断片
高架橋の上を、風が抜けていく。
街の灯りが下に広がっている。
白と橙の光が、規則的に並ぶ。
そこに、“それ”は立っていた。
動かない。
ただ、視線だけが流れていく。
人の流れ。
車の軌跡。
断続的な音。
すべてが、距離を持って認識される。
――観測。
内部に残る機能。
記録。
収集。
保持。
それが、基準。
だが――
「……ノイズ。」
微かな出力。
誰にも届かない。
内部で、処理が揺らぐ。
断片。
白い空間。
規則正しく並ぶ装置。
反復される声。
『同期率、上昇。』
『問題なし。』
『この個体は安定している。』
定義不明。
だが、消去できない。
現在。
視界の端に、二つの反応。
既知。
過去の観測データと一致。
一つは、強い。
共鳴。
シーカー。
内部に警告が走る。
――干渉対象。
同時に、別の信号。
不完全な命令。
『排除……』
ノイズ。
『観測……優先……』
優先順位が確定しない。
処理停止。
「……不明。」
短い出力。
断片。
崩壊した施設。
煙。
破損した壁。
接近する複数の足音。
武装。
一人の男。
低い声。
『……まだ動いてやがる。』
定義不能。
だが、記録は残る。
『回収は無理だな。』
『処理する。』
内部反応。
矛盾。
――停止。
違う。
だが、代替命令なし。
「……待機。」
選択。
理由は存在しない。
現在。
風が強まる。
視線が一点に固定される。
微弱反応。
観測装置。
そして――対象。
内部処理、再開。
――接近。
――監視。
――干渉。
いずれも確定せず。
「……継続。」
最小選択。
一歩。
足が動く。
音は残らない。
次の瞬間、
姿は消える。
定義されない“残響”だけが、
その場に残った。




