表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

閾値

数日後。


白羽市の外れ。


工業地帯。


使われなくなった倉庫群。


「またここかよ。」


剣也が呟く。


空は曇り。


風は弱い。


だが――


「反応、強い。」


リアが即答する。


「前回の観測ノードと同系統。ただし出力は上。」


剣也は肩を鳴らす。


「テストってわけか。」


ルナは一歩前に出る。


無表情。


だが、


水色の髪が、わずかに濃い。


「……視線、感じる。」


小さく言う。


「見られてる。」


リアが頷く。


「同意。外部観測あり。」


剣也が笑う。


「じゃあ派手にやるか。」


倉庫内部。


広い。


何もない。


その中央。


装置。


前より大きい。


そして――


起動している。


「……露骨だな。」


剣也が言う。


その瞬間。


地面が震える。


影が浮かび上がる。


数。


多い。


だが――


「質が違う。」


リアが言う。


形が安定している。


“個体”として成立している。


「来るぞ!」


一斉に動く。


戦闘開始。


速い。


重い。


「っ……!」


剣也が一体を斬る。


だが、手応えが違う。


「硬ぇな……!」


リアが横から切り裂く。


連携は問題ない。


だが押し切れない。


「数が多い!」


包囲される。


ルナは動かない。


中央。


装置の前。


見ている。


「……解析中。」


小さく呟く。


剣也が叫ぶ。


「今はそれどころじゃねえ!」


その瞬間。


一体が背後からルナに迫る。


リアが反応。


だが間に合わない。


「ルナ!」


剣也が動く。


――より早く。


ルナが動いた。


一歩。


踏み出す。


手を上げる。


それだけ。


だが――


空間が“止まる”。


影の動きが一瞬だけ鈍る。


「……干渉。」


ルナが言う。


そして。


触れる。


影に。


次の瞬間。


内側から崩壊する。


音もなく。


剣也が目を見開く。


「は?」


リアも一瞬だけ止まる。


「……今のは。」


ルナは自分の手を見る。


「……選択。」


ぽつり。


「……干渉方法、変更。」


つまり――


“戦い方を選んだ”。


影が一斉に動く。


今度はルナを狙う。


「やらせるか!」


剣也が前に出る。


リアも同時にカバー。


だがルナは止まらない。


前へ。


その動きに迷いがない。


影が来る。


ルナは避けない。


「……遅い。」


小さく言う。


触れる。


一体。


崩壊。


二体。


同じ。


三体。


消える。


剣也が笑う。


「なんだそれ。」


リアが即座に分析する。


「位相干渉。対象の構造を内部から破壊してる。」


「そんなことできたのかよ。」


「通常のドールには不可能。」


つまり――


ルナだけ。


その時。


装置が強く光る。


空気が歪む。


剣也が舌打ちする。


「本命か。」


空間の奥。


“あれ”がいる。


起点。


ただし――


出てこない。


観測している。


ルナを見る。


一点だけ。


「……進行確認。」


小さく呟く。


ルナがそれを見返す。


「……見てるだけかよ。」


剣也が言う。


リアが首を振る。


「違う。誘導してる。」


装置がさらに出力を上げる。


影が増える。


さっきより明らかに強い。


「キリがねえ!」


剣也が叫ぶ。


ルナが前に出る。


そして――


止まる。


一瞬。


考えるように。


「……範囲。」


呟く。


次の瞬間。


足元から光が広がる。


円。


半径数メートル。


水色。


淡いが、はっきりと。


「……選択拡張。」


その中に入った影が――


一斉に崩壊する。


音もなく。


跡も残さず。


剣也が吹き出す。


「チートかよ。」


リアが冷静に言う。


「出力が不安定。長時間は持たない。」


実際、


ルナの髪の光が揺れる。


濃くなりすぎている。


「……負荷、増大。」


小さく言う。


だが止めない。


起点がそれを見ている。


「……閾値、到達。」


評価するように。


その瞬間。


装置が停止する。


影も消える。


結界が解ける。


風が戻る。


音が戻る。


終わり。


ルナがその場で崩れる。


剣也がすぐに支える。


「おい!」


ルナは目を開けたまま。


だが焦点が少しずれている。


「……処理……過多……」


リアが即座に接続する。


「安定化処理、開始。」


数秒。


やがて、


ルナの視線が戻る。


「……大丈夫。」


剣也がため息をつく。


「無理すんなって。」


ルナは小さく言う。


「……必要だった。」


その言葉に、


剣也は何も言わない。


ただ、少しだけ笑う。


遠く。


誰もいないはずの場所。


起点が立っている。


静かに。


「……選択。」


繰り返す。


「……進化。」


その言葉は、


評価なのか、警戒なのか。


まだ分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