排除対象
セレスティア本部。
異常はない。
――はずだった。
「……変だな。」
剣也が言う。
モニターは正常。
センサーも問題なし。
だが、
「……静かすぎる。」
リアも同意する。
「外部通信、微弱な遅延あり。」
「遅延?」
「意図的に“ずらされている”可能性。」
その時。
ルナが顔を上げる。
水色の髪が、わずかに震える。
「……来る。」
短い。
確信。
次の瞬間。
“音”が消える。
完全に。
そして――
空間が、閉じる。
「結界……!」
剣也が構える。
だが今回は違う。
“内側から”。
本部内部が、丸ごと切り離される。
リアが即座に解析する。
「高次位相固定……解除不可。」
剣也が舌打ちする。
「完全にやる気だな。」
廊下。
影が現れる。
だが、少ない。
三体。
それだけ。
「少なっ……」
次の瞬間。
一体が消える。
そして、
剣也の目の前に出現。
「っ!」
反応が間に合わない。
衝撃。
吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
リアが即座に割り込む。
斬撃。
だが、
「速い……!」
防がれる。
完全に。
「個体性能、跳ね上がってる。」
三体。
だが、それぞれが“強い”。
ルナは動かない。
中央に立つ。
目の前。
空間が歪む。
そして――
起点が現れる。
静かに。
完全に。
「……対象確認。」
視線が剣也へ向く。
「……干渉要因。」
そして、はっきりと言う。
「排除対象。」
剣也が立ち上がる。
口元の血を拭う。
「光栄だな。」
リアが横に並ぶ。
「優先防護対象、剣也へ変更。」
ルナはその言葉に、即座に反応する。
「……同意。」
短く。
だが迷いはない。
起点が一歩前に出る。
その瞬間。
圧が来る。
前回より強い。
明確に“潰しに来ている”。
剣也が歯を食いしばる。
「くっ……!」
膝が沈む。
リアが補助に入る。
だが、足りない。
「位相差が大きすぎる……!」
ルナが前に出る。
剣也の前へ。
「……遮断。」
小さく言う。
水色の髪が発光する。
圧を受け止める。
完全ではない。
だが、止める。
起点の動きが止まる。
「……干渉、成立。」
観測するように呟く。
影の三体が動く。
同時に。
剣也とリアへ。
「任せろ!」
剣也が迎撃。
リアと連携。
だが、押される。
純粋に強い。
「っ……!」
一体に押し込まれる。
その瞬間。
ルナが動く。
一瞬で距離を詰める。
触れる。
崩壊。
「助かった……!」
だが、すぐ次。
二体目。
リアが対応。
三体目。
剣也が抑える。
ギリギリ。
起点がそれを見ている。
静かに。
「……連携。」
小さく呟く。
「……外部依存、確認。」
そして、
剣也を見る。
「排除優先度、上昇。」
次の瞬間。
起点が消える。
剣也の背後に出現。
「なっ――」
振り向く暇がない。
手が伸びる。
首元へ。
――直前。
ルナが割り込む。
「……拒否。」
掴む。
起点の腕を。
初めての“直接接触”。
空間が歪む。
衝突。
位相同士がぶつかる。
「……干渉、強い。」
起点が初めて“押される”。
ほんのわずか。
だが確実に。
「……可能性。」
その言葉は、
評価に近い。
剣也がその隙に動く。
「どけ!」
斬る。
直撃。
――だが、
浅い。
起点の身体が、揺れるだけ。
「効いてねえ……!」
リアが補助。
同時攻撃。
それでも――
決定打にならない。
起点は距離を取る。
数メートル。
そして三人を見る。
「……現段階。」
一拍。
「排除、非効率。」
判断。
だが、
次の言葉が違う。
「……観測、継続。」
そして、ルナを見る。
「……選択、確認済み。」
一瞬。
わずかに、
感情に近い“何か”が混じる。
「……次段階へ移行。」
空間が歪む。
消える。
影も同時に消失。
結界が解ける。
音が戻る。
静寂。
剣也が大きく息を吐く。
「……やべえな、あいつ。」
リアが頷く。
「単体での撃破は困難。」
ルナは少しだけ俯く。
水色の髪が、ゆっくりと光を失う。
「……守れた。」
小さく言う。
剣也が笑う。
「十分だろ。」
リアも言う。
「任務達成。」
短く。
だが確かな肯定。
遠く。
起点。
単独。
静かな空間。
「……排除対象。」
もう一度、確認する。
だがその後、
少しだけ間が空く。
「……観測対象。」
言い換える。
剣也を。




