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9話

読んでくださった方々、ブクマ登録して下さった方々、ありがとうございます!


今回は主人公の無双回です!


又、新しい小説も書き始めたので、そちらもよろしくお願いします!


題名は、

「悲劇の主人公と喜劇のヒロイン」

です!

9話


僕達は今朝、校門に着くと同時に担任に呼び出された。

用件は、羽根田の事について。


「…羽根田君が、昨日警察署から家に帰る途中で逃走したそうです。…今も消息不明だと聞いています。」


「………え?」


「嘘でしょ………」


その後の話によると、羽根田は車から降りて逃走した後、凄まじい速さで走って行ってしまったらしい。

警察官が走っても全く歯が立たない程速かったそうだ。


「……気を付けてください。特に下校時。」


「……はい。」


「………」


僕達は直ぐに解放されたが、不安からは解放されなかった。


「…まあ、下校までには見つかるだろ。たかが高校生だからな。」


「……そうだと良いけど…」


美咲はやはり心配らしい。

僕はそんな美咲を元気づけるために強がった。


「まあ、もし襲われた時には僕が居るから大丈夫だ。ほら、僕強いし。」


「……うん……」


そんな時、授業開始の予鈴が鳴った。


「あっ、予鈴だ。……美咲、遅刻するぞ?」


「分かった。行こ。」


だが僕は、事態を楽観視し過ぎていた。


* * *


終礼が終わった後、担任に再び呼び出されて釘を刺された。

羽根田は未だに捕まっていないそうだ。



「…ほら、なるべく早く帰ろう。」


「そうだね。」


美咲はやっぱり不安そうだ。かく言う僕も、羽根田が未だに捕まっていない事を聞いてかなり不安になり、周囲に感覚を巡らせ、近くに何か居ないか警戒する道のりが続いている。

そんな時だった。


空から何かが降ってきた。

それは、ダン!という大きな音を立てて地面に着地すると、ゆっくりと立ち上がった。

こちらを向いたその顔は、目が赤く光り、無表情な羽根田のそれだった。


「……は、羽根田…なのか?」


「……………つ!」


美咲は恐怖で声が出せないようだ。息を飲む音だけが聞こえてくる。僕は、美咲を庇うように立つと、今度は様子見なしで”目”を解放した。


「…やっと見つけた。」


羽根田の口から漏れ出た声は、恐ろしく起伏が無く、無感情な声だった。まるで機械のようだ。


「……何の用だ……」


「お前を殺しにきた。」


「即答かよ……」


「……殺す。」


羽根田はそう言うと、地面を蹴って僕に向かって突進した。

突進の軌跡がしっかりと見えていた僕にとっては、回避することは容易だった。美咲が後ろにいなければ。


僕は突進の軌跡をずらそうと、両手をクロスして受け流しの体制をとった。そこから斜めに体を傾けて受け流そうとしたのだが……


「ぐっ!?」


威力が強すぎて、全てを受け流すことが出来ない。

僕は受け流す事を諦め、羽根田と共に後ろに吹き飛ばされる事を選んだ。幸い、少しは突進をずらせていたようで、美咲には当たらなかった。


だが僕は住宅街の壁に背中をぶつけ、痛みで上手く動けない状態だった。


「……さて、さっさと殺そうか。」


辛うじて立っている僕を見て、羽根田は冷ややかな声でそう告げると、その場で動きを止めた。


………今のうちに逃げようと僕は壁に頼りながら歩き始めたのだが、それは背中に来た新たな衝撃に阻まれた。


「……ぐはっ……」


更に数メートル程僕は吹き飛ぶと、うつ伏せになった状態のまま動けなくなった。

頑張って首だけ動かすと、変貌した羽根田の姿が見えた。


「………なんだ……あれ……」


羽根田、いや、その怪物は”奇怪”という言葉がぴったりと当てはまるような姿をしていた。


まず一番に目に入るのは、その全体像だ。

4本足で立っていて、体長は凡そ4メートル程か。

次に、その詳細が目に入る。猿の顔に、狸の胴体。蛇の尻尾に、虎の足。

昔読んだ平家物語で、源 頼政に射殺されたと書いてあった物の怪。


「……鵺……」


現実には存在しないはずの化け物が、僕を見下ろしていた。

そして、鵺が口を開いた。


「伊坂 圭介……殺す。」


その口から出てきた声は、羽根田の声だった。やはり羽根田が変身したという事だろうか。


こんな状況なのにも関わらず、僕は何故か恐怖を感じなかった。

いや、恐怖を感じる必要が無かった。

何故なら…


「……僕の方が、強い。」


僕はつい先程動けるようになった体で立ち上がると、”目”の光を強めた。


……何故僕が、”人間を辞めた”と言うのか。

それは、これが理由だ。


「……………」


無言で体内に満ちる力の密度を高めていく。


「………っ!」


力が溢れそうなまで高まった時、僕はそれを体に纏わりつかせる様にゆっくりと流していく。

力は白色の光の糸となり、体の隅々まで絡みついていく。


……今僕の姿を外から見ると、恐らく急激に変化している事だろう。紫色の瞳は光を増して体は巨大化し、二足歩行だった体は四足歩行となり、体には純白の柔らかな毛が生えていく。そして、臀部からは9本の太い尻尾。


