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第五話 「とりあえず打て!! 私立ダイイチ野球中等学校」

第五話

「とりあえず打て!! 私立ダイイチ野球中等学校」


 校内勝ち抜き戦までどうしたものかなあ。

 今回は、男女混合で試合をすることになった(過去にもその時の状況や事情によって、何回か男女混合の試合が行われたことがある)。

 で、僕は三島さんのチームに割り振られた。当日先発予定の彼女が言うには『あたしたちのチームが勝つためには、打線が点を取ってくれないと困るの。あたし結構バカバカ打たれるし。よってあんたがチャンスで凡打したらコロスから』とのこと。すこぶる物騒な話だ。

 とはいえ対戦相手のピッチャーは、なんと先日人力車に乗って現れた、桜京子というカーブを得意とするピッチャー。

 その後に彼女のカーブを見る機会があったのだが、やや遠めから見ても、確かによく曲がっているのが見えた。

 あの外角に大きく逃げるカーブをうまくとらえるのは難しい気がする……。

 どうしたものかなあ。

 僕が下駄箱で下校しようとしながら考えていると、

「どうしたの。なんかぶつぶつ言ってたみたいだけど」

 たまたま三島さんが居て、声をかけてきた。

「いや……来週の試合どうしようかと思って」

「そりゃあ、目いっぱい活躍して4組に上がって、給食のおかずを一品増やすしかないじゃない」

「まあそれはそうだけど。でも、まだ実際に打ったことは無いんだけど、何だかあの曲がり幅が大きいカーブを打つのは難しい気がして」

 僕が言うと、三島さんは呆れたような表情をした。

「あんたねえ、打ってもいないのに打てるか打てないかなんて分かるわけないじゃない。だったらとりあえず打ってみればいいじゃないの」

「打ってみる?」

「そ。まあ、打つだけなら学校の近くに、あたしの友達のご両親がやってるバッティングセンターがあるし、とりあえず悩んでるよりはそこ行ってみたら」

「まあ、行くだけなら」

 僕は、とりあえずバッティングセンターに行ってみることにした。


 カキーン、カキーン、と音がする。

 グリーンネットの向こうでは、大学生や社会人くらいの年齢の方が、おのおのマシンから放たれるボールを打っている。

「とりあえず変化球専用マシンが一つあるらしいから、それで打ってみたら?」

 と、三島さんはなぜか帰り支度を始めた。

「あれ、三島さんはもう帰っちゃうの?」

「あのねえ、あたしはピッチャーなの。これから公園まで壁当てに行くのよ。あたしはピッチングもバッティングも万能にこなせるほど才能持ってないの」

「はあ」

「じゃあね。……がんばって」

 三島さんはそういい残すとさっさと帰ってしまった。


 僕は、とりあえず変化球専用マシンのバッターボックスに入ってみた。

 そして、変化球選択ボタンでカーブを選択する。

 すると『カーブかい? OKまかせろ!』という謎の体操のおにいさん風な録音音声がバッターボックス内に鳴り響いて、僕は少しだけ脱力した。

 それからボールが1球、マシンから放たれる。

 ボールがストレートの軌道で近づいてきて、やがて速度に少しブレーキがかかり、外角に向かって沈みこんでいく。

 僕は普通に打てずに空振りした。

「まあでもとにかくやるしかないんだよな」

 僕は、その日からカーブの練習に取りくむことになった。

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