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10話

読んでくださってありがとうございます!


更新が遅れて申し訳ないです。

新作にに夢中になり過ぎてしまいました。



今回は甘々回です。



羽根田 陽太に関する一連の事件は、容疑者の精神的異常が原因という事で終わりを迎えた。

本人が正気を保っているのかは分からないが、意識が戻ると即自分の容疑を認めたらしい。

恐らく、正気を保てなかったのもあの化け物のせいなのだろう。

ただ、僕が鵺の存在を感じたのは昨日だけだったので、一昨日のナイフを取り出した羽根田はまだ正気を保っていた?ようだ。


そして今日、僕に向く視線は何故か今まで感じたことの無いような種類の視線だった。

美咲曰く、


「ナイフを取り出した男一人を簡単に捩じ伏せられる、怒らせたらやばい奴」


らしい。誠に不本意だ。

まあ、下手に手を出そうとしてくる者が少なくなった事で、学校で過ごしやすくなったのは嬉しいのだが、学校で過ごし易くなったと思えば、今度は家が過ごしにくくなっていた。


その原因は……

「圭介!アレ出して!」

美咲が帰りに家に毎日寄るようになった事だ。

「……えぇ…嫌「拡散するよ?」……はい。分かりました。」

美咲は、僕のアレを触りたいが為だけに僕の秘蔵品の写メを撮り、事あるごとに拡散すると脅してくるのだ。

「……ほら、好きにしろ。」

僕はアレを下半身から顕現させ、美咲に押し付ける。

「やったー!」

喜びに満ちた顔で僕のアレを撫でくり回す美咲。撫で回しているうちに、うっとりとした表情へと変わっていく。



………………言っておくが、卑猥な事ではないぞ?

とある事を思い浮かべた奴は、まだまだ美咲の純粋さを知らないという事だな…………こいつは、”初体験”とは何か、と聞かれたら、

「え?キスの事?」とか言うような奴だ。なので断じてそんな卑猥な事は知らない…筈だ。

………話を戻そう。

僕が美咲に触らせているのは、僕の尻尾だ。

神使の体というのは意外と融通が利くようで、部分的に顕現させる事もできる。


しばらく美咲に尻尾を撫でさせてやっていると、今度は顔を埋めてきた。

「モフモフだぁ……」

顔が沈み込んでいる。そんなに柔らかいのだろうか?

僕はもう一本の尻尾を自分で触り、その柔らかさに驚愕した。

(……今度枕にでも使ってみようかな。)

そんな事を考えられる程に、狐の尻尾はフワフワだった。

思わず触り続けてしまう。中毒の危険大だ。


……僕が自分の尻尾を触りまくっていると、隣がやけに静かな事に気付いた。

見ると、僕の尻尾を枕にして、いつのまにか美咲が眠っている。

……何故かその顔を見て思った事は、

(……まつげ長っ)

だった。

……目が開いている状態でも長いと感じさせるが、閉じているとその長さがよく分かった。


僕はあどけなさが残る美咲の寝顔を眺め続けた。

今までじっと見つめる機会などあまりなかったので、じっくりと観察させてもらう事にする。

まずは、肌だ。

白磁のように真っ白で、シミひとつないその肌は、健康的な透明感を発していた。思わず突っついてしまう。

「……んんつ………」

可愛らしい声を出して、美咲が唸った。


次は髪を見てみる。

サラサラなストレートロングで、枝毛や絡まった箇所などは一つもない。

少し離れた所からでも花のような甘い香りがする。

この前やったように頭を優しく撫でると、

「……ふぁ………」

と、気が抜けたような声を出した。

可愛いな、おい。


…そして、最後に目に留まったのはその唇だ。

(無茶苦茶柔らかそうだな………)

柔らかなピンク色をした唇は、もし食べれるのだとしたらきっと甘い味がする、そんな事を思わせるほどの色合いと艶を持った唇だった。


「………ほんと、可愛いんだよなぁ……」

心が緩みきっていたのか、僕の本音がそのまま出てしまった。

本人が寝ていなかったら大惨事である。


そして僕は唐突に、自分が一週間にも満たない時間でここまで心を許す事ができた人間は美咲だけなのだ、と気が付いた。

それは何故か?と考える。


……一体、美咲は僕にとって何なのか。


……ただの幼馴染?否。

とても仲の良い友達?否。

護るべき存在?…そうだ。……でも、ただの庇護の対象ではないと思う。

僕は何を美咲に思っている?

