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25回目の結婚生活  作者: 東の雲


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記念日問題 B

 朝、目覚ましの音で起きた美咲は、カーテンを開けながら「今日はなんの日だっけなぁ。何かあった気もするんだけど」とぼんやりつぶやいた。


冷蔵庫に残っていた牛乳を飲み干し、買い物メモに「牛乳、卵、ティッシュ」と書き込む。


(あっ、そうだ!今日はお肉の特売日だ!早く行かないと売り切れちゃうなぁ)


⸻


 今日は近くに住んでいる友達と一緒に買い物をして、お肉の特売をしているスーパーへ寄って、夕飯のステーキを買う。


 買い物を終えて帰ってくると、誠がソファに座ってカレンダーをじっと見つめている。

しかも妙に背筋を伸ばし、手元のスマホを何度も見てはため息をついていた。


「どうしたの?お腹でも痛いの?」


 美咲が尋ねると、誠は「いや、ちょっとな……」と濁す。

その表情は、会社の決算発表よりも深刻そうだ。


(なんだろう……?私、何かしたかな?)



⸻



 私が冷蔵庫に牛肉をしまっていると、誠が口を開いた。


「なぁ美咲……その、今日は特別な日だと思うんだけど……」


「今日はスーパーで牛肉が半額の日だよ!」


 誠の顔色がみるみる青ざめた。


(あれ?なんか地雷踏んだ?)


 内心で首をかしげつつも、料理に取りかかる美咲。

包丁で玉ねぎを切る音が、妙にリビングに響いていた。


⸻



(うーん……何か忘れてる気がする……。でもなんだろう?誕生日は来月だし、結婚記念日はまだ先だし……。

 あっ!もしかして、付き合って一年とか?)


 そう気づいた瞬間、包丁を持つ手が止まる。


(やばい!完全に忘れてた!誠さん、もしかしてそれでソワソワしてるの!?)


 頭の中でサイレンが鳴り響く。


⸻



 なんとか誤魔化すようにステーキを焼き、テーブルに並べる。

「いただきます」と笑顔を見せるものの、内心は大慌てだ。


 誠がナイフを持ちながら切り出す。

「なぁ……今日、付き合って一年なんだよな?」


 その一言で、美咲は「あっ!」と大声をあげた。


「ほんとだ!すごい!誠さん覚えてたんだ!」


 自然と笑顔になる。

(いやぁ、まさか旦那さんのほうが覚えてるなんて。さすが誠さん!)


⸻



「でもさ、もう夫婦なんだから、記念日は“全部”まとめちゃえばいいと思うんだよね!」


 自分でも驚くほどすらすらと言葉が出た。

誠はぽかんとしながら「まとめる……?」と聞き返す。


「うん。付き合い始めた日も、結婚した日も、初めて一緒にご飯食べた日も、ぜーんぶ記念日。

 だから、今日も“おめでとう”だね!」


 誠の表情がふっと緩んだ。

まるで肩の荷がおりたみたいに。


(あ、良かった……やっぱりこれで正解だ)



⸻




 寝る前。布団の中で、美咲は小さく呟いた。


「……ほんとはね、ちょっとだけ不安になったんだ」


 隣で目を閉じている誠の背中を見つめる。


「誠さん、24回もいろんな人と結婚してきたんだもん。私だけが特別って思ってもらえるのかなって……」


 だけどすぐに笑ってしまった。


「でも、こうして一緒に笑って毎日を過ごせるだけで私は幸せなんだよね」


 誠の寝息を聞きながら、美咲はそっと目を閉じた。


⸻



 翌朝、目覚ましが鳴る前に誠が起きていた。

テーブルには小さなケーキがひとつ置かれている。

「1st Anniversary」の文字。


「誠さん……!」


 美咲は思わず飛びついた。

そして心の中でそっと思った。


(やっぱり、この人と一緒なら大丈夫だ)

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