……誰かがこの姿を見て最初に思う事は、

”神々しい”の一言だろう。


何故なら、僕の姿は正しく神の使いの姿なのだから。


“九尾狐”。それが今僕がとっている姿だ。


古くから稲荷信仰で祀られている神。その眷属の中でも第二位に位置する神使の姿だ。

一般には、”吉兆をもたらす神獣”と言う呼ばれ方が多いが。


変身を数秒で終了した僕は、4本足で地面を踏みしめると、眼光を更に強めた。

神通力による光で辺りが紫色に照らされる。

それを受けて、鵺は目に見えて怖気付いている。

まあ、物の怪が神使に太刀打ち出来る訳も無いのだが。


「……っ!……殺す!」


驚いたことに、鵺は僕の威圧にも屈さずにこちらに向かって来た。僕は少し空間の神通力を増やす。すると、それだけで鵺は見えない鎖に繋がれたかの様に動けなくなった。


「……どうするつもりだ……」


鵺は僕にそう聞いてきた。


……どうするか?


………どうしよう。


僕は、この鵺をどうすれば人に戻せるか分からなかった。

元々、どうして鵺が羽根田にくっ付いたのか分からないのだ。

どうしたものかと悩んでいると突然、鵺の体に変化があった。鵺が羽根田に戻ったのだ。気絶している。

そして、頭の中に女性の声が聞こえてきた。


「……おい、私の体を譲り受けた者よ。」


「……なんだ?ついにあの世との扉が開いたとか?」


試しに心の中で呟いてみると、返答が聞こえた。


「……不吉な事を言うな。私は、お前が今変身している体の主だ。」


「…ふうん。主ねぇ。」


「ふうん。じゃない!お前、無礼だぞ!」


「…はい。」


「素直でよろしい。」


……突然声だけ現れて、僕の体の主だとか言っている人がいる。はっきり言って、信用ならない。


「誰が信用できないのかな?」


「げ、心の声聞こえてたのかよ。」


「お前は神使をなんだと思っているんだ……これくらい朝飯前だ。」


人の心をあっさりと覗くほど相手への配慮がない事を見ると、僕の事をかなり下手に見ているようだ。


「……お前、急に毒舌になってないか?」


「いいえ?別に?」


「……まあ良い。……とりあえず、今まで説明できなかった事だけ説明しようか。」


説明?なんの?


「黙って聞け。」


僕が何か言い返す前に、”自称”神使は語り出した。


「……〜で、〜〜だったのだ。そして、〜〜だったから〜」


……あまりにも長すぎたので要約する。


……以前僕が参拝し、力を授かった神社にはこの人が祀られていたそうなのだが、長い間人が来なかったせいで力が相当弱まっていたらしい。

そして偶然見かけた僕に、どうにか参拝してもらおうと思ったそうだ。

張り詰めた空気も、無音の空間も全てこの人の仕業だったのだ。

……まあ、その甲斐あってか、僕はちゃんとお供え物もして参拝した。


神使さんは、まさかお供え物までしてくれるとは思っていなかったらしく、僕に対して非常に好感を持ったそうだ。

そこで、気に入った僕の願いを一つだけ叶えてやろうと思ったらしいのだが、

僕の願いは”守れる力が欲しい”というなんとも曖昧なものだった。

それでも神使さんは僕の願いを叶えようとしてくれて、最終的には現世に具現化する時の為の体を僕にくれたそうだ。


……ここまでは良いのだ。何と良心的な神使さんだろうとみんな思っただろう。だが、問題はこれからだ……


……それから四年ほどたったある日の事、天上界にいる彼女の元にある依頼が届いたそうだ。何でも、どこかの神様からの依頼だそうで無碍にはできない頼みだったとか。

そしてその依頼が、”人に取り憑いた鵺の討伐”だったそうだ。


依頼を聞いて神使さんは慌てた。体を僕に譲ってしまっているので、下界に降りる事が出来ないのだ。天上界では力を自由に行使できるので、新しい体を作ることは出来るが、それは天上界から避難する時の非常用で戦闘能力は殆ど無かったそうだ。


