回収部隊
白羽市・湾岸区画。
夜――ではなく、照明が落ちた“人工の夜”。
コンテナ群。
クレーン。
無人。
だが――
「来るぞ。」
剣也が低く言う。
リアはすでに戦闘モード。
「高密度反応、複数。」
ルナは一歩前に出る。
水色の髪が、静かに揺れる。
「……同型、違う。」
小さく言う。
「量産、じゃない。」
次の瞬間。
空間が裂ける。
現れるのは――
“ドール”。
だがリアともルナとも違う。
外装は黒。
無駄がない。
感情の痕跡が完全にない。
「……来たな。」
剣也が構える。
リアが即座に分析する。
「エイドス製・回収特化個体。」
数。
五体。
そして――
その後ろ。
起点。
静かに立っている。
観ている。
「対象確認。」
回収ドールの一体が言う。
「個体:ルナ。」
「回収開始。」
一斉に動く。
速い。
人間の反応では追えない速度。
剣也が前に出る。
「止めるぞ!」
一体と衝突。
重い。
今までと比べ物にならない。
「くそっ……!」
リアが横から支援。
連携でなんとか止める。
だが――
残り四体が動く。
完全にルナ狙い。
ルナは動かない。
視線だけで追う。
「……来る。」
一体目。
接触。
ルナが触れる。
崩壊――しない。
「……耐性。」
初めて。
ルナの攻撃が“効かない”。
回収ドールが腕を掴む。
「捕捉。」
ルナの動きが制限される。
「……拘束。」
二体目が加わる。
完全に押さえに来る。
「離せ!」
剣也が叫ぶ。
だが距離がある。
リアが突破しようとする。
だが三体目が阻む。
「邪魔だ!」
斬る。
通る。
だが再生が速い。
「キリがない……!」
ルナの内部。
処理が加速する。
選択肢。
回避。
排除。
逃走。
だが――
拘束。
動けない。
「……選択不能。」
小さく呟く。
その瞬間。
起点が一歩前に出る。
「補助。」
短く言う。
回収ドールの動きが変わる。
より正確に。
より強く。
完全に“制御されている”。
剣也が歯を食いしばる。
「……クソが!」
無理やり突破する。
一体を弾き飛ばす。
もう一体を切り裂く。
リアがすぐ横につく。
「ルナまで一直線。」
「分かってる!」
ルナの前。
あと少し。
だが――
起点が立ちはだかる。
「通さない。」
初めて、明確な意思。
剣也が笑う。
「やっとやる気かよ。」
斬る。
起点は受ける。
止まる。
ほんの一瞬。
だがそれでいい。
「リア!」
「了解!」
同時攻撃。
位相を合わせる。
一瞬だけ、起点の防御が揺らぐ。
「今だ!」
剣也が飛び込む。
ルナへ。
手を伸ばす。
届く。
その瞬間。
回収ドールが引き離そうとする。
だが――
剣也が掴む。
「離すなよ。」
ルナの瞳が揺れる。
「……剣也。」
名前。
はっきりと。
「……選択、再開。」
処理が戻る。
水色の髪が発光する。
だが今回は違う。
暴走ではない。
安定している。
リアがすぐに接続する。
「位相同期、補助。」
剣也が言う。
「好きにやれ。」
完全に任せる。
ルナが目を閉じる。
「……拘束、無効化。」
触れられている箇所へ干渉。
内側から。
回収ドールの腕が崩れる。
一体。
二体。
同時に。
「……解除。」
自由になる。
そのまま、
範囲を展開。
だが以前と違う。
無駄がない。
必要な範囲だけ。
「……最適。」
残りのドールが一斉に崩壊する。
完全に。
静寂。
残るのは――
起点のみ。
距離を取っている。
三人を見る。
「……完了。」
小さく呟く。
「……確認した。」
何をかは言わない。
だが、
理解している。
「……三体構成。」
その言葉が落ちる。
剣也・リア・ルナ。
一つの戦力として認識。
起点が一歩下がる。
「回収、保留。」
明確に言う。
そして、
ルナを見る。
「……次は、単独で来い。」
試す。
完全に。
ルナの“選択”を。
空間が歪む。
消える。
完全撤退。
風が戻る。
音が戻る。
剣也がその場に座り込む。
「……はぁ……」
リアが周囲を確認。
「敵反応、消失。」
ルナは静かに立っている。
髪の光が、ゆっくり収まる。
「……成功。」
小さく言う。
剣也が笑う。
「だな。」
リアも頷く。
「戦術成立。」
だが。
空気は軽くない。
剣也がルナを見る。
「単独で来い、ね。」
ルナは少しだけ考える。
「……応じない。」
即答。
だが――
「……でも。」
一拍。
「……必要なら、行く。」
その言葉は、
“命令”ではなく
“選択”。




