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25回目の結婚生活  作者: 東の雲


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バツ24との出会い

 付き合ってから1年の記念日を祝うケーキを見ながら美咲は誠と初めて会った日のことを思い出していた。



⸻



 その日、美咲が担任する四歳児クラスは、昼食後の園庭遊びの真っ最中だった。

砂場で夢中になってトンネルを掘っていた翔太が、勢い余って転び、膝を擦りむいて泣き出した。


「翔太くん、大丈夫?」


すぐに駆け寄り、応急処置をする美咲。傷は浅く、消毒をして絆創膏を貼れば済む程度だ。

しかし規則上、保護者への連絡は欠かせない。


母親に電話するも繋がらず、父親の携帯も呼び出し音だけが続く。

最後に登録されていた緊急連絡先――父親の勤務先「高梨印刷」に連絡を入れると、事務の女性が慌ただしく応対した。


「翔太くんのお父様は、ただいまお客様との打ち合わせで外出中でして……」


美咲は「それではまた折り返しで」と電話を切り、翔太のそばに戻った。


だが、その三十分後。


園の玄関に、スーツ姿の男性が駆け込んできた。



「翔太は! どこにいますか!?」


息を切らし、額に汗を光らせて立っていたのは――翔太の父親ではなく、まったく別の人物だった。


背筋の伸びた長身、四十代半ばに見えるが、若々しさもある。


「すみません、翔太くんのことで……! うちの社員の子なんです。本人は今外に出ていて動けないと聞いて、代わりに来ました」


その声には必死さがあり、まるで自分の子どものことのように焦っていた。


彼の名前は――高梨誠。

翔太の父親が勤める印刷会社「高梨印刷」の社長だった。


「翔太、大丈夫か!」


翔太の前にしゃがみこみ、目線を合わせる誠。

翔太は少し照れながら「もう痛くない」と答えると、誠は安堵の笑みを浮かべ、そっとその頭を撫でた。


――ただの社員の子なのに。


その姿を見た瞬間、美咲の胸に温かいものが広がった。


⸻



数日後の休日。

美咲は気分転換に街を歩いていた。


商店街の本屋の前で、ふと視線が止まる。

そこにいたのは、先日のあの人――高梨誠。


ラフなシャツにジーンズ姿で、経済誌を立ち読みしていた。

スーツ姿とは違う柔らかさがあり、美咲の心臓は不意に跳ねた。


(声をかける? でも突然すぎる? でも、このまま行ったらもう二度と会えないかも……)


迷った末、美咲は勇気を振り絞って声をかけた。


「あの……この前は保育園に来てくださって、ありがとうございました」


誠が顔を上げ、驚いたあとに柔らかく笑った。

「あ……先生。あの時の」


覚えていてくれたことに、美咲の頬が熱くなる。


「あの……よかったらお茶でもどうですか?」


考えるより先に口が勝手に動いた。



⸻



喫茶店に入り、向かい合って座った二人。


美咲は、思わずあの日感じた気持ちを口にした。

「あの……社員さんのお子さんなのに、翔太くんのためにあんなに必死になれるの、すごいなって。なんだか……かっこいいなって思いました」


誠は意外そうに目を見開き、それから照れたように笑った。

「俺は社長だけど、社員の家族も大事にしたいんです。翔太は、うちで働いてくれる社員の“宝物”みたいなものだから」


その言葉に、美咲の胸が温かく震える。


――この人は、ただの社長じゃない。人を本気で思いやれる人だ。


気づけば、美咲はもう誠に惹かれていた。


⸻



夕暮れの街を歩きながら、美咲は思い切って言った。

「今日は……ありがとうございました。また、お会いできますか?」


誠は少し驚いたように眉を上げ、それから穏やかに笑った。

「もちろん。ぜひ」


その瞬間、美咲の胸にときめきが走った。

二人の未来が、ここから始まった。



⸻


初めて会った日に感じた直感は間違っていなかった。


私はこれからも大好きな誠さんと歩んでいくんだ。


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