第四話 「ライバルが現れた!??? 私立ダイイチ野球中等学校」
第四話
「ライバルが現れた!??? 私立ダイイチ野球中等学校」
三島さんと共闘(?)というか、野球のアドバイスをしあうようになって1ヶ月~2ヶ月。
1年5組リーグで三島さんの防御率は6.75まで下がり、3勝5敗という成績。
この間まで0勝4敗、防御率は10.00を超えていたことを考えると、かなり成績が向上していた。
一方僕も、打率は2割5分まで上昇し、ホームランこそないものの、盗塁10を決めていた。打順も9番ライトから7番レフトに。
「全てあたしのおかげね」
ガハハ、と笑う三島さん。
全てかどうかはともかくとして、確かに短期間でここまで伸ばしてもらえたことを考えると純粋にすごいなあ、と思った。
「ところで、もうすぐアレよね」
三島さんは急にソワソワしだした。
アレとは、定期的に行われる校内入れ替え試合のこと。2~5組までの各組で、成績上位の選手が参加できる。
その試合でもし活躍出来れば、一つ上の組、もしくはずば抜けてよい成績を残すと、一気に二つ上の組に加入できるのだ。
「あたし何としてもその試合で活躍したいな。そしてカレにいいとこ見せてやるんだから……!!」
カレとは、三島さんの年上の彼氏のこと。
その人には野球の練習をしている時に一度会ったことがあるのだが、醸し出す雰囲気はおっとりとしていて、でもいざという時は頼りになりそうで、いい人そうだな、という感触をもった。
ちなみにその彼氏はすでに別の中学校でサッカー部主将として活躍しており、三島さんはそれに引け目を感じているとかいないとか。
『あたしも活躍しないとつりあいが取れない!! カレに見劣りしないくらいグンバツの選手にならないと!!』
僕は三島さんのそんな光景を見て、異性にそこまで関心を持てるとは何だかすごいなあ、と思った。
僕がそんなことを何かの拍子につぶやいたら、「え、あんたはホモなの?」と言われた。
そういう訳じゃなくて、僕は野球を見たり、あてども無く歩いてみたりすることのほうが好きで……と言うと、今度は「見た目は子供、心は激しくオジイチャン」と言われた。
あまりうれしくない名探偵コ○ン君だ。
話がなんだかそれてしまったが、ともかく今回三島さんも僕もその校内入れ替え試合のメンバーになんとか入ることが出来たので、出来れば活躍したい。
そんなことを考えていると、男子生徒が「えいさ、ほいさ」と言いながら何人かで引っ張っている人力車的なものが突如やってきた。
そして、その上に乗っている女性。
一応野球のユニフォームをまとっているが、グローブではなく扇子をパタパタさせていたり、座席にしとやかに座っていたり(その下では相変わらず男子生徒がえいさ、ほいさ、と言いながら人力車を走らせている)する様子は、どことなく『お嬢様(悪いイミではない)』を彷彿とさせた。もしくは『京都の人(?)』。
彼女は、三島さんと僕とに視線があうやいなや、自信満々の表情で、
『オーーッホッホッ!! こんにちは5組の選ばれし皆さん! ワタクシは1年4組のエースピッチャー、桜京子ですわ! ワタクシの決め球のカーブは自慢じゃありませんが、そんじょそこらのカーブとは違いましてよ! それはそれはもうすんごいカーブですのよ!! もし対戦することがありましたら存分にその切れ味を堪能して頂きますわ! オーーッホッホッホッ!!』
何か、選挙演説のようなものを残して桜京子という人は去っていった。あとに残るは、「頑張れもう少しだえっさほいさ」という人力車を引く生徒の徐々に遠くなりゆく掛け声。
「……今の、何かしら……?」
三島さんはつぶやいた。
「……よく分からないけど、カーブが得意な人……なのかなあ」
僕は、世の中には色々な人がいるのだなあ、と思った。