どうしたものかと悩んでいると、神使さんはある事に気付いた。それは、鵺の近くに僕がいた事だ。


神使さんは、僕が力を使いこなせているかどうか確かめる良い機会になる。という名目を付けて、羽根田に鵺の力を解放する術を授けたというのだ。

この神使さん、かなりアホである。


神使さん曰く、鵺の形をとっている間にだけ討伐が可能という事らしい。

そして僕が鵺の動きを止めている間に、神使さんが天上界から鵺を討伐。一件落着、という事らしい。


……要するに、僕は化け物退治の道具にされたという事だ。


「道具とは人聞きが悪い。神使の使いだ。」


「神使使って言いにくくないですか。というか、使いになったつもりないし。」


「まあまあそう言わずに。ちゃんとお願い叶えてあげたじゃん。それに、女の子ともお近づきになれた事だし?」


「誤魔化そうとしてるし……」


「……そ、そういえば君の彼女さんが近付いてくるなぁ。私は邪魔しないようにさっさと退散しよう!説明もした事だし!」


……そう言って神使さんは頭から消えてしまった。

あと、彼女じゃねぇし………


「……圭介?」


あ、美咲が来た。

僕が振り返ると、美咲は顔を輝かせた。


「やっぱり圭介!狐の姿になっても分かる!」


あっ!姿戻すの忘れてた。

僕が美咲に喋りかけようとすると、胴体を小さな衝撃が襲った。


「モフモフだぁ!」


「お、おい。離れろ。」


美咲はそんな僕の言葉は無視してモフモフを続けている。

……自分で自分をモフモフ出来ないのは悲しい。


美咲が離れそうに無かったので、僕は無理やり制服の襟の部分を優しく口で掴んで引き剥がし、母猫が子猫を運ぶ時のように口にぶら下げた。


「圭介〜!下ろしてよ〜!」


ジタバタ暴れる姿は本当に子猫のようだ。僕はゆっくりと美咲を地面に下ろすと、またこちらに飛びついて来ないうちに人に戻った。


「ああっ!モフモフが……」


途轍もなく残念そうな顔をしていたが、勘弁してほしい。


「ほら、もう諦めろ。」


「むー………」


ジト目で睨んできた。話題を変える。


「警察は呼んだか?」


「…うん。さっき。」


流石美咲。こんな状況でも判断が的確だ。


「どのくらいかかるとか言ってたか?」


「ううん。言ってなかった。慌ててたみたいだから。」


それもそうだ。一日中逃走していた未成年犯罪者が見つかったのだ。それも被害者の1人が第一発見者。それは慌てるだろう。


「……どこか怪我してないよね?思いっきり吹き飛ばされたから……」


「大丈夫。さっき完治した。」


「良かった。流石に心配したからね?」


「まあ……すまん。」


そうなのだ。どうやら、”九尾狐”形態には自己回復能力もあるらしい。


それから十分ほど美咲と話していると、漸くサイレンの音が聞こえてきた。

パトカーが四台ほど到着し、気絶状態の羽根田はすぐに取り押さえられた。

僕達も一緒にパトカーで警察署まで連れて行かれ、人生2回目の事情聴取をやらされた。

警察官は何度も羽根田が僕達に怪我をさせた事を心配していたが、僕達は羽根田の罪状をこれ以上無駄に増やしたく無かったので、怪我はしていないと主張した。

幸い事情聴取は直ぐに終わったので、僕と美咲はあまり遅くない時間に警察署を出ることが出来た。


そして帰り道、僕と美咲は同じ方向に帰っている。


「……圭介。」


「……なんだ?」


「ありがとね。羽根田君が突進して来た時に庇ってくれて。」


美咲は制服のスカートをキュッと握りしめ、上目遣いで言ってきた。その破壊力は凄まじく、僕は思わず本音が出てしまった。


「………美咲が傷つくのは、嫌だからな。」


すると美咲は優しく微笑み、


「………本当に、昔からそうだよね。……少しは自分の心配すれば良いのに……」


と言ってきた。その笑顔はとても魅力的で、僕は照れ臭くなって顔を背けてしまった。


「……………」


「……あ、私こっちだ。また明日、圭介。」


「……ああ。」


照れ臭さが抜けない僕は、ぶっきらぼうな返事をして美咲と別れた。



そして家に帰ると……


「ただい-----」


「お兄ちゃん!」


冬香が思いっきり飛びついてきた。…心配を掛けてしまったようだ。


「もう……心配したんだから……」


「……ごめんな。冬香。」


そう言うと、冬香は無茶苦茶な事を言い始めた。


「……今日一日、冬香お姉ちゃんと呼ばないと許しません……」


「な、なんだよ、その羞恥プレイ……」


だが、涙目で見上げてくる冬香を見ると、どうにも断れなかった。


……やってやる……


「……………冬香お、お姉ちゃん……」


僕が羞恥に悶えながら言うと、腕の中にいる冬香がブルブルブルッ!と震え、


「……ふふふ……なぁに?圭介?」


と、物凄くニヤけた顔で言った。


……その日の夜は、羞恥心の地獄だった………









読んでくださった方、ありがとうございます!


冬香が段々と病んできているような気がする……




次回はAnother sideにしようか本編にしようか悩んでいるところです。

又、やる気が出るので、ポイント評価もよろしくお願いします!


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