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第8話 突然の爆発――!? ああ、あの人なら、納得ですわ。

 授業が始まった日の昼休みの時間。

 マーガレットは、取り巻きの女子生徒と共に、校庭のテラス席へ向かうところだった。

「あ……あの……マーガレット、様」

 すごく控えめに、呼び止められた。

 マーガレットは振り向き、姉のように冷ややかな視線で相手を見た。

「なんですの? 手短にお願いしますわ」

「あ……その……。私も一緒にご飯食べて……いい、ですか?」

 いったい、なんのつもりですの。

 公爵家の令嬢が、平民なんかと共に過ごすなんてありえないですわ。

「よろしくなくてよ」

 マーガレットは即答した。

 生徒会に所属できたからって、馴れ馴れしいですわ。

 ふん、と顔を背けて歩き出す。

 取り巻きにした二人の女子生徒が、それぞれ一言発し、ついて来た。

「さすがマーガレット様ですわ!」

 栗毛色の髪をした、小柄なミーナ。

「聖女様、失礼いたします」

 細い眼鏡をかけ、灰色の髪を首あたりで切り揃えたリディア。

 二人はマーガレットの従者のように、二歩後ろを歩くことが多かった。


 目の端に映ったリリアは、

 迷子になった幼子のように、瞳を揺らしていた。

 そんなこと、知ったことではありませんけど。


 校舎の一階に降りると、さわやかな風がマーガレットの髪を揺らした。

「今日は、陽気がいいですわね」

「マーガレット様、向こうのテラス席はいかがでしょう?」

 ミーナが明るい声を出す。

「食堂は混み合っているようなので、私がお食事を取り分けてまいります」

 気が利くリディアが、食堂へ向かった。

 お屋敷の侍女なんかよりも、よっぽどいい働きをする伯爵令嬢だこと。

「さ! 私たちは向こうでお話しましょ!」

 ミーナがマーガレットの手を引き、明るいテラス席に座った。

 

 テラス席からは、運動広場と、遠くにベルーゼ王国の街並みが見え、

 鳥の声が景色に音楽を添えていた。



 その出来事は、昼食のさなかに起きた。

 突然、運動広場の方からズドォォンンという、爆発音が聞こえた。

「――きゃ!」

 髪をかき乱す乱暴な衝撃波がマーガレットを襲う。

鼓膜と、腹の底を揺らし、

 リディアが取り分けてきた昼食のガレットが皿ごと落ちた。

「な――なに!?」

「マーガレット様! こちらへ!」

 立ち上がったミーナが、マーガレットを庇いながらテラス席から離れた。

 それでも、どうしても気になって、ちらりと広場に目をやる。

 

 砂地に大きなクレーターができていた。

 その傍には、赤い髪をした一人の男性がぽつんと立っていて――、

 顔までは判別できなかった。



 食堂にいた生徒らが、わらわらと出てきてテラス席から広場を見下ろした。

 場が騒然とする。

「誰かの喧嘩?」

「魔力の暴走?」

「あ、あいつ――」


 一人の生徒の声がはっきりと聞こえた。


「二年のエドガー・ヴァルクールじゃん」

 

 エドガー?

 マーガレットの脳裏に、同じ公爵の身分の青年が浮かんだ。

 いつも眉根に皺を寄せて誰もかれも睨んでいる印象の、

 粗暴な男。


 マーガレットの波打っていた胸の内が、すん、と静まり返った。

 

 なら、納得ですわ。


 魔力の暴走。 

 何かの拍子に感情がそのまま現れてしまった――。


はた迷惑なお話ですこと。


マーガレットは服の乱れを整えて、食堂に背を向けた。


また誰かの声が聞こえた。

「――あ、聖女様……!?」




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