。
「ここに、大規模なエネルギー反応。」
「おそらく、エイドスの拠点。」
暁がニヤリと笑う。
「ようやく尻尾出したか。」
剣也が立ち上がる。
「行くんだろ?」
即答。
リアも同時に立つ。
「戦闘準備、可能。」
ルナは少しだけ遅れて立つ。
水色の髪が、わずかに揺れる。
「……選択。」
小さく呟く。
「……行く。」
暁が三人を見る。
一瞬だけ。
ほんの少しだけ、
昔を思い出すような目をする。
だがすぐ戻る。
「無茶すんなよ。」
軽く言う。
「死ぬな、それだけだ。」
会議が終わる。
扉が閉まる。
その直前。
天谷が小さく呟く。
誰にも聞こえないくらいの声で。
「……エイドス。」
その目に、
ほんのわずかな“個人的な感情”。