何故美咲を護ろうとする?

冬香は僕にとって家族であり、今や命よりも大切な存在だ。

ならば美咲は?

……考えろ。考えろ………

辺りを見回しながら思考する。


……と、その時、とある文庫本が目に付いた。

つい最近僕が買った本。

とある小説投稿サイトに投稿された作品が書籍化されたもの。

題名が英語で、面白そうだな、と不意に思って衝動買いした一冊だ。


そのタイトルは、

”I love you too much and can't stand it.”

日本語に訳すと、

"貴方の事が愛しすぎて堪らない"………


そのタイトルを見て僕は、何故僕が美咲を護ろうとするのか、ストンと納得した。


(ああ、そうか。僕は美咲の事が好きなんだ。)


それは余りにもありふれた答えで、どうして今まで出てこなかったのかと自分の鈍感さに呆れた。と同時に、猛烈な羞恥心が僕を襲ってきた。

顔が高熱でも出たかのように熱くなる。


(………ああ、くそ。早く収まれ!)


目を瞑って深呼吸をし、再び目を開けると、ふにゃりとした笑みを浮かべた美咲の寝顔を直視してしまっていた。


「っ〜〜〜!!」


ボスボスと自分の尻尾に頭を打ち付ける。


(我ながら初々しすぎる!乙女か!僕は!)


顔が全て埋まるほど強く尻尾に押し付けていると、もう一本の尻尾に何かが触れる感触があった。


見れば、美咲が僕の尻尾を抱き枕のように抱きしめているのだ。

愛らしさが限界値を突破している。

僕はこれ以上眠っている美咲を見るのは危険だと思い、尻尾を動かして美咲の体に優しく巻きつけると、そのまま僕のベッドに寝かせた。

顔があちらを向くようにして。

そしてタオルケットを美咲に掛けて、僕はソロソロと部屋から出た。


(もう、お腹一杯です……)


* * *


私、西川美咲は、幸せです。

と同時に、途轍もなく恥ずかしい。

さっきの圭介の言葉と言動を思い出しては、

圭介の枕に顔を埋めてしまう。

だけどその枕も圭介の匂いがして、もうどうしようもない。


(ほっぺたツンツンされた……)


あの時は突然の事にびっくりして、思わず声が漏れてしまった。

本当はただの意味の無い寝たふりだったのに。

圭介が近づいたら脅かそうとか考えていたんだけど、その前に驚かされた。


しばらく圭介は私のほっぺたを突いた後、頭を撫でて来た。

つい最近感じた事のある、まるで小さな子供を撫でるかのような優しげな手はとても気持ちよくて、我慢できずに変な声が出てしまった。


(……それだけだったら耐えられたんだけどな……)


そう。あれだけだったら、圭介に触れてもらえたという喜びだけだったのに。


「………ほんと、可愛いんだよなぁ……」


「っ〜〜〜〜!!!」


口角が上がりっぱなしで、無理矢理抑えようとしても上がってくる。


(ああ、もう無理。こんな顔圭介に見せられない。)


限界を超えた幸せは、私を蝕む甘美な毒となって身体中を駆け巡り、心がどんどん単純になって行くのが分かる。


(……ダメ。これ以上心が緩んだら、またこの前みたいになっちゃう…)


