記念日問題 B
朝、目覚ましの音で起きた美咲は、カーテンを開けながら「今日はなんの日だっけなぁ。何かあった気もするんだけど」とぼんやりつぶやいた。
冷蔵庫に残っていた牛乳を飲み干し、買い物メモに「牛乳、卵、ティッシュ」と書き込む。
(あっ、そうだ!今日はお肉の特売日だ!早く行かないと売り切れちゃうなぁ)
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今日は近くに住んでいる友達と一緒に買い物をして、お肉の特売をしているスーパーへ寄って、夕飯のステーキを買う。
買い物を終えて帰ってくると、誠がソファに座ってカレンダーをじっと見つめている。
しかも妙に背筋を伸ばし、手元のスマホを何度も見てはため息をついていた。
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
美咲が尋ねると、誠は「いや、ちょっとな……」と濁す。
その表情は、会社の決算発表よりも深刻そうだ。
(なんだろう……?私、何かしたかな?)
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私が冷蔵庫に牛肉をしまっていると、誠が口を開いた。
「なぁ美咲……その、今日は特別な日だと思うんだけど……」
「今日はスーパーで牛肉が半額の日だよ!」
誠の顔色がみるみる青ざめた。
(あれ?なんか地雷踏んだ?)
内心で首をかしげつつも、料理に取りかかる美咲。
包丁で玉ねぎを切る音が、妙にリビングに響いていた。
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(うーん……何か忘れてる気がする……。でもなんだろう?誕生日は来月だし、結婚記念日はまだ先だし……。
あっ!もしかして、付き合って一年とか?)
そう気づいた瞬間、包丁を持つ手が止まる。
(やばい!完全に忘れてた!誠さん、もしかしてそれでソワソワしてるの!?)
頭の中でサイレンが鳴り響く。
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なんとか誤魔化すようにステーキを焼き、テーブルに並べる。
「いただきます」と笑顔を見せるものの、内心は大慌てだ。
誠がナイフを持ちながら切り出す。
「なぁ……今日、付き合って一年なんだよな?」
その一言で、美咲は「あっ!」と大声をあげた。
「ほんとだ!すごい!誠さん覚えてたんだ!」
自然と笑顔になる。
(いやぁ、まさか旦那さんのほうが覚えてるなんて。さすが誠さん!)
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「でもさ、もう夫婦なんだから、記念日は“全部”まとめちゃえばいいと思うんだよね!」
自分でも驚くほどすらすらと言葉が出た。
誠はぽかんとしながら「まとめる……?」と聞き返す。
「うん。付き合い始めた日も、結婚した日も、初めて一緒にご飯食べた日も、ぜーんぶ記念日。
だから、今日も“おめでとう”だね!」
誠の表情がふっと緩んだ。
まるで肩の荷がおりたみたいに。
(あ、良かった……やっぱりこれで正解だ)
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寝る前。布団の中で、美咲は小さく呟いた。
「……ほんとはね、ちょっとだけ不安になったんだ」
隣で目を閉じている誠の背中を見つめる。
「誠さん、24回もいろんな人と結婚してきたんだもん。私だけが特別って思ってもらえるのかなって……」
だけどすぐに笑ってしまった。
「でも、こうして一緒に笑って毎日を過ごせるだけで私は幸せなんだよね」
誠の寝息を聞きながら、美咲はそっと目を閉じた。
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翌朝、目覚ましが鳴る前に誠が起きていた。
テーブルには小さなケーキがひとつ置かれている。
「1st Anniversary」の文字。
「誠さん……!」
美咲は思わず飛びついた。
そして心の中でそっと思った。
(やっぱり、この人と一緒なら大丈夫だ)