心にストップをかけようとするのだが、また圭介に甘やかして貰えるかもしれない、という誘惑が勝ってしまった。


と、そこでトントンとノックをする音がした。

今開けたらダメ、と思いながらも、どうぞ、と答えてしまう。

……私の心は既に単純化された後だった。


* * *


<冬香視点>


私が台所で夕食を作っていると、ふらっと兄が現れた。

家ではいつもぼんやりとしている顔が、今は更にぼんやりとしている。

これは何かあったな、と思いながら私は兄に問う。


「お兄ちゃん、美咲さんはどうしたの?」


すると兄はあからさまに動揺した顔を見せ、

「今は戻れない……」

などと言い始めた。一体何があったんだ。

私は一番可能性がある事を兄に問う。


「……また喧嘩したの?」


すると、ブンブンと慌てたように頭を振り、兄は否定した。


「違う違う、僕が勝手に降りて来ただけ。美咲は今部屋で寝てるんだよ。」


私はそれを聞いて呆れてしまった。


「……意気地なし。せめて同じ部屋にいないとダメだよ。」


本当に意気地なしだ。せっかく女の子が無防備な姿を見せているというのに……

…いや、別に故意で見せてるわけではないか。


「いや……その……あ、アレだよ。お茶を取りに来たんだ。まだ飲んでないしな。」


「美咲さん寝てるのに?……はっ、もしかして、口移しで………」


こういう時、兄はポンコツになる。私は兄の矛盾点を指摘し、動揺させた上で部屋で何があったのか聞き出そうとした。しかし……


「そ、そんな……く、口移しなんて…………」


……ん?

様子がおかしい。

顔を赤くして、恥じらうように伏せながら小声で何か言っている。

そんな兄を見て、私の脳内では即座にある仮説が出来上がり、それを証明するために更に兄に追い打ちをかけていた。


「口移し、じゃなくて、キス、でしょ?」


「……ききき、キス!?」


(ほぉう?なるほどなるほど……)

最後にとどめの一撃を放てば、白か黒かがはっきりする。

そう思った私は、単刀直入に聞いた。


「お兄ちゃん、美咲さんのこと好きなの?」


兄の反応は劇的だった。

既に赤かった顔は耳まで真っ赤になり、唇はワナワナと震え、手を開いたり閉じたりしている。瞳は潤んで、まるで子供のような雰囲気を醸し出していた。

その庇護欲を掻き立てる姿は、まるで恋する乙女、いや、恋する乙女そのものだった。

男だけど。


(……これは……冬香お姉ちゃんの出番ですね……)


私は心の中で舌舐めずりした。

……まずは、素直にさせる事からかな?

…だが、それは存外簡単だった。

兄はコクリと頷くと、私に向かって聞いてきたのだ。


「……ごめん。話、聞いてくれないかな?」


(このチャンスを逃す私ではない!)

私はそう思うと、条件を述べた。


「いいけど、私の事を”お姉ちゃん”と呼べたらね?」


すると兄は驚いた事に、


「はい……お姉ちゃん……」


と呼んできたのだ。どうやら既に諦めていたようだ。


「よろしい。……さあ、”お姉ちゃん”に話して?」


「……うん……」


兄の口から語られた話は、もうなんと言うか……口から砂糖を吐きそうなほど甘ったるい話だった。もはや惚気にしか聞こえなかった。

「お前らもう結婚しろ!」

と言いたくなるのを何度も我慢してずっと聞いていた。

だが、兄が最後にこんな事を言い出したのだ。


「美咲は……多分僕の事を幼馴染としか見てないんだよ。」


「いや、そんな訳ないでしょ。」


思わずツッコミが出てしまった。

どうやらこの人達にとって、”過剰なボディタッチ”や、”甘い言葉の掛け合い”などは幼馴染のスキンシップの範疇に入ってしまうそうだ。


「……もう本当、お前ら結婚しろ。」


我慢できずに、ついに小声で毒づいた。

当の本人は、

「え?なんて?」

とか言ってる。

(……くそ、こうなったら無理矢理引っ付けてやる……)

女の子らしからぬ言葉を使ってしまったが、もう仕方ないだろう。

私はもう決意したのだ。この二人をくっ付けると。

なので、先程の兄の問いにはこう返した。

「今から美咲さん呼んでくる!」

と。

兄は、「や、辞めてくれ……今は……」とか言ってたけど、無視無視。

さっさと呼んで面白いものを見よう。

私はさっさと階段を登って兄の部屋に行った。


コンコン、とノックをする。

中から、どうぞ、という言葉が聞こえたのでドアを開けた。

と、その瞬間、私は何か柔らかいものに抱きつかれていた。



読んでくださってありがとうございました。


やっと圭介が自分の気持ちに気が付きましたね……

冬香の恐ろしい思考の一端も垣間見えた気がする……


又、新作


「悲劇の主人公と喜劇のヒロイン」


もご覧になってください!

この作品はこちらと違って現実性を意識しており、結構重い場面が最初にあります……が、途中からやっぱり甘々になります!


バッドエンドも趣がありますが、やっぱりハッピーエンドの方が後味が良いですからね!

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